ミニPCを精力的に展開しているGEEKOM(ギコム)から、高性能路線の新機種「GT13 Pro」が登場しました。Core i9-13900Hを搭載する上位モデルを試用することができたので、レビューをお届けします。

GEEKOMのCore i9-13900H搭載ミニPC「GT13 Pro」を試した

GEEKOMというブランドはミニPCの情報を積極的に追っている方でないとまだ馴染みがないかもしれませんが、日本市場に今後力を入れていく方針だそうで、4月末に東京ビッグサイトで開催された「Japan IT Week【春】」にも自社ブースを構えていました。

GEEKOMのミニPCにはIntel N100などを搭載する省電力・低価格のモデルもありますが、ラインナップの大半はIntelモデル/AMDモデルともにモバイル向けの上位SKU、たとえばCore i9-13900HやRyzen 9 8945HSを搭載したモデルが多く、基本的にはメインPCとしても十分使えるような高性能路線のミニPCを中心とするブランドです。

GEEKOMのIntel系高性能モデルはITシリーズ/XTシリーズ/GTシリーズに分かれている。ケース形状や一部の選択可能なCPUに違いはあるが、スペックはほぼ横並びで(一応ターゲットユーザーが異なるらしい)、価格やケースを見るとGTシリーズが上位グレードとも解釈できる

手始めに本体の外観からチェックしていくと、サイズは約112.2×112.2×38mmとコンパクト。ケースは金属製で側面から天板までが一体成型されており、この手のマシンとしては高級感があります。各種端子が並ぶ背面の樹脂パネルの形状はどことなくMac mini風で、細かな穴が並ぶ側面の通気口も丁寧な仕事ぶり。VESAマウントを用いた設置も可能で、75mm/100mm両対応のプレートが付属します。

前面にはUSB Standard-Aが2ポートとイヤホンジャック。背面にはUSB4対応のUSB Type-Cが2ポートとUSB Standard-AとHDMIも2ポートずつ、有線LANポートが1つあります。DP AltモードとHDMIを併用すれば、4画面の同時出力が可能です。また、側面にはSDカードリーダーも搭載しています。

前面にはUSB Standard-A(USB 3.2 Gen 2)×2とイヤホンジャック

背面のUSB Standard-A端子は、片方がUSB 3.2 Gen 2でもう1つはUSB 2.0。Type-Cは2つともUSB4。そのほかにHDMI×2と有線LAN、電源端子が並ぶ

継ぎ目のないアルミボディに少しカーブした背面パネルがはめ込まれている姿は、どこかで見覚えがあるような……

左側にSDカードリーダーが内蔵されている。カメラを使う人にはうれしい

本体内部には底面のパネルを外してアクセスします。メモリはSO-DIMM DDR4-3200が2枚入り、SSDはM.2 2280のものが初期搭載されているほかにM.2 2242の空きスロットがあります。メモリは詳細不明、無線LANカードはWi-Fi 6E対応のMediaTek MT7922でした。

ユーザーが触れる部分はここまでで、マザーボードを挟んで反対側の上層部は熱伝導素材と大型ファンによる冷却システム「IceBlast 1.5」のためのスペースとなっています。

本体内部にアクセスするには、底面のゴム足を取ってネジを4本外し、その下にある金属板を外すためにまたネジを4本外す

メモリ2枚とSSDが見え、中央にM.2の空きスロットがある。インターフェース周りと干渉しそうなスペースの都合か、増設用スロットは2242サイズなのでSSDを買い足す際は要注意

今回試用した機材は、Core i9-13900Hにメモリ32GB(DDR4-3200 16GB×2枚)、SSD 2TB(PCIe 4.0)という構成の上位モデル。このほかに、Core i7-13620H/メモリ32GB/SSD 1TBのモデルも選択できます。

筆者は普段、メインの作業用PCとして、同じようなサイズでCore i7-13700Hを搭載する他社製ミニPCを使用しています。Core i7-13700HとCore i9-13900HはどちらもPコア6基+8基の計14コアで内蔵グラフィックスは96EUのIris Xe、消費電力(ベースパワー/ターボパワー)も変わらず、最大クロックが異なる程度の違いです。

ベンチマークを回してみたり、実際に置き換えて普段の作業にしばらく使ってみたりしましたが、このサイズのマシンの熱設計ではCore i7-13700HとCore i9-13900Hの性能差はほぼ見受けられませんでした。ハイスペックをこのサイズに詰め込むロマンはありますが、性能をフルを引き出せるのはもう一回り大きく設計に余裕のあるゲーミング/ワークステーション志向の小型PCになってくるでしょう。

PC Mark 10の計測結果

3DMark(Time Spy)の計測結果

3DMark(Steel Nomad)の計測結果

ファイナルファンタジー XIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

性能面で思いがけず良かったところは、初期装備のSSD。本体を開けてみたら見慣れない赤いラベルのAcer製SSD(N7000)が現れたので「なんだか珍しいのが出てきたぞ」と思っていたら、シーケンシャルリード7000MB/s超のPCIe 4.0らしい高速なものでした。パーツの選定は明示されているわけではないので購入時期によって変わる可能性もありますが、ちょっとうれしい仕様ですね。

赤いラベルが目立つSSD「Acer N7000」。見慣れないパーツなので気になって測定してみると……

シーケンシャルリード7000MB/sとなかなか高速

Core i9-13900Hのフルパフォーマンスを引き出せるとは言いがたい点を考慮すると、GT13 ProではCore i7-13620H搭載の下位モデルを検討してみても良いと思います。ただし、13620HはRaptor Lake-HのCore i7では一番下のSKUでCPUのコア数やGPUのEU数が違うので(Pコア×6+Eコア×4の計10コアで64EU)、先述のCore i7-13700Hとの比較のようにまったく差が付かないということはないはず。マルチディスプレイや高解像度環境でグラフィックス性能を削りたくない場合などは妥協しづらいポイントでもありそうです。

執筆時点における公式サイトでのクーポン適用価格後の実売価格は、Core i7-13620H搭載モデルが89,800円、Core i9-13900H搭載モデルが128,000円。4万円近い価格差があるので財布と相談しつつバランスを見て選ぶと良いでしょう。