「ポンピングブレーキ」覚えてる? そもそも何のために存在し、もはや「不要なスキル」なの? 実は今でも意外な「役立ち方」があった!
「ポンピングブレーキ」って何やねん?
自動車の運転免許を持っている人なら、教習所で「ポンピングブレーキ」という技術について教わったことがあるはずですが、あまりにも昔のことで「それなんだっけ?」となる人もいるかもしれません。
クルマの進化によって「不要になった」とも言われるこのポンピングブレーキ、実は現代においても有用な場面が存在します。
ポンピングブレーキというのは、ブレーキペダルを断続的に踏んで、車両の減速をコントロールする技術です。
【画像】「えっ…!」これがブレーキ操作に適さない「履物」です(21枚)
これは、車輪がロックするのを防ぎ、車両の制御を維持しながら速度を落とすのに役立ちます。
具体的には、ブレーキを一度に強く踏み続けるのではなく、ブレーキペダルを連続して押し込んだり放したりすることで、車両が滑るのを防ぎ、制御の可能な状態を維持しながら減速できるというもの。
かつての教習所では、「危険な状況になったときに一気にブレーキを踏むと車輪がロック状態になって制御できなくなり、“横滑り”などを起こすので危ない。そのような状況ではポンピングブレーキを使いましょう」などと習ったものです。
しかし現在では、ほとんどのクルマにタイヤのロックを防止するための「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)」が搭載されています。
このABSとは、ブレーキペダルを強く踏んでもコンピューターがタイヤのロックを防ぐため、ブレーキ圧を自動で調整する機能。
ABSを搭載したクルマであれば、ブレーキのロックによるスリップを最小限に抑え、ハンドル操作が可能なまま速度を落とすことができるのです。
いわば、教習所で習ったポンピングブレーキをコンピューターが代行してくれる安全装置だと言えるでしょう。
じゃあ「ポンピングブレーキ」はもう不要なの?
では、ABS搭載が標準になっている現在、もうポンピングブレーキを行う必要は無いのでしょうか。
実際、「ポンピングブレーキは不要である」という主張は多く見られ、その理由については以下のように説明されています。
「現代のブレーキシステムは高度に設計されており、ドライバーがポンピングブレーキを行うことで逆に制動性能が低下する可能性があります。
ABSを搭載した車両では、強くブレーキを踏み続ける方が安全です。
したがって、ABSを装備している車両では、ポンピングブレーキを行う代わりに、強くしっかりとブレーキを踏み続けることが推奨されます。
これにより、ABSが最適な制動力を発揮し、車両の安全を最大限に確保します」
かつてABSの搭載されていなかったクルマを運転してきた世代の中には、滑りやすい条件下では軽くポンピングするようなブレーキ操作の方が有効と感じる運転者もいるかもしれません。
しかし先述のように現在では「推奨される運転方法」とはされておらず、ABS非搭載車で有効だったポンピングブレーキは、ABS搭載車では基本的に不要な技術となっているのです。
もちろんABS搭載車であっても、極度に凍結した路面や積雪路で急ブレーキを踏んでしまえばクルマが滑って追突事故を起こすことはあります。
これは、極端に滑りやすい特定の低摩擦路面ではタイヤと路面の摩擦が極端に低いため、ABSが作動しても制動距離が長くなってしまうため。
このように、ABSが搭載されているクルマでも事故を防ぎきれない場面はあるので、ABSは万能な機能ではなく、その特性を理解した上で滑りやすい路面では急ブレーキを避け、優しくブレーキをかけることと車間距離を十分に保つことを心がけると良いでしょう。
もちろん急ブレーキを避けるために、車間距離を十分に保つことも重要です。
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こうして今では、「スリップを防ぐため」という目的においては不要となったポンピングブレーキですが、その一方で、全く異なる使い方をメインに現在も教習所では教えられています。
それは、高速道路で渋滞の後ろに付いて停車するような場面です。
ブレーキランプを断続的に光らせて速度を落とすことで相続車の注意を引き、万が一の追突を防止する安全な減速方法として、ポンピングブレーキは今でもしっかりと息づいているのです。
ABS搭載車のスリップ防止においては非推奨とはなったものの、このような特定の条件下では現在も有用な技術となっているポンピングブレーキ。
運転時の事故のリスクを最小限に抑えるためにも、適切な技術のひとつとしてあらためて活用してみてはいかがでしょうか