レゴで太陽系儀を作って天体の動きをシミュレーションする試み
太陽系儀とは、太陽を中心にして回転機構を供えた惑星を配置することで、惑星の位置関係や軌道をシミュレーションできる模型です。起源は紀元前までさかのぼり、正式なものは17世紀ごろ設計された地動説の太陽系儀を、機械学習エンジニアのマリアン氏がレゴで再現したレゴ太陽系儀の解説をしています。
Designing a Lego orrery | Marian's Blog
https://marian42.de/article/orrery/
LEGO Orrery - Earth, Moon and Sun - YouTube
アレマン氏のモデルから刺激を受けつつ、マリアン氏は独自に設計したレゴ太陽系儀の製作に取り組んでいます。マリアン氏はまず、地球の自転軸に注目しました。地球の自転軸は、軌道面に対して23.5度傾いています。つまり、太陽系儀では自転軸が真上を向いていないことになるため、回転させる機構も斜めに配置する必要があります。さらに、この自転軸は常に同じ方向を向いているため、地球自体が回転するだけではなく、地球を支える部分も軸の向きを維持するために回転し続ける必要があります。
そこでマリアン氏は、地球に合わせた傾斜ホルダーを構築するために、角度付きのコネクタを使用しました。以下の画像が、レゴ太陽系儀の地球付近の機構。
また、月の軌道面も地球の軌道面に並行ではなく少し傾いています。実際の傾斜角は5.15度で、正確にモデル化されていたとしても、傾いているとほとんど気付けない程度。しかし、マリアン氏によると、月の軌道の傾斜は日食の発生時期を説明する上で重要な役割を果たすため、月の軌道傾斜をモデル化することは有用であると考えられるそうです。
傾いた地球の周りに5.15度の傾斜角で位置する月の動きを再現するには、地球の周りを上下しながら月が動くようにする必要があります。その機構のヒントは、レゴで三球儀を再現した以下のムービーから得たとマリアン氏は語っています。
A Lego Technic Tellurion - YouTube
結果として、マリアン氏が作成した以下のモデルでは、一定速度で回転する4つの機構が組み込まれています。1つは地球、2つ目は地球の傾きを固定するために回る地球の基盤、3つ目が月で、4つ目が月の傾斜リング。
マリアン氏のレゴ太陽系儀を下から見ると以下のような感じで回転機構が配置されています。ここでは、地球、地球基盤、月、月の傾斜リングという4つの機構がありつつ、メインアームは地球が太陽を1周する約365.25日というサイクルを再現するために、ギアのシーケンスを調整しているそうです。
この際に、使用できるギアをどのように組み合わせたら求める伝達比率が実現できるか計算するために、レゴのギアシーケンス計算ツールをマリアン氏は作成しています。
Lego Gear Ratio Calculator
https://marian42.de/gears/?targetratio=17/23&error=default&incl2d=false&gears=default
最終的には、マリアン氏のレゴ太陽系儀では以下のように70個のギアが配置されています。ギアは追加するごとに少しずつ摩擦が増えていくため、「太陽系儀をスムーズに動かすことができるか」というのは大きな課題だったそうです。結果として、細かく計算してギアを微調整したことで、実際の値と比べて地球の公転周期は0.18%、月の自転周期と公転周期は0.1%未満の誤差に抑えることを実現しています。
動作部分が完了したら、モーターなどを配置する土台部分を作成しています。この時、最初に作成した土台はモーターから非常に大きな動作音がしたため断念。太陽系儀の使用感を向上させるため、技術的な課題と言うより芸術的な課題として土台のデザインを検討したとのこと。以下は、制作時にマリアン氏が検討した土台のデザイン。
最終的にマリアン氏が完成させたレゴ太陽系儀が動作している様子は以下のムービーから見ることができます。土台のデザインは、モーターではなくレバーを動かすことで、アームを回転させる設計になっています。
Sun Earth Moon Orrery (Lego MOC-88534) - YouTube
マリアン氏はそのほか、より少ないパーツで同じレゴ太陽系儀を再現する設計のほか、太陽、地球、月だけではなく太陽系惑星すべての公転を再現するアイデアや、レゴパーツに縛られずアクリルシートで設計した太陽系儀の組み立てを計画しているそうです。