ハンターも命懸け(写真はイメージ)

写真拡大

ヒグマが子どもを守ろうと車を壊したり、牛舎の子牛を狙って襲ったり...北海道で、こんな深刻な被害が相次いでいる。

そんな中で、北海道猟友会の地域部会が、駆除の報酬が安すぎるなどとして、町役場の依頼を辞退したと報じられ、大きな話題になっている。

町役場は、計8500円〜1万300円の報酬を提示したが...

報酬について、問題提起したのは、北海道猟友会砂川支部の奈井江部会だ。

北海道テレビ(HTB)の2024年5月21日付ウェブ版記事によると、奈井江町が4月にヒグマ出没時のパトロールを行う「鳥獣被害対策実施隊」への参加を呼びかけたが、山岸辰人部会長は、報酬が安すぎると同局のインタビューに不満を訴え、参加を辞退したことを明らかにした。

呼びかけた際の説明資料では、基本的な日当は4800円で、出没地を見回るなどのヒグマ対策にはプラス3700円、さらに発砲した場合はプラス1800円となっている。つまりハンターには、計8500円〜1万300円が支払われる計算だ。

これに対し、奈井江部会では、町への要望を提示し、ヒグマ出没時の緊急出動では、1回1人4万5000円を報酬として支払うように求めた。これは、国や北海道などと同等レベルだとした。さらに、緊急出動では、猟友会員2人以上で対応し、安全のために赤外線センサーの付いたドローンを配置するよう求めた。また、ヒグマ駆除後の運搬や処理は、町がやるよう促している。

ところが、奈井江部会では、町から予算がないなどと説明を受けたとして、18日付で鳥獣被害対策実施隊の参加要請を辞退するとする文書を町長あてに出した。全員で協議した結果、町の要求に十分に応えるには、「人員的にも難しい」との結論になったとしている。

山岸辰人部会長は22日、J-CASTニュースの取材に対し、参加辞退を認めたうえで、次のようにその理由を説明した。

「ギャラが一番ではなく、決めた業務をやれと町が言ったのが問題」

「ギャラのことが、一番言いたかったわけではありません。一番問題なのは、決めた業務でやるように町が言って来たことです。我々は、こんな条件じゃできないよということです。物には、順序があります。我々の事情を察知してからやりましょうね、なら納得がいきます。15項目の要望を出すと、予算がなく条例を変えないとできないと言われました。そうしたら、できないよねということになります」

もっとも、報酬についても、異論があることは認めた。

「我々は、コンビニのバイトではありません。ヒグマに向かうのに、この額で命を賭けられるかということです。ハンターの言い分を代表して伝えたかったわけです。部会の5人全員が仕事を持っており、仕事中に緊急呼び出しがかかったら、費用弁償の額としては妥当なのかというのも疑問に思っています」

北海道のヒグマ対策室によると、道が猟友会に報酬を出すことはまれにあるが、1回1人2万円ぐらいになるという。奈井江部会の山岸部会長は、道などと同等に4万5000円の支払いを求めたのは、報奨金も含めての額だと説明した。

山岸部会長は、「文書で参加辞退を申し入れましたので、もう終わったことだと思っていますが、町から説得を受ければ、それを受け付けるかは状況次第だと思っています」と述べた。

今回の辞退について、奈井江町の産業観光課は5月22日、取材に対し、次のように答えた。

「部会の方との協議が続いていると思っていましたので、びっくりしている状態です。予算の関係があるため、すぐに回答できないと伝え、内部で検討して町の回答を作っている最中でした。『人員的にも難しい』という理由について、どのような経緯でどんな意図があるのか、部会の方に聞かないといけないと思っています。ヒグマ対策の3700円という額は、近隣の自治体に合わせたものになります。まだ回答の内容は、全然固まっていませんが、早ければ今週中にも、部会の方に出したいと考えています」

奈井江部会が求めたハンター2人以上、ドローン配置などについても、「まだ協議中ですので、どうするかは何とも言えません」と話した。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)