【清水 芽々】35歳母親と「ベビーシッター」を名乗る男たちから受けた、性的虐待の数々…15歳の少女が社会に向けて「私の話を聞いて欲しい」と語る理由

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実の母親から性被害に

毒親」という言葉が認知されつつある。

子供に悪影響しか及ばない親のことであるが、中には子供を利用してお金を稼ごうとする「猛毒親」も存在する。そういった親は、ときに小児性愛者に子供を売るようなマネをするが、そのなかに「子守り」という建前で世間を欺きながら、小児性愛者と子供を接触させる“ベビーシッター商法”ともいうべき卑劣な手口がある。

この被害者が谷澤エリカさん(仮名・15歳)だった。

「生きているのがつらくなるときがあります。母はイヤです。大人は怖い。気持ちが悪いです。私が出会った大人はロリコンだったり、信用できなかったり、最悪な人ばかりでした」

現在、彼女はNPO法人に保護されているが、彼女から最初に話を聞いたのは、昨年の春になる。それから複数回、聞き取りを続けてきた。当初から記事化の許可は得られていたが、たとえ匿名の告発であっても彼女にとって非常にセンシティブな内容であり、特に実の両親の告発は相手が“毒親”であっても心が揺れ動く。

そのため記事化をいつでも彼女の意思で止められるようにするため、時間を置くことにした。話し合いを重ね、先日、改めて本人に意思を聞いたが、彼女の意思は固かった。

「私はNPO法人に保護されて、私の味方になってくれる大人がいることを知りました。ただ、NPOの人たちは団体として役割を果たしているだけなのかも知れません。頼りにしていますが疑心暗鬼です。だから私は、何の利害関係もない大人でも、私の気持ちを受け止めてくれる人が、どれだけ社会いるのか知りたい。できれば私の味方をしてくれる大人をひとりでも増やしたい。だから私の話を聞いて欲しい」

彼女はネットニュースになれば、コメント欄から匿名で心無い言葉を浴びせる“大人”がでてくることも、賛否両論になることも十分に理解していた。そのうえで「それでも多くの人に聞いて欲しい」と言った。わずか15歳の少女が、そこまで覚悟しなくてはいけない状況が腹立たしいが、以下はエリカさん、エリカさんの友人、身を案じる祖母、保護するNPO法人のスタッフらから話を聞いたものである――。

プライバシー保護のため一部、変更しております。

娘の裸の写真で商売する実の母親

母子家庭で育ったエリカさんは、幼い頃から実の母親(35歳)に性的虐待を受けていた。当時20代前半だった母親は、水商売をする中で、ロリコンを自称するお客の話をヒントに、幼児だったエリカさんを利用してお金を稼ぐことを思いついたらしい。

「私が覚えている一番古い記憶は、母にデジカメを向けられ、やたらと写真を撮られたことです。『トイレでおしっこしろ』とか『シャワーを肩から浴びろ』と言われ、いろいろなポーズをとらされました。子供心に恥ずかしい気持ちとか裸でいるのが寒かったりして嫌がったこともあったのですが、『黙って言う通りにしろっ!』と母にひどく叱られました」

撮影が終わると、母親は長時間パソコンに向かっては「よっしゃあ、●万!」「またコイツかよ!」などといったセリフを口にしていたという。

「母はネット上で知り合った小児性愛者に私の画像を売っていました。買い手が見つかると母は上機嫌になり、『ほら、エリカ、見てみな!この写真が●●円になったよ!』と私の画像を見せてくれたことが何回かありました。この頃の母はほとんど仕事をしていなかったのですが、しょっちゅう買い物をしていて、オシャレをして遊び回っていました」

保育園にも幼稚園にも通っていなかったというエリカさんは、母親が家を空けるときは24時間営業の託児所に預けられていたそうだが、2〜3日預けっぱなしにされてこともあったという。

保育士さんたちが『エリカちゃんママ、まさか子供を置き去りにしたりしないよね?』という話しをしていた気がします。よくわかりませんが、託児所の人たちは母を信用していなかったように感じます」

写真の販売から「ベビーシッター商法」に

ただ、ある日を境に母親は写真を撮らなくなったという。写真を撮られるのはイヤだったものの、「母親が自分に対して関心を失くしたと感じて不安になった」ため、「私のお写真撮らないの?」と聞くと「ヤバイから、もういいの」という風に言われたそうだ。

何が起きたのかは不明だが、幼児ポルノの販売ルートに“トラブル”が発生したのかもしれない。実の子供を「商売道具」と考えていた母親は、エリカさんの写真で儲けることを諦める一方、小児性愛者の男性にエリカさんの相手をさせる「ベビーシッター商法」を思いついて、実行した。

「見知らぬ男性が入れ替わり立ち替わり家にやって来て、そのたびに母からベビーシッターだと紹介されました。母はその男性と何か打合せのようなことをすると、『このおじさんと仲良くお留守番をしていてね』などと言いながら、毎回、ひとりでどこかに出かけてしまいました」

ベビーシッターと紹介された男性の年齢層はさまざまで、「母より若そうな人もいれば、おじいちゃんくらいの人もいました」という。

男性たちとエリカさんは部屋の中で過ごすこともあれば、外に出かけることもあったそうだが、全員に共通していたのが「ハグやキスなどの濃厚接触」と「動画や写真の撮影」だったという。

「やたら服を脱がされた記憶があります。小学校にあがるくらいの年齢なのにおむつをつけられたりもしました。男性に股間を舐められて、あまりのくすぐったさにおしっこを漏らしたことがあるのですが、そのとき畳におしっこのシミがついてしまって、男性がすごく慌てていたのを覚えています。

ベビーシッターは、私が小学校に上がってからも頻繁にやってきていて、一緒にコンビニに行ったりすると、うちが母子家庭だということを知っている近所の人たちからジロジロと見られていました」

警察の介入

悪夢のような日々は、突然終わった。その日もベビーシッターがやって来た。年齢は30〜40代にみえて、痩せ型で眼鏡をしている男性だったという。

男はエリカさんを自宅から離れた公園に連れ出した。人気のない小さな公園だったというが、一通りの遊具は揃っており、エリカさんは男に促されるままブランコや滑り台で遊び、その姿を男はしきりにカメラに収めていたという。

この状況に違和感を覚えた近隣住民が警察に通報したようで、パトカーが駆けつけてきた。

「確か『キミたちはどういう関係?』とか『ここで何をしているの?』とか聞かれたと思います。男性が説明していたのですが、警察官は男性が持っていたカメラをいろいろ調べた後、そのまま男性と私をパトカーに乗せて、警察署に連れて行きました」

警察署に到着すると、エリカさんは、男とは別の部屋に連れて行かれたというが、迎えに来たのは母ではなく、エリカさんの祖母だった。この日を境に、エリカさんは祖母と暮らすことになった。

祖母の証言

いったい何が起きていたのか――。エリカさんも詳細は知らされておらず、かわりに祖母(60代)を紹介してくれた。祖母は現在、脳梗塞を患った後遺症で身体に麻痺が残り、自立した生活が困難となったため施設で暮らしているが、取材に協力してくれた。祖母が振り返る。

「あの日は警察から、エリカが不審者と一緒にいたところを保護したと連絡を貰って、慌てて駆けつけました。警察は最初、私の娘(エリカさんの母親)に連絡したものの、警察からの電話に出なかったようで、それで警察は、エリカがお世話になっていた託児所に連絡し、託児所の緊急連絡先に指定されていた私のことを知ったそうです。逮捕された男は38歳で、『自分は母親に頼まれて子守りをしていただけだ』と供述したようでした」

祖母が警察から聞いた話では、男のカメラからは、公園で遊ぶエリカさんのスカートの中や胸元などを撮影した猥褻な写真がたくさん見つかったという。

カメラの中には、エリカ以外の女の子の猥褻写真もたくさんあって、それが逮捕に繋がったようです。娘(エリカさんの母親)も、男の証言と証拠から、共犯者として逮捕されました。その後、娘には余罪がたくさん見つかりましたが、結果的に不起訴になったと聞いています」

エリカさんは、「しばらくは祖母とふたりで、平穏に暮らしていた」というが、前述した通り、祖母は脳梗塞で倒れてしまい、後遺症が原因で施設へ入居することになってしまった。

そして、ひとり途方に暮れるエリカさんを引き取りに表れたのは、あの日以来、2年ぶりに顏を合わせた母親だった。当時11歳のエリカさんを、母親は再び商売道具にしはじめた――。

「私は母と義父と同じ部屋で“川の字”になって寝ていて」…小児性愛者の医師と再婚した虐待母の「残酷な会話」の中身」に続きます。

「私は母と義父と同じ部屋で“川の字”になって寝ていて」…小児性愛者の医師と再婚した虐待母の「残酷な会話」の中身