「和製マンチェスター・シティ」セレッソ大阪が今、面白すぎる! 悲願達成へばく進中
今季J1でシーズン序盤の話題を一手にさらっているのは、FC町田ゼルビア。J1昇格1年目、しかもクラブ史上初のJ1昇格にして首位に立っているのだから、注目を集めるのは当然だ。
しかし、そんな町田の陰に隠れ、それほど目立たないながらも、今季J1で大きな躍進を遂げているクラブがある。
昨季9位のセレッソ大阪だ。
昨季のセレッソは、開幕戦で引き分けたあと、第2、3節で連敗。スタートダッシュに失敗したばかりか、シーズン最後も3連敗でフィニッシュしている。
途中に調子を上げ、優勝争いにも加わろうかという勢いを見せた時期もあったが、結局は波に乗りきれなかったシーズンを象徴するかのような締めくくりとなった。
ところが、新たなシーズンが幕を開けるや、昨季の悪い流れを引きずることなく、第7節終了時点で4勝3分けと7戦無敗のスタート。首位の町田とは勝ち点1差、2位のサンフレッチェ広島とは同勝ち点の3位につけている。
シーズン序盤で頭ひとつ抜け出した"3強"の一角を形成している格好だ。
守備ではハイプレスで相手を封じ、攻撃ではマイボールの時間を増やして相手を押し込む。そんな魅力的なサッカーを志向するセレッソにおいて目を引くのは、巧みなビルドアップである。
4−3−3の布陣をベースとするセレッソは、ピッチ上の選手たちが自在に立ち位置を変え、ボールを動かし、チーム全体で相手ゴールへ迫っていく。
標榜するサッカーの方向性を一にする横浜F・マリノスや川崎フロンターレと比較しても、一歩先んじていると言っていいだろう。
ピッチ上で繰り広げられるサッカーは、さながら"和製マンチェスター・シティ"である。
和製マンCを象徴するのは、今季川崎から移籍加入した登里享平だ。
「和製マンC」セレッソ大阪の象徴的な存在、登里享平。photo by Masashi Hara/Getty Images
本来、登里のポジションは左サイドバックだが、ライン際を縦に攻め上がるのはもちろん、ときにハーフスペースに立ち、ときにふたりのセンターバックの間に立ち、パスを受けてはさばくことで攻撃のリズムを作っていく。
たとえば、自らの内に絞る動きに合わせて相手のサイドMFが内についてくれば、空いた左サイドの攻撃ルートを、ついてこなければ、数的優位を作り出せる中央の攻撃ルートを選択する、といった具合だ。
登里は「セレッソの強み」として、「3トップは強力だし、インサイド(MF)もボールを拾える選手だったり、起点になれる選手が多い」という点を挙げたうえで、「そういうところに時間を持ってもらえるように、自分が中に入ったりして組み立てている部分がある」と、その狙いを明かす。
確かにスピードのあるカピシャーバ、ルーカス・フェルナンデス、ジョルディ・クルークスらのウインガーに加え、レオ・セアラという決定力の高いストライカーを擁する3トップは破壊力抜群。インサイドMFの駒も、実に多彩だ。
しかも、決して外国人選手の個人能力頼みというわけではなく、北野颯太、山田寛人、柴山昌也ら、若い選手が試合途中に投入されることで、むしろ"理詰めで崩す"場面が増えることもあるほどだ。
今季開幕から好調だった香川真司が故障で戦線離脱となってもなお、その痛手を感じさせない戦いができている。
アンカーを務める田中駿汰が語る。
「いつも(先発で試合に)出ている選手だけじゃなくて、ふだん出られていない選手も戦術理解ができているので、チーム全体でこうやって攻める、こうやって守るという共通認識がとれている。そこは、今のチームの強みだなと思う」
もちろん、今季のセレッソがすべての試合を思いどおりに進めてきたわけではない。守勢に回る時間が長く続く試合もあった。だが、そんなときでも粘り強く戦い、確実に自分たちの時間を作り出すことで、負けを引き分けに、引き分けを勝ちに持ち込むことができているのは、昨季からの変化だろう。
登里が「90分を通しての波をなくしていければ、もっともっと安定した戦いができると思う」と語るように、時間帯によって試合内容には出来・不出来の差があるのは確かだが、まだシーズン序盤であることを考えれば、今季のセレッソがさらなる上積みを期待させるに十分な、質の高いサッカーを見せているのは間違いない。
今季、北海道コンサドーレ札幌から移籍加入したばかりの田中も、「試合数を重ねるごとに(新しいチームに)フィットしていっているが、まだまだ自分のよさは出せると思う」と、さらなるパフォーマンス向上に自信をうかがわせる。
過去に寸前のところでその手からこぼれてきたJ1優勝は、セレッソにとってまさに悲願。昨季9位からの逆襲はなるのだろうか。
楽しみなシーズンが始まった。