都心から約25キロ、4路線が交差する千葉県鎌ケ谷市の新鎌ヶ谷駅前にある千葉県が所有する土地に、商業施設、マンションを建設する開発が進んでいます。駅周辺には大型商業施設があり、市役所もすぐ近く。公園も多いという便利な駅前での計画に注目してみました。

4路線が利用できる新鎌ヶ谷駅。駅としては3駅に分かれており、改札を出てからの乗り換えが必要になっています(筆者撮影)

安定した地盤、高い標高

首都圏の中での鎌ケ谷市の位置(出典:鎌ヶ谷市ホームページ 位置と概要)

鎌ケ谷市は都心から約25キロ、千葉県の北西部にあり、南は船橋市・北は柏市・西は松戸市・市川市と接しています。都心からの距離で言えば、さいたま市や横浜市などと同じくらいです。

新鎌ヶ谷駅があるのは薄い緑色の後期更新世(12万6,000年前から1万1,700年前まで)に形成された地域。これに対して、薄い水色の地域は完新世(1万年前から現在まで)に形成された新しい地域(出典:日本シームレス地質図)

鎌ケ谷市があるのは北総台地(下総台地とも言います)の上。千葉県はほぼ房総半島と重なっており、海に囲まれていますが、半島の中央部には台地、丘陵が続いています。海に近いところ以外は古い時代に形成された安定した地盤の土地が多いのが特徴です。

鎌ケ谷市もそれを市の特徴のひとつとしてアピールしており、市ホームページ内には「ゆれにくい街 鎌ケ谷」というコーナーがあるほど。

それによると「鎌ケ谷市は、千葉県が作成した『ゆれやすさマップ』等で、本市の全域が都心に近い県北西部地域でも比較的ゆれにくいことが分かり、(中略)“ゆれにくい”を連想するロゴマークを広く公募し、平成25年7月に制定しました。」とのこと。

標高が高く、水害に遭いにくい

また、同じページの中には「“ゆれにくい”以外の市の主な魅力」が5項目挙げられています。

揺れやすさ同様、災害に関する項目としては「標高が高いので、海面上昇時も水没しにくい」。
市の説明によると「千葉県で実施している水準測量で、鎌ケ谷市の標高は、約13から28メートル」で、これは接するほかの市と比較しても高い場所に位置しているのだとか。

今から約1万年から5,500年前に起きた「縄文海進」(海水位が上昇、東京湾の奥深くまで海水が入り込んだ現象)でも水没しなかったという記録があるそうで、地震に加えて水害にも強い立地と言えそうです。

4路線利用可でどこに行くにも便利

立地では「交通アクセスが抜群」という点が挙げられています。

「市の中心部に位置する新鎌ヶ谷駅は4つの路線が乗り入れ、交通アクセスは抜群。鉄道を利用すれば、都心(日本橋・浅草など)に直通で約30分、船橋・松戸・柏などの沿線都市にも20分以内で到着します。」とのこと。

その4路線とは北総線、京成成田空港線(愛称「成田スカイアクセス線」)、新京成線、東武野田線(愛称「東武アーバンパークライン」)。

成田、羽田、都心に直結

北総線、京成成田空港線(成田スカイアクセス線)はほぼ一体の路線と考えても良いでしょう。改札入口の手前には待ち合わせなどに重宝する広場が設けられていました(筆者撮影)

北総線は千葉ニュータウンのために作られた鉄道で、京成高砂駅(葛飾区)から印旛日本医大駅(千葉県印西市)を繋ぐ路線です。それを利用、成田空港まで延長して走っているのが京成成田空港線です。

都心のみならず、羽田、成田の両空港にもアクセスしやすい立地です(筆者撮影)

この路線は都心部と成田空港を効率的に結ぶことを目的として誕生したもの。そのため、京成成田空港線は他路線とも接続しており、それらを利用すると成田空港はもちろん、日本橋、新橋、品川、上野、羽田空港などにも楽にアクセスできます。

京成電鉄の成田空港アクセスガイド。新鎌ヶ谷駅はルート上の真ん中くらいにあり、羽田・成田両空港に行くにも都心に行くにも便利ということが分かります(出典:京成電鉄成田空港アクセスガイド)

ただし、年末年始や夏休みなどには上下線ともに大きなスーツケースを持った乗客が多く、混雑することがあるので、その点は覚悟しておいたほうが良いかもしれません。

運賃値下げに利用できる本数も増加

北総線の運賃は2022年に値下げされ、利用しやすくなりました。特に通学定期は大幅に値下げされたため、沿線では子育て世帯の流入を期待しているそうです(筆者撮影)

北総線は長らく運賃が高いと言われてきましたが、京成成田空港線が収益を上げていること、沿線の人口が増えたことなどから2022年に運賃値下げが行われました。駅構内にあったポスターで見ると初乗りが210円から190円になり、新鎌ヶ谷駅から京成高砂駅までが580円から480円にとかなり大きな値下げです。

特に大きいのは通学定期の値下げで、約3分の1になっています。新鎌ヶ谷駅から京成高砂ではかつて1万760円が現在は3,790円に。これによって子育て世代などの流入が増えれば沿線のさらなるにぎわいが期待できそうです。

2023年11月にはダイヤ改正も行われており、新鎌ヶ谷駅の利便性が向上したことが分かります(筆者撮影)

また、北総鉄道では2023年11月に新鎌ヶ谷駅に停車する京成スカイライナーが増便されるなどのダイヤ改正も行われています。

周辺都市への交通も充実

松戸、京成津田沼駅を結ぶ新京成線。ピンク色のシンボルカラーが可愛らしい電車が走っています(筆者撮影)

新京成線は松戸駅(千葉県松戸市)と京成津田沼駅(千葉県習志野市)を結ぶ路線で、生活の足として利用されています。2025年4月には親会社である京成電鉄と合併することが決まっています。

東武野田線(東武アーバンパークライン)の改札。北総鉄道、京成成田空港線はひとつの駅ですが、それ以外は別々の駅となっており、乗り換えは一度改札を出てからそれぞれの改札を利用する必要があります(筆者撮影)

東武野田線は大宮駅(埼玉県さいたま市)から船橋駅(千葉県船橋市)を結ぶ路線で、こちらも住宅地を結ぶ通勤の足として利用されています。これらの沿線を利用すれば松戸、津田沼、船橋などといった近隣の都市に遊びや買い物などに出かけるのも便利です。

駅周辺に生活利便施設などが集結

市のホームページでは「みんなが暮らしやすい」という点も挙げられています。

線路を挟んで2つの大規模商業施設

北総線、新京成線の北側にあるアクロスモール新鎌ケ谷(正面)。駅の高架下にも店舗が入っていました(筆者撮影)
こちらは南側にあるイオン鎌ヶ谷ショッピングセンター。屋上に大きな駐車場があり、広域から買い物客が来ているようです(筆者撮影)

実際、新鎌ヶ谷駅周辺を歩いてみると北総線、新京成線を挟んで北にアクロスモール新鎌ケ谷、イオン鎌ヶ谷ショッピングセンターがあり、毎日の買い物は駅周辺で十分間に合います。物販店、飲食店だけでなく、サテライトオフィスやクリニック、スポーツクラブ、各種スクールなども入っています。

市役所、総合病院、公園も駅から徒歩圏に立地

鎌ケ谷市役所と総合福祉保健センター。駅から歩いても数分ほどです(筆者撮影)

さらにイオン鎌ヶ谷ショッピングセンターと道を隔てて鎌ケ谷市役所があります。市役所とつながる建物には市の総合福祉保健センターがあり、子どもや高齢者のいる家庭なら近くに相談できる窓口があるのは安心でしょう。

駅のすぐ近くから見えるほどの距離にある鎌ケ谷総合病院。今度開発が行われるのは病院と駅の間、現在は草が生い茂っているエリアです(筆者撮影)

安心という意味では駅の近くには鎌ケ谷総合病院があります。30近い診療科があり、病床数は331床。

新鎌ふれあい公園。子どもたちが全力で走り回っていたのが印象的でした。駅近くにこれだけ走り回れる場所があるのはうらやましいところです(筆者撮影)

こうした施設以外にも駅から3~4分のところには新鎌ふれあい公園があるなど、駅近くにはほんとうにさまざまなものがそろっています。

買いやすい土地価格も魅力のひとつ

しかも、これだけ交通、生活の利便性が高い場所でありながら、「土地が求めやすい」のは住宅購入を考える人には大きな魅力。

市の説明によると「都心や成田空港などにもアクセスしやすい場所にありながら、市の平均地価は1平方メートルあたり約9万7千円(平成30年度地価公示)で、近隣市と比較してもお求めやすい地価になっています。」と言います。言い換えれば穴場な街と言えるでしょう。

駅のすぐ前で商業棟、マンションの建設が

千葉県企業局が保有していた土地の位置図。駅隣接と言っても良いほどの立地です(出典:
千葉県企業局新鎌ヶ谷駅前保有土地の事業予定者決定について 位置図)

その新鎌ヶ谷駅前で開発の計画が進展しています。千葉県企業局が保有する新鎌ヶ谷駅前の土地の事業者を募集したところ、3事業者が応募。そのうちの京成電鉄を代表企業とする共同事業体が選ばれ、今後、開発を担当することになったのです。

どのような施設が造られるのか、提案時点でのイメージ図(出典:千葉県企業局新鎌ヶ谷駅前保有土地の事業予定者決定について イメージ図)

具体的な内容としては地上6階、地下1階の商業棟が1棟、地上14階建ての集合住宅が1棟、加えてにぎわいの広場、緑の広場が予定されています。

南北自由通路(幅員8メートル)、東西通路(幅員4メートル)に横断橋も計画されており、駅周辺の回遊性が高まり、行き来しやすくなるはずです。

駅直結、濡れずに帰れる距離に建設予定

現在は駅の出入り口は北口、東口だけですが、このエリアが開発されることで新しく南側にも出入り口ができるようです(出典:千葉県企業局新鎌ヶ谷駅前保有土地の事業予定者決定について イメージ図)

完成後のイメージ図、提案施設の平面図を見ると駅と隣り合うと言ってもよいほどの近さです。商業棟内を抜けていけば、駅から雨に濡れずに帰れるのではないでしょうか。

現在はまだ掲示が出ているだけで工事などは着手前です(筆者撮影)

開業予定は2026(令和8)年度。現時点では建物の詳細などは出ていませんが、市が魅力として土地の求めやすさを挙げていることを考えると、周辺エリアで購入するよりも手頃に買える可能性もあります。完成は少し先のプロジェクトですが、注視しておいても良いかもしれません。

待機児童ゼロを継続中

最後に市が挙げている主な魅力のうち、ここまでで説明しなかった「子育て・教育環境が充実」という部分について触れておきましょう。

市によると鎌ケ谷市では「保育園」と「放課後児童クラブ」の待機児童ゼロ継続中だそうで、妊娠から出産、子育てまで、きめ細やかなサポートがあるとか。

小中学校は専門スタッフやサポート教員の配置が充実している上に、すべての校舎などの耐震化が完了、すべての教室にエアコンを設置、ICT教育環境(タブレット)も充実しているとも書かれています。

市独自の助成金など子育て支援に注力

実際、市のホームページで子育て・教育の部分を見ると、子どもの成長応援臨時給付金、子育て世帯生活応援特別給付金など市独自の制度があり、子育て支援には力を入れている様子。関心のある人は我が家の事情にあった制度、助成があるか、チェックしてみてはどうでしょう。

大仏、梨、ファイターズも鎌ケ谷名物

鎌ケ谷大仏を紹介する市の観光案内図。丁寧に大仏のサイズが表記されていました(筆者撮影)

最後に鎌ケ谷といえばコレというものをいくつか紹介します。歴史などに関心のある人であれば鎌ケ谷大仏を思い浮かべるかもしれません。大仏といっても鎌倉や奈良のモノとは違い、高さは1.8メートルほど。かわいいサイズですが、地元での尊崇は厚く、古くから地域のシンボルとなっています。

梨のほか、最近ではぶどうやブルーベリーなどの栽培も行なわれているようです(筆者撮影)
市役所屋上から見渡してみると、ところどころには農地もありました。鎌ケ谷市では地元の野菜を小中学校で提供する、鎌産鎌消という取り組みをしているそうです(筆者撮影)

同じく、歴史があるのは梨。千葉県は栽培面積、収穫量とも全国一ですが、鎌ケ谷市はその千葉県内でも常に上位を占めています。江戸時代の末から栽培が始められていたそうで、市内には20園以上の直売所があり、梨だけでなくぶどうやブルーベリー、桃などの収穫体験もできます。

市役所内だけでなく、駅の掲示板にもファイターズが登場していました(筆者撮影)

スポーツ好きにうれしいのは、ファイターズタウン鎌ケ谷の存在。生涯スポーツ都市のシンボル的存在として1997年にオープンしたファイターズタウン鎌ケ谷は、プロ野球北海道日本ハムファイターズファームの拠点。選手の育成・練習、イースタンリーグの公式戦のほか、少年野球教室などが開催されています。

駅構内や市役所にはファイターズを応援する展示などがあり、市民に愛されていることが分かります。スポーツが身近にある街に暮らすのも楽しそうです。

市役所屋上から見た新鎌ヶ谷駅方面。写真中央、道の左手にこれから新たな建物が建つ予定になっています(筆者撮影)

以上、周辺の市に比べると認知度はそれほど高くはないものの、実は便利でいろいろそろっている街、新鎌ヶ谷駅周辺を歩いてきました。手頃に住宅を買いたいものの、利便性は外せないと思っている人なら一度行ってみても良いのではないでしょうか。

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