動物の動画や画像を見るだけでも癒やされる?

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 ネット上では、犬や猫などの動物の日常生活を収めた動画や画像が公開されており、日頃からチェックしている人は多いと思います。動物の動画や画像を見ると、心理的にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。癒やしの効果はあるのでしょうか。心理カウンセラーの平井綾乃さんに教えていただきました。

「幸せホルモン」の分泌により精神が安定

Q.動物の動画や画像を見ることで、心理的にどのような影響があるのでしょうか。

平井さん「ある研究によると、自然を映した動画と犬の動画とを並べたときに、犬の動画の方がより主観的な不安感が軽減されたという結果が出ています。動物の種類にもよるかもしれませんが、犬のようにペットとしてなじみが深い動物であれば、動画や画像を見るだけでも癒やしを感じる効果があるとされているようです」

Q.動物によって癒やしを感じるのはなぜでしょうか。

平井さん「アニマルセラピーという、人と動物が触れ合うことによって情緒的安定を目標としたセラピーがあります。

動物をかわいいと思ったり、めでたいと思ったりする感情が生まれると、脳から通称『幸せホルモン』と呼ばれる脳内物質が分泌されます。この物質が分泌されると、不安や気分の落ち込みが軽減され、精神を安定させるという研究結果もあります。これは実際の動物と触れ合うだけではなく、イギリスの研究では動画の視聴後に不安感や心拍数の軽減が見られたという発表もあったことから、一時的にでも癒やしの効果は期待できるようです。

ただ、こうした癒やしを感じるまでのメカニズムはまだ解明されていない部分も多く、生物学的な変化の要因が不明瞭であることも多い領域ではあります」

Q.実際の動物に触れた方が、より癒やしの効果は高まるのでしょうか。

平井さん「こちらも完全に解明されているわけではないのですが、映像や画像のみの場合と実際に触れ合った場合とでは、やはり効果が異なるのではないかと思います。

『ハーロウのアカゲザル』という心理学の有名な実験があります。この実験でアカゲザルの子どもに対して、針金で形を作っただけのサルの模型と毛布を巻いたサルの模型を見せたところ、アカゲザルの子どもは毛布を巻いた模型を好んだといいます。このことから『毛並みに触れてスキンシップを取った方がより愛着が湧きやすいのでは』と考察できますね。

人間と動物との関係性に関する研究はまだ発展段階にあるので、今後さらに解明されていくと思います」

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 ペットを飼っていなくても、動物園や水族館に行ったり、SNSで動物の動画を見たりして癒やされたと感じた経験がある人も多いのではないでしょうか。かわいさやいとおしさ、母性などを感じることで精神の安定や幸福感につながることが少しずつ解明されてきているのだそうです。人間が動物と触れ合った際の心理的変化について、さらに研究が進んでいくと良いですね。