「RIZIN.45」の堀口恭司と朝倉海の勝利を格闘技解説者が分析 強さに「驚いた」敗者についても語った
大沢ケンジが振り返るRIZIN.45 前編
12月31日大晦日、さいたまスーパーアリーナで開催された格闘技「RIZIN.45」。タイトルマッチや因縁の対決、元K-1選手のMMAデビュー、驚きの公開プロポーズもあって大いに盛り上がった。そんな今大会で印象に残った試合について、格闘技解説者の大沢ケンジ氏に聞いた。
堀口恭司(左)と激闘を繰り広げた神龍誠 (c)RIZIN FF
――まずは、メインのフライ級タイトルマッチ、堀口恭司選手vs神龍誠選手について。堀口選手が、リアネイキッドチョークでタップアウト勝利という結果でした。
「負けたとはいえ、神龍選手の強さに驚かされました。正直、堀口選手とはもっと差があって、一方的な展開になる可能性もあると思っていましたが、そんなことはなかった。むしろ1ラウンドは押している印象でした」
――堀口選手も試合後のマイクで、「神龍選手、めちゃくちゃ強くて」と認めていましたね。特によかった部分は?
「組みの強さが光りましたね。僕は控室で扇久保(博正)選手や弥益(ドミネーター聡志)選手らと見ていたんですが、神龍選手がスクランブルから上を取った瞬間に『お〜!すげ〜!』と驚きの声が上がりました。他にも、バックを取ってリアネイキッドチョークを狙ったりと、組みの力は相当なものだと思いましたよ」
――神龍選手がギロチンチョークをかけられたところから、首を抜くシーンが印象的でした。けっこう深く入っていたように見えましたが。
「神龍選手はかつて、扇久保選手が所属するジム(パラエストラ松戸)に所属していたんですが、扇久保選手は『(神龍選手は)めちゃくちゃ体が柔らかい』と話していました。だからそのギロチンの場面も、扇久保選手だけは『これ、決まらない』と言っていましたね」
――そんな神龍選手から1本を取った堀口選手の勝因は?
「打撃、組み、寝技、どれもハイレベルであることはもちろんですが、やっぱり勝負所での組みの強さですね。ロープ際で崩して、上を取ってからフィニッシュ。優位なポジションでの強さは盤石です」
――この試合は33歳の堀口選手に対して、23歳の神龍選手が「世代交代」を掲げた一戦でもありました。個人差もあると思いますが、MMAだと30代中盤にかけてピークを迎える選手も多い印象があります。
「そうですね。確かUFCの軽量級では、35歳以上の選手がタイトルマッチで長く勝てていないというデータがあったんじゃないかと。軽量級はスピードや反応が重要な要素だけど、加齢の影響で落ちてくる。当然、試合数やダメージなどの差はあるにしても、35歳を超えたあたりから衰えを感じてくる選手が多いような気がします。33歳だったらまだ大丈夫だと思いますし、堀口選手ならもっと楽しませてくれるでしょう」
――堀口選手は勝利後、リング上でプロポーズというサプライズもありましたね。
「ホント、素敵な大晦日になって何よりですよ!(笑)」
【朝倉海の膝が決まったワケ】――続いては、セミファイナルのバンタム級タイトルマッチについて伺います。前日軽量でフアン・アーチュレッタ選手に体重超過がありました(※)が、朝倉海選手が2ラウンドでTKO勝ちを収めました。
(※)前日計量で契約体重の61キロを2.8キロオーバー。両者の交渉の末、試合1時間前の計量で68キロ未満であれば試合を実施することに。朝倉が勝った場合は新王者に、アーチュレッタが勝った場合はノーコンテスト、王座は空位という条件で行なわれた。
「アーチュレッタ選手は体重超過したことで、レッドカード(50%の減点)からスタートしたので、勝つためにはKOか1本を狙わざるを得なかった。それもあって、得意とするレスリング主体の戦い方ではなく、スタンドでの勝負を選んで積極的に前に出ました。そこに海選手がドンピシャでテンカオ(膝蹴り)が入りましたね」
――戻し体重が68キロ、試合の1時間前に計量が行なわれましたが、この影響は?
「当然、キツいと思います。控室でアーチュレッタ選手を見た時もかなり汗を出して、何度も体重を測っていた。体重調整には相当苦労していたと思います」
――海選手が勝利し、2度目の王座戴冠。ある意味で"最も平和な結末"に落ち着きました。
「そうですね。アーチュレッタ選手の体重超過がなく、得意なスタイルで戦っていたらどうなっていたのかは気になる点ではありますが、こればかりは"たられば"になりますから。海選手がしっかり勝ちきったことが大きい。海外挑戦を口にしていますから、次のステップを期待したいです」
――他に大沢さんが気になった試合はありますか?
「扇久保選手がジョン・ドッドソン選手に勝利した試合です。彼は2016年に、UFCの登竜門『TUF』で現UFC世界王者のアレッシャンドリ・パントージャにも勝っている。これを言うと、『まだそんな過去のことを言っているのか』とSNSなどで指摘されるんですけどね(笑)。今回は、過去にUFC世界王座に2回挑戦したドッドソンに勝利したわけですから、あらためて扇久保選手の強さを感じましたね」
――扇久保選手は「TUF」で準優勝を果たしながら、UFCと契約には至らなかった悔しさがあるだけに、一段と気持ちが入っていたでしょうね。
「あの魂のタックル、本当によかったです。今回の勝利はもっと評価されていいんですけどね......。適性階級のフライ級に戻した扇久保選手の活躍には、今後も期待しています」
(後編:朝倉未来戦も現実味の平本蓮が狙った「確実な勝利」 YA-MANは善戦も、「MMAは時間がかかる」>>)
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【プロフィール】
大沢ケンジ
1976年11月4日生まれ、東京都出身の元格闘家。第9回全日本アマチュア修斗選手権 フェザー級優勝。和術慧舟會HEARTS主宰。