パッキャオvsメイウェザーの“世紀のリマッチ”の実現性は? 榊原CEOに訊いた偉才を使う意味「RIZINにはまだ飛び道具がいる」

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8年前に世界を驚かせたメイウェザーとパッキャオ。この両雄がふたたび激突するとなれば、エキシビションと言えど、話題沸騰となるのは必至だ。(C)Getty Images

 まさに電撃的な登場だった。

 昨年12月31日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで実施された格闘技イベント「にゃんこ大戦争 presents RIZIN.45」に、元ボクシング世界6階級制覇王者(海外では8階級制覇王者とも)のマニー・パッキャオ(フィリピン)が登場したのは、フアン・アーチュレッタ(米国)の体重超過で物々しい雰囲気が漂っていた朝倉海(JAPAN TOP TEAM)との第16試合の直前だった。

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 RIZINの榊原信行とともにリングに上がったパッキャオは、「2024年、実はとんでもないカードを組もうと思っています。世紀のリマッチ」と投げかけられると、「準備はできています」と挨拶。軽く会場を沸かせると、「来年ぜひ皆さんに会って、ビッグファイト、フロイド・メイウェザーとやれるように頑張りたいと思いますので応援よろしくお願いします」と続けた。

 もっとも、RIZINでの再戦構想は、海外メディアを中心に以前から囁かれてはいた。しかし、改めて公の場で交渉そのものが明かされたのは、これが始めてだった。それも当事者の口からである。

 パッキャオが45歳、メイウェザーが46歳と最盛期は過ぎている。ゆえに5億ドル(約741億8000万円)という異次元の興行収益を生み出した2015年5月の第一戦のようなドル箱と言えるようなマッチメークにはならないのかもしれない。それでも話題性は十分で、ボクシング界を巻き込める波及力を考えても興味深いカードであるのは間違いない。

 大会後に恒例となっている総括を行った榊原CEOに訊くと、リング上では明かされなかった再戦の輪郭がうっすらと見えてくる。

「パッキャオとは23年に戦うことができるようにお互い契約をした。ただ、タイミングと相手という部分で、パッキャオとやるという熱が作れる相手を僕らが提案できずに一年が経ってしまった。そういうなかで、今年(23年)の秋ぐらいからフロイドとは『パッキャオとやったらどうか』という話は進めているんです。だから、最終的に本当に二人がリマッチをやれるかどうかってところは、日時や場所も決まってない。これからしっかりと詰めていく段階です」

 ただ、すでに両者は次のエキシビションマッチが決定済みではある。パッキャオは今年4月に元K-1 WORLD MAX王者のブアカーオ・バンチャメーク(タイ)との対戦を予定し、メイウェザーも昨年6月に大波乱を巻き起こしたジョン・ゴッティ3世との再戦を今年2月に実施すると決まっている。ゆえに双方の次戦結果も交渉に影響するのかもしれない。

一般的なファンのために「お祭りというようなものにしていかないと」

数多のイベントを開いてきた榊原氏は、世界的なレジェンドのリマッチ実現に自信を覗かせる。(C)Getty Images

 それでも「ふたりともRIZINの舞台で戦うことには『イエス』と言ってくれている。それをどのタイミング、どういう流れの中で、組むかを調整したい」と断言する榊原CEOは、世界的な知名度を誇るレジェンドを使う意義を力説する。

「彼らを使う意味とかっていうのは、通常のRIZINとはちょっと違う視点を持っているんです。日本のファンからすると、『いや、そんなものはいらない』とか『もっと平本蓮の試合を組め』とか『未来の試合でいい』とかっていう思いはあると思います。でも、もっとワールドワイドで、RIZINに国外のファンを振り向かせていく必要がある。そういったためには、まだまだ飛び道具がいると思うんで」

 これまでRIZINは、日本のコアな格闘技ファンが好む硬派なカードを創造してきた。一方で、榊原氏は2018年の大みそかに行った那須川天心とメイウェザーなど世界的な話題となるマッチメークも実現させてきた。

 RIZINを「あらゆるドラマがある」と自負する。だからこそ榊原氏は世界に視野を向け、ボクシング界を巻き込むようなイベントの実現に意欲を示す。「メイウェザー、パッキャオ以外のボクシングのトップアスリートともコミュニケーションを取っている。エキシビションという枠の中であれば、非公式マッチであれば、日本でも戦える選手はいる」と論じる同氏は、自らが描く構想の一端を覗かせてもいる。

「ライアン・ガルシアやガーボンダ・デービスのような選手にも僕はチャレンジをしたい。ちょっと他の、海外のプロモーションとは違う形で、RIZINという舞台に海外からの視線を集めるようなチャレンジはあってもいいかなと思う。まぁ大きな規模でやりたいとは思いますけど、パッキャオvsメイウェザーだけで、東京ドームが埋まるとは思えない。

 どちらかというと競技会というよりも、お祭りというようなものにしていかないと一般の人たちが振り向いてもくれない。大みそかのRIZINだけは見にくるというようなカジュアルなファンを巻き込めるような求心力をバランスよくラインナップできるイベントを、『まさか』を作り出せるようにチャレンジがしたい」

 果たして、「まさか」のイベントをRIZINは仕掛けられるか。そのなかでパッキャオとメイウェザーの再戦はアイコンとなりえるのか。榊原氏が「最終調整をしていきたい」と自信を覗かせる交渉の行方を興味深く見守りたい。

[取材・文:羽澄凜太郎]