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ミュージックレイン発の、新たな音楽マネジメントチーム「MiCLOVER」が始動!2024年1月7日には初のライブイベント“LAWSON premium event MiCLOVER FES. 2024”の開催も決定している。MiCLOVERのアーティストたちが続々と登場し、音楽プロデューサー兼音楽評論家の冨田明宏がその魅力に迫っていくこの連載も第6回目。今回はTVアニメ『デキる猫は今日も憂鬱』OPテーマ「憂う門には福来たる」で今年デビューしたシンガーソングライターのsomeiが登場!ミュージックレインからのデビューが突然決まったという彼女の心境はいかに――?



【連載】ミュージックレイン発音楽アーティストマネジメントチーム「MiCLOVER」、“MiCLOVER FES. 2024”開催記念インタビュー

INTERVIEW BY 冨田明宏

TEXT BY 金子光晴

PHOTOGRAPHY BY 三橋優美子

シンガーソングライターへの憧れは母がきっかけ



冨田明宏 そもそも、someiさんがシンガーソングライターに憧れたきっかけはなんだったんですか?

somei 母の出演しているライブを観に行ったときに“歌手”という概念を知ったことがきっかけですね。

冨田 おいくつくらいのときですか?

somei 小学校1年生くらいのときですね。それより前から歌というものを知りたいと思っていたんですけど、幼稚園のときは8時に就寝させられていたんですよ。おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に住んでいたんですけど、テレビがおじいちゃんとおばあちゃんの部屋にしかなくて、テレビが観られる時間が6時半くらいまでで。だいたい音楽番組が始まるのって8時以降からじゃないですか。こども番組の中で歌っているのを観るしかなかったんですが、そういうテレビ番組で歌う人になりたいと漠然と思っていたんです。



冨田 こども番組でいうと、例えば「天才てれびくん」とか?

somei まさにそうです!幼稚園の卒園文集に「てれび戦士になりたい」って書いてました(笑)。

冨田 それが最初のきっかけで、小1のときにお母様がライブに出演している姿を見たわけですね。

somei そうですね。母は琴を弾いていたんですけど、ボーカルの方が別にいて、その方を見て「歌手になりたい!」って。

冨田 そうだったんですね。そしてお母様は琴を……どんな音楽ジャンルだったんですか?

somei すごく変わっていて、色んな楽器が混ざり合ったライブだったんです。そのときにいたのは、ギターとフルートと三味線と琴とコンガとかのパーカッション。

冨田 多国籍でかっこいい!そこからは?

somei ピアノと琴とバレエをずっと習っていたんですけど、小学校3年生のときに歌って踊れる職業があるとミュージカルを観て知ったんですよ。それで、ミュージカルの子役のオーディションを受けて、落ちて、まず打ち砕かれるんですけど(笑)。それからも同じようなオーディションや歌手のオーディションを受けたりして、小学校5年生のときに「弾き語りをしたいからギターがほしい」ってサンタさんに手紙を書いて、プレゼントしてもらったんです。

冨田 “サンタさんの代理人”であるご両親からすると、音楽に興味を持ってくれて嬉しかったでしょうね。

somei そうだったと思います。父も母も音楽をやっているので。

冨田 ミュージカルは何を観たんですか?

somei 初めて観たのは劇団四季の「キャッツ」でした。踊るし、めっちゃ歌うしで。

冨田 結構激しいですよね。それを観て、とにかく歌って何かを表現したいという想いがあったわけですね。それでギターがやってきた。最初に弾いた曲って覚えてますか?

somei アニメにも専らハマっていた時期だったので、『けいおん!』とか『Angel Beats!』のスコアを買って、「ふわふわ時間」とかを弾いてました(笑)。

冨田 実は『Angel Beats!』のガルデモのアルバム『Keep The Beats!』の解説、僕が書いてるんですよ(笑)。あれからも13年ですもんね。

somei そうなんですか!?LiSAさんが大好きで、『Angel Beats!』からLiSAッ子まっしぐらです。あとはディズニーチャンネルでやっていたドラマにハマっていて、マイリー・サイラスが好きでした。英語なんですけど、お父さんに教えてもらって、見よう見まねで弾き語りをしてましたね。

冨田 確かにマイリーもギター女子ですね。周りに趣味の合う人っていましたか?

somei いなかったです。アニメが好きな子はたくさんいたんですけど、音楽をやりたいという子はなかなかいなくて。それで両親や両親の友達とアニソンバンドを始めたんです。

冨田 どんな曲をやってたんですか?

somei 『けいおん!』とか『創聖のアクエリオン』とか『エヴァンゲリオン』とかでした。

冨田 最高の環境ですね。そこから自分でオリジナル曲を作るきっかけってなんだったんですか?

somei ライブを1人でさせていただくことになったんですが、オリジナル曲があるというのが前提としてあったんですね。作曲自体は見よう見まねで始めてはいたんですけど、実際にやらなきゃ!となったきっかけはソロライブでした。

冨田 それはいつ頃の話ですか?

somei 中学に入った頃です。

冨田 だいぶ早いですね。最初に作ったのはどんな曲だったんですか?

somei ものすごく暗い曲でした(笑)。アップテンポなんだけど、言ってることは暗いしマイナーで。それがかっこいいと思ってたのかもしれないですね。

冨田 そして、ご両親の影響で古い洋楽、ウェストコースト・ロックのイーグルスとかクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングなどにハマっていったということですが、もう一度聞きますけど友達とはなかなか共有しづらい趣味ですよね(笑)。

somei 中学まではそうでしたね(笑)。高校に入ってからはちょっと変わった高校だったので、自分の趣味も好きだよという人が結構いてびっくりしました。部活も音楽部というグリークラブみたいなものだったんですけど、そこでイーグルスのホテカリ(「ホテル・カリフォルニア」)を流してたらいっしょにノってくれる子がいて、「知ってるんだ!」って。

冨田 へぇー!そこで趣味の話ができる友達ができて、自分で曲を作って歌うようになったわけですね。



「リスアニ!は創刊号から読んでました」



冨田 そして、ミュージックレインの「MiCLOVER」に所属になりましたが、個人の活動からいわゆるメジャーな活動になったのはどういうお気持ちでしたか?

somei あんまりデビューまでのグラデーションがなかったので、急に変化した感じでした。オーディションで決まったのもすごく急だったんですけど、そこから生活が変わってきて。それまでライブも年間50本くらいやっていたんですけど、それは一度辞めようとストップがかかって音楽制作をすることになりました。オーディションに受かったとはいっても、これから大きな場所でライブをしても自分の音楽を聴きにきてくれる人はいるのかな?って不安がすごくあって。

冨田 でも、オーディションに受かって活動が始まって、今はアニメの主題歌でsomeiさんの楽曲が流れてるじゃないですか。それはどのようにご覧になってますか?

somei それも、まったく実感がなくて(笑)。もし、自分のライブに少しずつお客さんが増えていって、「アニメの主題歌が決まりました!」っていうキレイなグラデーションになっていたら、もっと実感があるのかもしれないですけど、オーディションから急に「アニメタイアップ決まりました!メジャーデビューです!」になって、気づいたら「アニメで自分の曲が流れてる!?」という感じなんですよ。ずーっと実感のないままで不安だし、リリースイベントもあるんですけど、お客さん本当に来てくれるのかな……って。

冨田 今はSNSやYouTubeでリアクションがたくさんあると思うんですけど、それをご覧になっていかがでしたか?

somei そこでやっと実感というか、「届いてるんだ」と感じました。自分の伝えたかったことを読み取ってくれた方がコメントしてくださるので、すごく温かい気持ちになりますね。

冨田 しかもコメント欄に外国語のコメントもあったりするじゃないですか。

somei アニメの力をすごく感じて、日本のアニメが世界で愛されていると思いましたし、繋がっているんだなというのを感じました。



冨田 ご自身もアニメが好きで、アニメソングのカバーをされていたわけで、今はいわば「憧れになれた」わけじゃないですか。それについての実感は?

somei それも実感がないんです……(笑)。それこそリスアニ!さんも創刊されたときから読んでるんですよ。

冨田 えっ!それはありがとうございます(笑)。

somei 自分もリスアニ!に載るのが夢だと思っていたんですけど、いざ載ってみたら想像していたのと違って、「なんでこんなに自分じゃない人みたいに見えるだろう」って思いました(笑)。

冨田 それが当事者のリアルな意見なんでしょうね。13年前のリスアニ!創刊号の表紙は『けいおん!』だったんですけど、あの頃読者だった方が、実際にアニメの主題歌を歌っているのは僕たちとしても嬉しいし、時の流れを強烈に感じますね。もしかしたら今後リリースイベントや人前で歌う機会が増えると、実感が湧いてくるのかもしれないですね。

somei ちょっとずつちょっとずつ、ですね。

表現したかったことに気づいた瞬間



冨田 someiさんが作詞・作曲をされたメジャーデビュー曲「憂う門には福来たる」ですが、制作を振り返っていかがでしたか?

somei 最初は暗いイメージで入っていったんですけど、最終的に日常の中にある愛おしいものの大切さを込めた曲になりました。自分で書いた曲なんですけど、お客さんからの反応を聞いて、自分の表現したかったことはこれだったんだと改めて思いましたね。身近なもの、例えば“推し”とか飼ってる猫ちゃんとかに対する愛情を曲にしたものって意外となかったと思うんですよ。自分の思っていたものがなんだったのか、皆さんの意見を聞いてからやっと腑に落ちた気がしました。



冨田 なるほど、受け取った人のリアクションを見て「こういう意味があるんだ」と気づかされたんですね。

somei そこで完結した感じですね。

冨田 もしかしたら自分1人で活動しているなかでは生まれなかった曲かもしれないですね。でも、不器用でも頑張って生きている人々への応援歌という印象があって、この曲で救われる人がたくさんいそうな気がします。

somei 救うというか、聴いてほっとする人がいたらいいなって。ちょっと重荷に思っているものが取れたらいいなって思います。

冨田 そして、TVアニメ『僕らの雨いろプロトコル』EDテーマ「Another Complex」ですが、この曲は青春の匂いが詰まっている曲になっていますね。制作を振り返っていかがですか?

somei いやー、ものすごく大変でした(笑)。この作品のために色んなデモ曲を書いて迷子になっていて、最初はEDMに挑戦したんですよ。EDMっぽい曲を10曲くらい書いたんですが、途中から方向転換しようというアドバイスをいただいて、そこからさらに10曲書きました。アニメの聖地である川越(埼玉県川越市)に取材に行ったりして、曲も脳みそをこねくり回しながら作曲しました(笑)。最終的にEDMから方向転換して、最初に書いた曲が「Another Complex」なんです。



冨田 試行錯誤したけれど最初に戻ってきたわけですね。曲を作っていて何が一番苦しかったですか?

somei アニメのエンディングなので「作品に寄り添う」という大前提があって歌詞も書いていくんですけど、書いていて全部同じようなものになって、そこから抜け出せなくなってしまったんです。新鮮さがない、どれ聴いても同じかもしれないと思うようになって……。

冨田 そこから抜け出したきっかけはなんだったんですか?

somei 抜け出せなかったです(笑)。自分を客観視できていないというのもあって、プロデューサーさんに選んでもらいました。

冨田 第三者の意見を聞いて前に進んだほうがいいときもありますもんね。でも、この曲の思春期の不器用な感じは、その悶えから出てるのかもしれないですね。

somei 歌詞をすっごく悶え苦しみながら書いていましたね(笑)。

冨田 答えが出ない、未完成ゆえの良さがあるじゃないですか。そんな瑞々しい若さみたいなものを曲からすごく感じていて、それが作品にすごく合ってますよね。アニメの良さですけど、ノンテロップEDを見て楽曲が作品と融合することで完成した印象です。

somei 映像の桜がすごい綺麗で、私もsomei(ソメイヨシノが由来になっている)なのですごく嬉しくなりました。実際に取材に行った場所でもあったんですけど、情景描写は自分の中にあったものが投影された感じがしました。確かに、アニメと楽曲が重なったところで完結するというのを感じましたね。

MiCLOVERの関係性は“姉妹”



冨田 そんなsomeiさんですが、「MiCLOVER」でどんなアーティストになっていきたいと思われていますか?

somei 色んなジャンルの曲に挑戦させていただいているんですけど、「自分は何のジャンルなんだろう?どこに属するんだろう?」という疑問があって、ちゃんと決めないとダメだと思っていたんです。でも、色んなアーティスト性を見せていけるのも良いことだと思って、someiらしく色んな顔を見せられるアーティストになっていけたらいいなと思っています。

冨田 色んなジャンルの曲を歌いながらも、someiさんから生まれた言葉やメロディという軸があるからこそ成立する活動だと思うんですよね。アニメ作品との出会いで柔軟に音楽性を変えることができるのも、この業界で活躍されるみなさんの魅力であるのは間違いないので。シンガーソングライターという活動で、伝えていきたいことってなんだと思いますか?

somei 今、思っているのは、「憂う門には福来たる」で言いたかったようなことですね。すごく憂鬱な日があっても、そばにあるような愛おしいもののことを思えるように、というか……人が聴いてちょっとでも肩の荷が下りるような、安心をもらえるような音楽を作っていきたいと思います。



冨田 僕も意外とすぐ憂鬱になったり、人生ってなかなか上手くいかないなと思う一人で(笑)。僕みたいな人には“ちょっと頑張れる”とか、“今日一日が報われる”とか、そういう音楽ってすごく必要とされていると思うんですよ。疲れない言葉や、無用な圧力のない音楽っていつの時代も必ず求められていますから。someiさんの楽曲はまさにそういう魅力があるなって。

somei 無責任だとは思うんですけど、誰かにとっての「大丈夫」を作りたいんですよ。私自身もそういう経験があるので。

冨田 わかるなぁ、無根拠でもいいから「大丈夫」って言ってもらいたいときってあるんですよね。someiさんのお話を聞いていて、「MiCLOVER」の幅の広さを改めて感じました。これが“ MiCLOVER FES. 2024”でも表現されるかと思うと楽しみですね。今、「MiCLOVER」というチームにはどんな印象がありますか?

somei 姉妹みたいな感じですね。まだそんなにたくさんアーティストがいるわけでもないので、距離感もあまり感じないですし、温かい雰囲気です。それに、皆さんめちゃめちゃ素敵だし、個性的なんですよね。似てる人がいなくて。そこも「MiCLOVER」の良さですね。

●ライブ情報

LAWSON premium event MiCLOVER FES. 2024

日時:2024年1月7日(日)16:30開場/17:30開演

(20:00頃終演予定)

※終演時間は当日のステージの進行状況により前後する可能性がございます。あらかじめご了承ください。

会場:Zepp Shinjuku(TOKYO)

出演:CHiCO、halca、シユイ、小玉ひかり、somei

■チケット料金

全自由 7,500円(税込/ドリンク代別/整理番号付き)

※3歳以上有料

※再入場不可

※(枚数制限)お一人様4枚まで

問い合わせ先:SMCエンタテインメント

info@smc-information.com

詳細はこちら

https://musicrayn.com/contents/micloverfes2024

<somei プロフィール>



10月28日生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。アーティスト名には「さまざまな姿を持ち、移りゆく季節に寄り添うソメイヨシノのように、たくさんの表情を持ち多くの人の瞬間に寄り添えるアーティストになれるように」というメッセージが込められている。中学2年生のときにライブ活動をスタートさせた。2023年8月、ソニーミュージック内のプロダクションおよびレーベル・ミュージックレイン/ MiCLOVERより1stシングル「憂う門には福来たる」でメジャーデビューした。最新作はTVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」エンディングテーマ「Another Complex」。

関連リンク



ミュージックレイン公式サイト

https://musicrayn.com

somei

公式サイト

https://www.somei-official.com/

公式X(Twitter)

https://twitter.com/somei_nanodayo