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年間でもっとも忙しいショッピングシーズンのひとつが迫るなか、TJX、ロス(Ross)、バーリントン(Burlington)などのオフプライス小売店に行く人が増えている。

いくつかのオフプライス小売店は、客数の増加による既存店売上高の増加に言及している。バーリントンの既存店売上高は第3四半期に6%増加し、総売上高は12%増の22億9000万ドル(約3410億円)に達した。ロスストアーズ(Ross Stores)はこの四半期に既存店売上高が5%増加した一方で、T.J. マックス(T.J. Maxx)、ホームグッズ(HomeGoods)、マーシャルズ(Marshalls)などを傘下に持TJXでは、全体的な既存店売上高が6%増えた。

ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)などの大手小売業者は、人々が消費に慎重なことから、今年のホリデーショッピングシーズンに売上が低迷すると予測している。インフレは昨年の記録的な水準から収まりつつあるものの、金利は依然として上昇し続けており、人々の自由裁量の商品をフルプライスで購入する意思を削いでいる。金融サービス企業のバンクレイト(Bankrate)のレポートによると、ほんの数週間前に30年の住宅ローンの平均利率は8.01%にまで上昇し、2000年以来の最高水準の利率となった。

消費者ニーズを掴む



しかし、お値打ち商品の提供で知られるオフプライス小売店は、業界を蝕む困難のいくつかを克服することに成功した。前四半期にこれらのオフプライス小売店は各社揃って、自らの過去の予測を裏切る堅調な売上を報告し、買い物客がお値打ち商品を求めていることを証明した。

バーリントンと同様、ロスやTJXも売上成長を報告した。ロスの総売上高は昨年の46億ドル(約6850億円)から、この四半期には49億ドル(約7300億円)に達した。一方、TJXの第3四半期の純売上高は9%増の133億ドル(約1兆9800億円)だった。

「ロスの店舗すべてで提供してきた優れた価値が、顧客から好意的に受け止められたことにより、売上と収益の両方が予測を上回ったことを喜ばしく思っている」と、ロスのCEOを務めるバーバラ・レントラー氏は、投資家やアナリストを招いた最近の決算発表で語った。

経済が不透明なこの時期に、オフプライス小売店は、買い物客のお値打ち品志向から利益を得るのが一般的だ。この力学はこのホリデーシーズンにも発揮される可能性が高い。TJXは、人々がお得な商品を求めるているため、今年のホリデーショッピングシーズンは好調に推移すると予測していると決算発表で語った。一方で、バーリントンは、安価な商品に乗り換える顧客のトラフィックを獲得してきたと述べている。

「今年に入り、当社の予測は、経済が低迷し、安価な商品に乗り換えた人々のトラフィックが店舗において増加するというものだったが、実際にそのような結果になった」と、バーリントンのCEOを務めるマイケル・オサリバン氏は決算発表で語った。「2024年に向けて、この安価な商品への乗り換えはさらに増えるだろうと考えている。そうなれば、当社はそれを活用する準備ができている」。

プレイサーエーアイ(Placer.ai)の分析調査責任者のアール・ジェイ・ホットビー氏は、この数カ月にインフレは収まってきたものの、安い商品を求める行動は収まっていないと語る。

「現在もっとも人気があるチャネルのひとつだ。マクロの圧力を受けるなか、多くの消費者が価格に注目しているため、オフプライス小売店に引き寄せられるのも納得だ」と、同氏は述べている。

成長に合わせた店舗網拡大



オフプライス小売店の3社は、この1年を通して、その成長に合わせて店舗数を増やしてきた。バーリントンは今年、新店舗を0〜80店舗の新規出店を計画し、今後5年間には500〜600店舗の出店を目標にしている。ロスは100店舗、T.J. マックスは150店舗を今年に出店することを計画している。

「低・中所得の消費者は、家計の負担を減らし、できるだけお得な買い物をすることに重点を置いている。それだけではない。オフプライス小売店の多くは、マーチャンダイジングと新商品の投入という点で、成功してきた」とホットビー氏は述べている。

また、2022年と2023年にフルプライスの小売業者に影響を与えた過剰在庫の問題も、売れ残りや過剰在庫を買い取るオフプライス小売店に恩恵をもたらした。小売業者が不要品を清算しようとしたことで、オフプライス小売店はより良質で豊富なマーチャンダイジングを獲得したと思われる。

TJXは、同社のT.J. マックスやマーシャルズの店舗が、このホリデーショッピングシーズンに、ギフト用商品の目的地となることを「確信している」と述べた。また同社は、この会計年度の業績予想を3回にわたって上方修正した。既存店売上高の成長率は、以前の見通しである3〜4%を、現在では4〜5%と予測している。ほとんどの小売業者がそうであるように、オフプライス小売店にとってもホリデーショッピングシーズンは1年でもっとも重要な時期のひとつであり、特売を狙っている買い物客の獲得をめざしている。

オフプライス小売の回復力



バーリントンは既存店売上高に満足していると述べたが、10月の気温が予想外に温暖だったことから、既存店売上高は軟化した。気温が下がるにつれ、アウターウェア事業が利益を得るようになるだろうと、同社は述べている。アウターウェアなどの寒い時期に向けた商品は、現在のところバーリントンのビジネスの約25%を占めている。

一方、ロスは、業界の困難にもかかわらず、オフプライス小売部門の回復力を信頼していると語った。第4四半期の見通しについては慎重な態度を変えていない。既存店売上高の成長率は1〜2%という予測を維持している。

「オフプライス小売店は、第3四半期と11月にかけての訪問客の数からみて、第4四半期の業績も堅調に推移するだろう。マクロの観点から見て消費者がオフプライス商品を求めているというだけでなく、オフプライス小売店が商品のマーチャンダイジングを非常にうまく行ったことからも、ホリデーシーズンにはこのカテゴリーが最高の業績を挙げると思われる」。

[原文:Off-price retailers are poised to be big holiday sales winners]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu