「糸引きマフィン」騒動の余波、他のイベントでも焼き菓子販売停止 規制強化は必要?
都内で開催されていたアートイベント「デザインフェスタ」(通称:デザフェス)に出店していた焼き菓子店(目黒区)が販売したマフィンが、「納豆みたいなにおいがする」などと購入者から指摘されていた問題。店は11月21日、ホームページを開設し謝罪するとともに、すでに閉業し、営業再開の予定がないことを明らかにした。
デザインフェスタでは出展条件として、食品衛生責任者の資格を取得していること、生物賠償責任保険に加入していることなどを求めていたという。しかし、食品衛生責任者の資格取得は簡単にできることもあり、安全性を担保する上で十分なのかとの疑問や不安の声が強まる事態となっている。
●広がる余波「デスマフィン許せない」
消費者の間で不安が広がる中、思わぬ余波もあった。
11月23日に埼玉県内で開催されたイベントで、シュトーレン、フィナンシェ、マドレーヌの販売が禁止されたと主催者がX(旧Twitter)で発表したのだ。イベント当日の朝、突然要請されたため〈おそらく大多数が廃棄となります〉との事態になったという。
主催者はXで〈理由は先のマフィン事件を受けてのことです。数ヶ月前から申請し、手続きを進めておりました。焼き菓子の提供元もベーカリーとして長年営業されて地元で愛されているお店です〉と投稿(現在は削除)。Xでは「ただただかわいそう」「とんだトバッチリですね。デスマフィン許せない」「ちゃんとしたお菓子に罪はない」などと同情の声が寄せられている。
●「商品管理や食中毒に対する意識の低さに大きな問題があった」
弁護士はこの騒動をどうみているのか。2011年にユッケを食べた客5人が亡くなった焼肉チェーン「焼肉酒家えびす」食中毒事件の被害者弁護団団長を務めた上谷さくら弁護士に聞いた。
「食中毒事件は、季節に関わらず一定数が生じています。目に見えない菌が原因なので、異常が分からずに食べてしまい、重症化したり最悪な場合は死に至ってしまう恐ろしい事件です。
今回の事件は、マフィンを作ってから5日〜6日経過していた商品もあり、購入して食べた人が『納豆のような臭いがした』『糸を引いている』と訴えているとのことです。店側が気を付けていたけれども結果的に起きてしまったというよりは、商品管理や食中毒に対する意識の低さに大きな問題があったと考えられます。
出店条件とされた食品衛生責任者の資格取得は、1日の講習(オンラインも可。栄養士、調理師などの有資格者は講習不要)で取得できるほどに容易です。本来であれば、食の安全に対して高度な知識や技術、経験が求められるにもかかわらず、最低限の知識だけで多くの人に提供できてしまう実態があります。
食に関する知識が浅い人が飲食の営業に関わると、命の危険に直結する事態になりかねません。また、食中毒に関する情報は常にアップデートする必要があります。したがって、今回のような事件を防ぐためには、食品衛生法の改正など、食に関する法令を厳しくすることを検討するべきです」
【取材協力弁護士】
上谷 さくら(かみたに・さくら)弁護士
福岡県出身。青山学院大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。新聞記者として勤務した後、2007年弁護士登録。犯罪被害者支援弁護士フォーラム(VSフォーラム)事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員、元青山学院大学法科大学院実務家教員、保護司。著書に「おとめ六法」(共著、KADOKAWA)、「死刑賛成弁護士」(共著、文春新書など)
事務所名:桜みらい法律事務所