ウォルト・ディズニー・カンパニー創立100周年を記念したコラボモデルのキャンピングカー(筆者撮影)

モビリティの一大見本市「ジャパンモビリティショー2023(2023年10月28日〜11月5日、東京ビッグサイト)」では、近年人気が高いキャンピングカーも数多く展示された。なかでも注目だったのは、イタリアのフィアットが製造する商用バン「デュカト(DUCATO)」をベースとした新型モデルだ。

全長5m超えの大きな車体を生かした余裕の室内により、キャンピングカーのベース車両としても、欧州などで高い人気を誇るのがデュカト。日本には2022年12月に導入されたばかりで、このモデルを使った新型の国産キャンパーにも大きな注目が集まっている。

そんなデュカトをベースに、岐阜を拠点とするメーカーのトイファクトリーでは、あのディズニー創立100周年を記念した限定コラボモデル「ダヴィンチ6.0 ディズニー100 エディション」を展示。また、名古屋を拠点とするホワイトハウスキャンパーでは、車体後方をテラスにできる「クルーキャブテラス(CREW CAB TERRACE)」や、リビングや常設ベッドなど豪華な装備を持つ本格仕様「ヴェローナ(VERONA)」を出展。会場で、これら新型モデルを取材してきたので、その詳細をお伝えしよう。

トイファクトリー:デュカトミッキー仕様


キャンピングカー車内の様子(筆者撮影)

まずは、トイファクトリーが出展したディズニーとのコラボモデル、ダヴィンチ6.0 ディズニー100 エディションから紹介しよう。

ミッキーマウスなど、数々の人気キャラクターが活躍するアニメや映画でおなじみのディズニー。2023年は、その母体企業「ウォルト・ディズニー・カンパニー」が創立100周年を迎えたことで、東京ディズニーリゾートをはじめ、世界中で数々の記念イベントが開催されている。当モデルの製作販売も、いわばその一環といえるもので、限定5台、価格(税込み)は2023万円〜というスペシャルな仕様だ。

ベースとなったのは、トイファクトリーが手掛けている「ダビンチ6.0(DA VINCI6.0)」。デュカトのロングホイールベースモデルL3H2を使い、室内を架装した2列シートの本格仕様で、乗車定員4名で、就寝人数は2名。広いダイネットやキッチン、ベッドスペースなどを常設する高級モデルだ。コラボモデルでは、家具やシートなどに、主にミッキーマウスをモチーフにしたデザインなどを採用していることがポイント。なお、ルーフトップエアコンが付いたこの仕様のボディサイズは、全長5995mm×全幅2050mm×全高2765mmとなっている。

ディズニーの世界観が広がる車内


スライドドアを開けるとミッキーマウスがお出迎えしてくれる(筆者撮影)

当モデル限定のアートワークを採用した外装は、シックでシンプルなイメージ。だが、後席のスライドドアを開けると、家具に施されたスケッチ風アートのミッキーマウスが出現。さらに、奧に進むと、さまざまな箇所でディズニーワールドが展開する。


ドイツ・アグチ社製の特注品となるシート(筆者撮影)

まず、運転席やリビングにあるシートには、欧州の高級キャンピングカーに広く使われているドイツ「アグチ(aguti)」社の特注品を採用。赤いモケットのシートは、ディズニー映画が初めて公開された1920年代頃の映画館にあったシートをオマージュしている。また、妙中パイル織物という稀少な国産の生地を使うことで、長時間座っても季節を問わず肌が蒸れにくく、上質で快適な旅が楽しめるという。さらに、リアルレザーを使ったヘッド部には、金の刺繍で「Disney100」のロゴも施され、特別感も演出する。


アッパーボックスには映画のワンシーンが並ぶ(筆者撮影)

リビングや室内後方のベッドルームにあるアッパーボックスには、ミッキーマウスが登場する短編映画シリーズを使ったデザインも採用する。最初の作品「蒸気船ウィリー」から続く歴代作品を公開順に並べ、モノクロからカラーへ移行するアニメーションの変遷も表現。映画の歴史を眺めながら、ゆったりとくつろげる空間を演出する。

ほかにも、天然無垢のチェリー材を採用したダイネットテーブルには、レトロポップなディズニーアートも投入。観音開きのハッチバックドアを開けると、ミッキーのガールフレンドとして有名なミニーマウスが登場するなど、細部にわたるまで、ディズニーづくしとなっており、愛好家にはたまらない仕様だといえるだろう。

なお、このモデルは、5台の限定生産のため、抽選販売となるとのこと。抽選の受け付けは、2023年10月25日〜2023年12月24日の期間で、結果は2024年1月に当選者へ連絡するとのことだ。

ホワイトハウス:クルーキャブテラス


クルーキャブテラスの外観(筆者撮影)

次は、カーディーラー事業などを手掛けるホワイトハウスのキャンピングカー事業部ホワイトハウスキャンパーが出展した新型2モデル。まず、クルーキャブテラスは、本来2人乗り仕様のデュカトに、後席シートを追加することで5人乗り仕様にするオリジナルの「クルーキャブ5人乗りキット」装着車に、荷室へ収納可能なテラスやキャンピング装備などを追加したモデルだ。


テラス部分を展開した状態(筆者撮影)

ベース車両は、デュカトの標準ボディ仕様L2H2(全長5410mm×全幅2050mm×全高2525mm)。3名の着座が可能なファブリック製の後席には、同社が日本独占契約を結んでいるオランダのSNOEKS AUTOMOTIVE社製を使用。クルーキャブテラスでは、その仕様にキャンピング装備を追加。荷室に、3名の就寝が可能なベッドマットや、それを内蔵する家具キット、ベッドボードと兼用できるキッチンなどを装備する。


クルーキャブテラスのインテリア(筆者撮影)

また、家具下にはスライド式フロアボードを装備し、停車時に展開すればダイニングテラスやデッキテラスとして利用できる。これまでもキャンピングカーには、さまざまなアイデアや利便性の追求から生まれた装備はあるが、収納式のテラスというのはとても斬新だ。天気がいい日に広々とした野外で使えば、まるで大自然が自宅の庭になったような感覚が味わえそうで、とても興味深い。

なお、この仕様は近日登場予定で、車両込みの価格(税込み)は、展示車両の場合で985万円に設定されている。

ホワイトハウス:ヴェローナ


ヴェローナの外観(筆者撮影)

ホワイトハウスキャンパーでは、さらに、デュカトならではの大空間を生かした本格キャンピングカーのヴェローナも展示した。同社の新ブランド「ホワイトライン(WHITE LINE)」からリリースする当モデルは、デュカトのロングホイール仕様L3H2をベースに、リビングルームやベッドルーム、サニタリーユニット、キッチンユニットなどを配置することで、快適な空間を演出した仕様だ。

乗車定員4名、就寝人数4名のこのモデルでは、2名用の2列目シートを装備。もともとデュカトは、運転席と助手席を180度後方に回転できるため、前席と2列目シートの間に昇降式のテーブルを設置すれば、対座式のリビングにすることが可能だ。また、2列目シートは、電動でベッド(サイズ1800mm×1010mm)にすることも可能で、操作もスイッチひとつで簡単。また、室内照明や2列目シートなどを操作するスイッチ類は集中式のため、ベッドに横になって照明を消すなどの設定も楽に行うことができる。


ヴェローナの2段ベッド(筆者撮影)

さらに、室内後方には2段ベッドも常設する(上段1880mm×740mm、下段1880mm×670mm)。ベッドボードは可動式で、就寝人数や積み込む荷物などに応じてアレンジも可能。下段ベッドの後方には、ゴルフバッグなども入れられる収納スペースも用意する。また、ベッド横には、個室となるサニタリーユニットもあり、着替え室やシャワー室、洗面室、トイレなど、多様な用途が可能。なお、このユニットの壁は可動式のため、普段はしまっておき、観音開きのリアハッチドアからの通路にできるほか、逆に、後から室内が見えないよう目隠しに使うこともできる。ほかにも、冷蔵庫や電子レンジ、クーラーなども装備し、高い利便性や快適性を誇る。

価格(税込み)は、展示車両の場合で1480万円。デジタルTVチューナーやドライブレコーダー、フロアマットなど、豊富なオプションも設定する。

デュカトをベースにしたキャンピングカーに注目


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デュカトは、前述のとおり、以前から海外製の高級キャンピングカーとして有名だ。とくにドイツの「デスレフ」やスロベニアの「アドリア」といった欧州メーカー製モデルには、国内で1000万円後半から2000万円を超える高価なモデルも多い。今回紹介した3機種のほかにも、デュカトの国産キャンピングカーは徐々に増えつつあるが、いずれにしろ、長年培った欧州製モデルのブランド力にどう対抗するかが、今後のカギとなるだろう。デュカトを基軸とした欧州勢と日本勢のシェア争い、その行方が今後気になるところだ。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)