すっかりドライブの必須アイテムとなっているドライブレコーダーですが、なかでも急速に人気を集めているのが「デジタルミラー型」です。今回はその最新モデルとして9月に販売を開始したばかりのJVCケンウッド“ミラレコ”「DRV-EM4800」をご紹介します。

↑デジタルルームミラー型ドライブレコーダー「DRV-EM4800」のディスプレイ面と背面。右の2つは前後カメラ。なお、DRV-EM4800の価格はオープンプライス。市場想定価格は5万4100円前後となっています

 

前後カメラを別体型にすることで、取り付けの自由度が大幅アップ

デジタルミラー型ドライブレコーダーは、リアカメラで撮影した映像を、ドライブレコーダーだけでなく、後方を確認するためのルームミラーに映像として表示し、活用するものです。カメラをリアウインドウに装着して使うため、車内の積載状況の影響を受けずに広視野角で後方を確認できるメリットがあります。さらに最近は新車にも装備されることが増えており、それに魅力を感じるユーザーを中心に、後付けできるデジタルミラー型ドライブレコーダーへの人気が高まっているのです。

 

そして、この分野で特に高い人気を獲得しているのがJVCケンウッドの「ミラレコ」です。同社は国内メーカーとしてこの分野での先駆けで、それだけに経験が豊富。これが製品として魅力的なスペックの提供につながり、結果として同ブランドならではの大きなアドバンテージとなっているのです。

 

そうした中で登場したDRV-EM4800は、液晶ディスプレイ部に大画面の12型IPS液晶パネルを採用し、前後撮影用カメラを別体型にしたのが新たなポイントになります。これまでは前方撮影用カメラを本体と一体化していたため、フロントガラス中央にあるADAS(先進運転支援システム)用ユニットとの干渉がどうしても避けられませんでした。前方撮影用カメラを単体にしたことで、この影響を受けない場所への取り付けが可能になったのです。

↑トヨタ「ヴォクシー」に取り付けたDRV-EM4800。カメラを別体型としたことで、ADASユニットなどの影響を受けずに前方を撮影できるようになった

 

↑DRV-EM4800を車内から撮影。助手席側にカメラ部が装着されたが、サイズもコンパクトで視界を妨げない

 

その前後2カメラには、新たに明るく低ノイズで色再現性に優れる裏面照射型CMOSセンサー「PureCel Plus」が採用されました。そのうえで独自の「Hi-CLEAR TUNE(ハイクリアチューン)」を施すことで、夜間やトンネル内などの暗いシーンでは低ノイズでクリア感のある映像で撮影でき、明るいシーンでは抜けの良いスッキリとした色再現性を実現したのです。

↑独自の「Hi-CLEAR TUNE」により、夜間やトンネル内などの暗いシーンでは低ノイズでクリア感のある映像を撮影できていた

 

また、レンズは前後2カメラとも水平133度/対角162度の広視野角レンズを採用して、車両の周囲の状況をくまなく撮影。リアウインドウに施されることが多いスモークガラスへの対応を果たしていることも見逃せません。

↑リアウインドウに装着された後方撮影用カメラ。カメラとしてのスペックは前方撮影用カメラと同一だ

 

音声によるコマンド入力や表示画角調整など、便利機能を満載

JVCケンウッドの“ミラレコ”は使い勝手にも徹底してこだわっています。そのひとつがタッチ操作によるインターフェースです。デジタルミラーとして使う12型のディスプレイにはタッチパネル機能が備えられ、画面をタッチして浮かび上がるアイコンで操作することができます。タッチ反応も良好で、表示された項目に従って小気味よく設定することができました。

↑操作の基本は画面上のタッチ機能を活用する。画面のアングル変更を含め、反応は良好でとても使いやすかった

 

もうひとつが音声によるコマンド入力機能です。今までは手操作が必要だったものを、たとえば「写真撮影」と発すれば静止画撮影を、動画を記録したいなら「録画開始」と声を発すればいいのです。ほかにもこのコマンド入力は画面の表示切り替え機能も含まれます。

 

この機能のメリットは、運転中でも前方から視線を動かさずにコマンド入力ができること。安全面でもメリットがあるのは言うまでもなく、ウェイクワードを入力する必要もなく、その使い勝手の良さから一度使ったら手放せなくなるでしょう。音声の認識精度も上がったようで、入力エラーがほとんどなくなっていました。

↑停止中に音声認識機能を試す筆者。走行中でも前方から視線を移動しなくてもコマンドを発すれば認識してくれる

 

↑音声で操作できるコマンド。ドライブレコーダーとして多用される機能の大半をカバーしている

 

ルームミラーとしては、新搭載の「表示画角調整機能」によって6段階の拡大表示を実現したことも大きなポイントです。これにより、広角レンズを活用した画角の調整をすることで、後方車との距離感がつかみやすくなります。さらに、リバース検出ケーブルを車両側と接続すれば、後退時は自動的にリアカメラのアングルを下向きに切り替えてくれることも便利さを実感できました。

↑リバース検出ケーブルを車両側と接続することで、シフトをリバースに入れると自動的にリアカメラのアングルが下向きに切り替わる

 

これらはまさにデジタルミラーらしい、効果的な機能と言えるでしょう。

 

そして、DRV-EM4800では運転支援機能に新たな機能が追加されました。それが「斜め後方障害物警告」です。走行中に死角となる斜め後方に接近する車両を検出して警告する機能で、たとえば片側2〜3車線ある道路を走行中に、隣の車線で近づいてくる車両を検知するのに役立ちます。

↑斜め後方障害物警告の検知イメージ

 

本来は、近接のミリ波レーダーを使うものですが、DRV-EM4800ではリアカメラに映し出された映像から車両を検知しています。JVCケンウッドによれば、「検知精度はミリ波レーダーよりも劣りますが、今まで気付かなかった斜め後方の車両の存在に気付く一助になることを目指しています」とのこと。そこで検知精度はどの程度なのか、試乗して体験してみることにしました。

 

新しい運転支援機能「斜め後方障害物警告」は予想以上の効果を発揮

試乗車は3代目となるトヨタ「ヴォクシー」。DRV-EM4800の本体を既存のルームミラーに被せて取り付け、前方カメラはADASセンサーと干渉しない助手席側に設置してありました。後方カメラの取り付け位置は一般的なリアウインドウの中央です。試乗コースは片側2車線の道幅が続く一般道で、必要に応じて車線を左右に移動して走行してチェックすることにしました。

 

斜め後方障害物警告の結果は予想以上の効果を発揮してくれました。助手席から検知状況をチェックしていると、左右の車線のどちらからクルマが近づいてきてもすべて検知し、警報音とアイコンによる警告を発したのです。アイコンは右から近づいてくる場合はディスプレイの右端に、左からの場合は左端に知らせてくれるので、わかりやすくて良いと思いました。また、警報のタイミングや出し方も車両に気付くのに十分です。

↑斜め後方障害物警告が作動すると、右側(あるいは左側)の車線上に車両が近づいてくると警報と同時にディスプレイ上にアイコンでそれを知らせる

 

もちろん、ほかのクルマが死角に入ったときにそれを認知判断するのは、ドライバーの役目です。この機能はあくまで“アシスト”ですから。しかし、人間は時としてミスを犯します。それをサポートするのがADASの役割であって、その意味でも“ミラレコ”DRV-EM4800の斜め後方障害物警告は、ドライバーの安心度を高めるのに少なからず効果をもたらしてくれたと言えるでしょう。

↑後続車が接近してきた場合も警報と共にディスプレイ上にアイコンを表示して知らせてくれる

 

これらを含めるとDRV-EM4800は、自由度を高めたカメラの取り付け位置やデジタルミラーとしての機能向上、さらに安全運転支援にも新たな魅力を加えたことで、デジタルミラー型として満足度の高い注目の一台と言えるでしょう。

↑前後カメラとGPSユニット、リバース検出のケーブルを1本に集約したことで、本体との接続は電源ケーブルを加えた2本で済むようになった

 

↑DRV-EM4800の同梱されるキット内容

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

写真/松川 忍