Intelが10月16日に新発表した、開発コードネーム「Raptor Lake Refresh」ことデスクトップ向けの第14世代Intel Coreだが、これの試用機を拝借することができたので、ベンチマークテストの結果を速報版としてお届けしたい。最上位の「Core i9-14900K」のほか、売れ筋であろう「Core i5-14600K」を試すことができた。ひとつ前の世代のIntel Coreと、競合にあたるAMD Ryzenを用意して性能を比較する。

「Core i9-14900K」と「Core i5-14600K」の性能をテスト

Core i9-14900K

Core i5-14600K

○最速を更新する第14世代Core「Raptor Lake Refresh」

Raptor Lake Refreshの主な仕様であったりは、発表内容をまとめた既報記事(Intelが第14世代Core「Raptor Lake Refresh」発表、デスクトップ向け6製品)も参照いただきたい。今回の"Refresh"だが、スペックを見る限りは前世代のRaptor Lakeのクロックアップ版と言えそうだ。製造プロセスやコア数、3次キャッシュ、対応メモリ、熱設計周りを引き継いだ、かなり変化の少ない世代交代に見える。対応チップセットに関してもIntel 600/700シリーズでかわらず、物理的には従来のLGA1700マザーボードがそのまま利用できる。

Core i9-14900KのCPU-Zでの表示

Core i5-14600KのCPU-Zでの表示

ただ、スペック上の変化は少ないとはいえ、変わっている部分もあり、例えばIntel XTUに搭載されたAIを使った自動OC機能の「AI Assist」は、現在のところCore i9-14900K/KFのみで利用できる機能となる。実際にCore i9-13900KではAI Assistの項目が表示されなかった。

Intel XTUに搭載されたAIを使った自動OC機能の「AI Assist」。現在のところCore i9-14900K/KFのみで利用できる。Core i9-13900KではAI Assistの項目が表示されなかった

また、ゲーム・アプリの最適化機能である「Intel Application Optimization」も新たに提供される。ゲームにあわせて動作周波数を最適に引き上げることで、フレームレートを向上させるというものだ。利用するには、UEFIでの設定と対応ドライバーのインストールが必要で、現時点で第14世代Coreに最適化されているタイトルとしてはレインボーシックス シージとMETRO EXODUSが挙げられている。このあたり、タイトル数は今後もっと増えることを期待したい。

ゲーム・アプリの最適化機能である「Intel Application Optimization」を利用するには、UEFIでIntel Dynamic Tuning Technologyを有効にし、対応ドライバーのインストールが必要

Intel Application Optimizationによってレインボーシックス シージとMETRO EXODUSは性能が向上する

試用機については、既報の開封記事(i9-14900Kは最大6GHz! デスクトップ向け第14世代Coreの実機入手、いざ開封の儀)でも紹介したとおり、「Core i9-14900K」と「Core i5-14600K」がセットになったプレス向けの評価キットを使っている。化粧箱は専用のものだろうが、中身のCPUはヒートシンク表面に印刷されたsSpecなどの表記を見る限り、ES品などではない市販品相当のものだろう。秋葉原のPCパーツショップなどが10月17日22時解禁として販売開始をアナウンスしているので、この記事が掲載される頃には、店頭でも購入可能な状態になっているはずだ。





この評価キット専用とみられる横長の箱に「Core i9-14900K」と「Core i5-14600K」が入っていた

それでは、さっそく性能をテストした結果をお見せしたい。テスト環境は以下の表のとおり。比較対象としては、Core i9-13900KとCore i5-13600Kのほか、AMDのRyzen 9 7950Xを用意した。なお、Intel環境に関してはIntel Dynamic Tuning Technologyを有効にしている

○基本のベンチマークテストで基礎体力を検証

CINEBEENCH R23

CINEBEENCH 2024

まずはCINEBEENCHの結果から。総じて、動作クロックが上がった分の性能向上効果は出ているように見える。

CINEBEENCH R23では、Core i9-14900KはCore i9-13900Kに対してマルチコアで5.4%、シングルコアで4.7%の性能向上。Corei5-14600KはCorei5-13600Kに対してマルチコアで3.4%、シングルコアで4.3%の性能向上が確認できた。

CINEBEENCH 2024も似た傾向で、Core i9-14900KはCore i9-13900Kに対してマルチコアで2.3%、シングルコアで3.2%の性能向上。Corei5-14600KはCorei5-13600Kに対してマルチコアで5.6%、シングルコアで3.5%の性能向上が確認できた。

PCMark 10

続いてPCMarkの結果。おおむね、Core i9-14900KとCore i9-13900K、Corei5-14600KとCorei5-13600Kで比べると、それぞれ約2%程度の性能向上が見られる。ここでもクロック分の性能向上はあったと言える。なお、特にクリエイティブ系のDigital Contents CreationでRyzen 9 7950Xが強いのだが、以前にPCMark 10の過去VerでCore i9-13900KとRyzen 9 7950Xを比べた際などは、Core i9-13900Kが優位ないし同等であったと記憶している。ここは追加テストも実施したいので、ひとまず参考スコアとさせていただきたい。

3DMark

続いて3DMarkのDirectX 12ベースのテストであるTime Spyの結果。OverallのTime Spyのスコアはきれいに順当に並んだ感じである。項目別に、Graphicsの項目ではスコアがGPUでほぼ決まるので誤差レベルだが、CPUの項目ではわかりやすく、動作クロックの違いによる差が出ているようだ。

○実ゲームタイトルでフレームレートを計測

ここからは実際のゲームタイトルを使ったテストの結果をお届けする。各テストにおいて、環境設定として、GPUがボトルネックになりにくくCPUの性能差が出やすい低画質設定と、GPUがボトルネックになりやすくCPUの差が出にくい最高画質設定の2種類でテストした。ほか、解像度はフルHDに統一している。

オーバーウォッチ2

まずはオーバーウォッチ2の結果。Botマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。それぞれ、Core i9-14900KはCore i9-13900Kに対して画質“低”では1.9%の性能向上、Core i5-14600KはCore i5-13600Kに対して画質“低”では4.1%の性能向上と、クロック分の性能向上はあるようだ。画質“エピック”だとGPUがボトルネックなのか差が僅少になる。

F1 23

続いてはF1 23の結果。ゲーム内のベンチマーク機能を使用してフレームレートを計測した。画質“超高”だとGPUがボトルネックとなりCPUの差はほぼなくなる。なので画質“超低”で見ると、順当にクロック分はフレームレートが伸びた印象だ。特にCore i9-14900Kはかなり高いフレームレートを叩き出している。

サイバーパンク2077

ゲームの最後にサイバーパンク2077の結果。ゲーム内のベンチマーク機能を使用してフレームレートを計測した。重量級ゲームのためか、画質“低”であってもGPUがボトルネックになるようで、CPUによる差がわかりにくい結果になってしまった。ゲームによっては変化が乏しいこともある例だろう。Core i5-13600Kが若干フレームレートが低くなった以外は、横に並んで頭打ちといったところか。

○クリエイティブ用途でも比較してみる

Procyon Photo Editing Benchmark

クリエイティブ系のテストもいくつか実施した。まずはUL Benchmarks社のProcyon Photo Editing Benchmarkで、これは、実際にAdobeのPhotoshopとLightroom Classicでさまざまな画像処理を行うベンチマークとなる。結果の方は、Photoshopメインの処理であるImage Retouchingで、特にRaptor Lake Refreshのスコアが伸びている。ただ、まだ総じてRyzen 9 7950Xの方がスコアが高い。

動画エンコード

続いて、エンコードアプリの「HandBrake」を使って、4Kで約3分の動画ファイルを、フルHDへとH.264とH.265でエンコード。かかった時間を測定してみた。Raptor Lake Refreshでは、Raptor Lakeに比べ3〜5%程度のエンコード時間の短縮が確認できた。ここでは、Intel CoreにおけるPコア8基+Eコア16基の物理コア24基が、Ryzen 9 7950Xの物理コア16基と同じくらいの馬力に相当するようだ。

○消費電力と温度管理をテスト

システム全体の消費電力

最後に、消費電力関連をテストして締めとしたい。まずはシステム全体の消費電力から。アイドル時はOS起動10分後の数値、CINEBENCH 2024時はベンチ実行中の最大値だ。Intel間の比較では、それぞれ消費電力の目安であるMTPに変更がないわけで、最大消費電力に差は出なかった。Ryzen 9 7950Xと比べるとCore i9-14900K/13900Kの消費電力が大きいというのも想定通りだろう。変わらず、電力をガッツリ使って性能もガッツリ稼ぐというCPUになっている。

CPU温度推移

続いてCPU温度推移。CPU温度はIntel系は「CPU Package」、Ryzen 9 7950Xは「CPU (Tctl/Tdie)」の値を採っている。室温24℃で、CINEBENCH 2024を10分間動作させて推移を計測した。ところどころ温度が大きく落ちているのは処理と処理の合間だ。温度の高い方から、Ryzen 9 7950Xはリミットの95℃付近で推移。Core i9-14900KよりCore i9-13900Kのほうがわずかに温度が高いが、僅差のため個体差の範囲の可能性もある。Core i5-14600K/13600Kはおおむね70℃台前半と余裕で冷えている。Intel系は、Core i9-14900K/13900KのPL1=PL2=253W、Core i5-14600K/13600KのPL1=PL2=181Wの電力設定なら、360mmクラスの簡易水冷クーラーで問題ないレベルだろう。

CPU電力推移

そしてCPU電力推移。Intel、AMDとも「CPU Package Power」の値だ。これもCINEBENCH 2024を10分間動作させている。Core i9-14900K/13900Kはリミットの253Wにほぼ張り付き。Ryzen 9 7950Xのリミットは230Wだが、到達前に温度がリミットに達してしまい、165W前後での推移となった。Core i5-14600Kは153W前後、Core i5-13600Kは142W前後で推移。Core i5系は温度にも余裕があるため、性能を十分に引き出しやすそうである。

CPUクロック推移

最後にCPUクロック推移。Intel系は「P-core 0 T0 Effective Clock」、Ryzen 9 7950Xは「Core 0 T0 Effective Clock」の値だ。これもCINEBENCH 2024を10分間動作させている。Core i9-14900KはCore i9-13900Kよりおおむね200Hz上で動作し、Core i5-14600KとCore i5-13600Kも同様。CPUの動作クロックの推移は、まさにスペック通りの差が確認できた。

○まとめ - すぐ飛びつく変化ではないが、市価次第で化ける?

Raptor Lake Refreshこと第14世代Intel Coreだが、ここまでのテストで確かに性能向上が確認できた。それも額面通り、まさにスペック表通りの、想定内の性能向上が確認できた。機能面での変化は少なく、基本的にどのテストでも前世代に対して数%の性能向上であり、これは明らかに動作クロック向上の効果が大部分だろう。

かなり古い世代からの乗り換えならば、Core i9-14900KやCore i5-14600Kを選ぶのはありだ。だが既に第12世代や第13世代のCPUを使っているなら、乗り換えには向かないだろう。わずか数%の差で、もし第14世代の登場で第13世代が安くなるようなことでもあれば、そちらの方が得だとも言える。目新しさがないだけに、価格差次第という戦いになると思われる。

とは言え、コスパ云々ではなく最高峰の環境にこだわるなら、Core i9-14900Kは悪くない気がしている。特殊なスペシャル版モデルとして過去に登場した「Core i9-13900KS」に相当するようなCPUが、誰でも普通に購入できるレギュラーモデルとして、普通の価格設定で店頭に並んでいれば、ちょっと魅力的に見えてくる。後は販売が始まって市場価格が安定してきてからだが、為替が動きすぎて日本円の価格がスペシャルになりがちな、昨今のご時勢の方が問題になるのかもしれない。

なお、今回は機材スケジュールの関係でちょっと駆け足なテストとなってしまったので、機会が出来次第、詳細な追試テストの記事もお届けしたいと思う。