相模原市の南の玄関口、相模大野駅前で閉店した百貨店の跡地にマンションの建設が進んでいます。相模大野駅前は早くから計画的に整備されてきた街で、公園や複合文化施設などが駅前にある住みやすい場所。今後、それがどうなるのかを見てきました。

小田急線相模大野駅前。正面に見えているのは再開発で生まれたbono相模大野。商業施設、住宅に加え、公益施設なども入っています(筆者撮影)

都心に30分ちょっと、どの列車も停車する相模大野駅

小田急線相模大野駅。すべての種類の列車が利用できる交通利便性の高い駅です(筆者撮影)

神奈川県では横浜市、川崎市に次ぐ人口規模を擁する相模原市の南の玄関口、小田急線相模大野駅。各駅停車から準急、快速急行、特急ロマンスカーに至るまですべての電車が停車する駅で、新宿までは快速急行で30数分。

江ノ島や箱根湯本、小田原行の電車もあり、遊びに行くにも良い立地。駅構内も初めて行くと驚くほど広大です(筆者撮影)

小田急小田原線と同江ノ島線が分岐する駅でもあり、駅構内には江ノ島や箱根など行楽地への案内も多く、遊びに行くにも便利な場所であることが分かります。

駅北口1階にはバスターミナルがあり、各方面へのバスが出ています。空港へのリムジンバスのほか、買い物、遊びに行く路線も(筆者撮影)

駅からは成田、羽田の両空港に加え、木更津、御殿場のアウトレットパーク、東京ディズニーリゾートへのバスなども出ています。最近ではそれほど遅くまで仕事をしないようになったかもしれませんが、東京駅、新宿駅などからは相模大野駅を経由して本厚木駅まで行く深夜バスもあります。

駅と駅北口側の公園などとの間を走るこの道路が、神奈川県道51号町田厚木線です(筆者撮影)

車では駅東側に国道16号(東京環状)が、北側には神奈川県道51号町田厚木線が通っています。国道16号を利用すれば、東名高速道路や中央自動車道、横浜新道など高速道路へのアクセスも容易です。

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商業施設も集積、生活の利便性も高いまち

交通の利便性のみならず、北口を中心に商業施設も集積。買い物にも便利です。

駅直結の複合商業施設・相模大野ステーションスクエア。駅改札前には広場があり、この日はイベントが開催されていました(筆者撮影)

駅には直結の複合商業施設・相模大野ステーションスクエアがあり、14階建ての建物内にはスーパーからカフェ、レストラン、ファッションをはじめ約130店の専門店のほかホテルもあります。

駅東側にある商業ビル、相模大野モアーズ。カラオケなどの遊び場のほか、クリニックや予備校なども入っています(筆者撮影)

駅前広場を挟んでは東側には相模大野モアーズという商業ビルがあり、西側にはbono相模大野というノースモール/ショッピングセンターと、サウスモールの高さが異なる2棟からなる再開発で生まれた大型複合施設があります。

中央がbono相模大野。分譲、賃貸住宅もあり、2棟の中央には広い通路も。1階はビルの中でありながら横丁の雰囲気もあるつくりになっています(筆者撮影)

この施設は駅とペデストリアンデッキで繋がれており、建物の前には広場も。2棟の間は広い屋根のある通路になっており、ベンチも置かれています。ショッピングモールの屋上は庭園で、全体として人が集まれる施設となっています。

また、ノースモール4階にはバスポートセンター、住民票や戸籍などの証明書類が取得できる相模大野駅連絡所、サウスモール3階には市民・大学交流センター「ユニコムプラザさがみはら」、4階には健診施設「(財)ヘルス・サイエンス・センター」など、公共施設や公益性の高い施設なども入っています。

駅北口エリアは計画的に作られてきたまち

再開発が行われている現場。左側は1987年に竣工したロビーシティ相模大野五番街。ちょうど大規模修繕の最中でした。工事現場の向こうに見えているのが複合文化施設相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)(筆者撮影)

駅周辺を見回しただけでも交通、生活利便性の高いまちであることが分かりますが、その相模大野駅北口駅前で2019年に閉店した伊勢丹相模原店の跡地を利用、再開発が行われています。

相模大野駅の北口側の、神奈川県道51号町田厚木線を越えた地域は、1972年から土地区画整理事業が始まるなど計画的に整備が進められてきたエリア。現在再開発が行われている区画は、エリア全体の要とも言える場所に当たります。

安全性の高い高台の広い土地という価値

そこで、まずは北側エリアの全体像を見ていきましょう。

駅北側に周囲と比べて大きな区画があることが分かります(筆者撮影)

上の図は相模大野駅北口の全体を簡略化したものです。見て気づくのは駅から北側に非常に大きな区画があるということです。その区画と駅を繋ぐように通りがあり、区画内には公園があり、学校があり、図書館などがあります。この大きな区画は、元は軍用地でした。

相模原市の中心部は相模原台地と呼ばれる広大で平坦な土地。そのため、旧石器時代から人が住んできており、市内では縄文時代の遺跡や古墳などが発見されています。江戸時代の中頃からは相模野の開発が始まり、新田が開かれるなどしていますが、本格的な開発が始まったのは昭和に入ってから。

1937年以降、陸軍士官学校、相模陸軍造兵廠その他軍の諸施設が、地盤的に安全な広い土地を求めて相模原に続々と移転してきたのです。首都圏近郊には軍都と呼ばれた街が複数ありますが、それはいずれも安全な用地が確保できる場所。相模原もそのひとつだったというわけです。

軍用地を公園、文化拠点、商業施設に

相模大野駅前の大きな区画はいずれも軍用地で、現在、相模女子大学がある場所は陸軍の通信学校があった場所。

現在の地図(右)とまだ米陸軍医療センターが返還される前の地図。広大な土地が接収されていたことが分かります(今昔マップon the webより)

その隣の現在公園や住宅、図書館などがある場所は陸軍病院で、戦後は米軍に接収されて米陸軍医療センターがありました。

そのうち、米陸軍医療センターは戦後長らく返還されず、ようやく返還されたのは1981年になってから。19.7ヘクタールという跡地は国・県・市で3分割し、市はそこに商業、緑、文化の拠点を造るとしたのでした。

4年ぶりに開催されるイベントの準備中に訪れてしまい、そのにぎやかさにびっくりしました(筆者撮影)

結果、生まれたのが現在の相模大野中央公園、相模大野図書館・相模原南メディカルセンターを備えた複合文化施設相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)で、もうひとつが伊勢丹相模原店です。

駅前の掲示。さまざまな施設が駅周辺に集中、回遊できるようになっています(筆者撮影)

駅のすぐ近くに商業施設があるのはよくあることですが、大きな公園やホールがあるまちはそう多くはありません。相模原の場合はそうした歴史的な経緯から、使いやすい場所に立地することができたわけです。

駅のこれだけ近くに緑の空間があるのはうらやましい限り(筆者撮影)

ちょうど取材に行った日には公園で4年ぶりの開催となる第17回もんじぇ祭りの準備が行われており、にぎやかな様子がその時点からでも推察できました。

公園の手前にあるグリーンホール。使いやすい立地にあります(筆者撮影)

また、グリーンホールにも開演前の行列ができていて、近くで気軽に芸術に楽しめるまちのメリットを感じました。

返還された土地の他の利用としては、公園の北側に相模原中等教育学校、西側には公務員住宅、そして南側にはUR(建設当時は住宅・都市整備公団)によって1987年3月に竣工したロビーシティ相模大野五番街があります。

築年は経っていますが、立地と環境から今も人気の高いロビーシティ相模大野五番街。この通り沿いには商店、クリニックなどが続きます。その奥が相模女子大学(筆者撮影)

賃貸、分譲をあわせて数百戸以上という大規模な同物件は、2023年で築36年。築年数は経ていますが、駅に近く、公園に隣接しており、敷地内には商業施設、桜並木、広場などがあることから現在も人気は高いそうです。

百貨店跡地にタワーマンションを建設中

いずれの施設も返還後に計画して建てられ、今も市民に愛され、利用されているわけですが、残念ながら伊勢丹相模原店だけは1990年の開業から29年後の2019年に閉店してしまいました。世の中全般の百貨店離れもありますし、隣駅に町田という商業の大集積地があったことの影響もあるかもしれません。

その後、2021年11月に野村不動産が旧伊勢丹相模原店跡地にマンションを建築することを発表。現在は2025年11月の竣工を目指して工事が進められています。

利便性、環境に配慮した計画

奥の塀の辺りからがかつて伊勢丹があった辺り。現在は細い通路を抜けてグリーンホールに向かいますが、この通路はマンション完成後も利用できるとのこと(筆者撮影)

旧伊勢丹相模原店は駅、駅前の商店街と公園、グリーンホールを繋ぐ場所に立地しており、駅から歩道橋を渡ってそのまま伊勢丹敷地内を抜けて公園に向かうことができる造りになっていました。新しくできるマンションも同じように通り抜けができるようになっており、通路脇には広場や商業施設、公益施設なども設けられる計画。駅と公園、ホールへの利便性はそのままに、その途中に住宅ができるということになります。

歩道橋の手前のビルにマンションの販売事務所が設置されていました。写真の手前、橋のように見えているのが駅から向かう通路になります(筆者撮影)

建物は地上41階建て地下3階という規模で、総戸数は687戸の予定。電気・ガスを併用する新築分譲マンションとしては神奈川県初のCO2排出量実質ゼロの物件となる計画で、電気自動車の時代到来に備えて屋内平置き駐車場約200台全区画に充電用コンセントを設置するそう。環境への配慮のある物件というわけです。

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大学、スポーツ、自然なども魅力

駅周辺に生活に必要な機能が集約された便利なまち、相模大野ですが、ほかにも魅力があります。

相模女子大学。幼稚部から大学院までがそろう、創立120年という歴史のある学校です(筆者撮影)

ひとつは大学が多いまちという点です。駅に「相模女子大最寄駅」と書かれていることから相模女子大があることはすぐ分かりますが、それ以外にも市内には女子美術大学、北里大学、青山学院大学、麻布大学などがあり、学生の姿をよく見かけます。

複数のプロスポーツのホームタウン、相模原市

駅前には相模原をホームタウンとする全チームの告知があり、数の多さにびっくりさせられました(筆者撮影)

スポーツのまちでもあり、サッカーのSC相模原、アメリカンフットボールのノジマ相模原ライズ、ラグビーの三菱重工相模原ダイナボアーズ、女子プロサッカーのノジマステラ神奈川相模原が相模原市をホームタウンとしています。

ホームタウン制度の個人版としてホームタウンアスリート制度を作っており、F1レーサーやプロボクサーが相模原をホームタウンとしてもいます。

相模大野からは少し遠いのですが、市内には相模湖、津久井湖や陣馬山など自然が豊富な点も魅力のひとつ。意外に温泉などもあり、バーベキューや農業体験ができる場も身近にあります。調べてみるとその豊富さに驚かれることでしょう。

商店街内だけでなく、周辺にも新しいお店ができているようで、こうしたにぎわいも住む楽しみのひとつでしょう(筆者撮影)

個人的にはbono相模原にもほど近い大野銀座商店街に新しい店が増え始めていることに興味を持ちました。大型店、複合商業施設も便利で良いのですが、会話のある個人店も近くに欲しいところ。その両方があるほうが生活は楽しくなると考えると、今後もさらに増えて新しい動きになっていくのかどうか、注目していきたいところです。

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人気を受けて待機児童数増加が心配だが…

待機児童に関してはゼロの年も長く続いていた相模原市ですが、このところの人気に施設整備が追い付けていないようです(出典:令和5年4月1日現在の保育所等利用待機児童について 相模原市)

もうひとつ、気になるのはまちの人気に比例してこのところ、待機児童が増え始めていること。市はそれに対して施設の定員増を図ったり、保育の受け皿の確保に取り組んだりとさまざまな手を打っていますが、人気があればこその悩み。難しいところです。

駅近くにさまざまな施設がそろ揃い、利便性が高いだけではなく、リラックスしたり、学んだりもできてしまうまち、相模大野。人気のまちの人気の理由を見に行ってみてはどうでしょう。

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