by Business Durham

AppleがMac向けSoCであるM3シリーズやiPhone 15シリーズに搭載されるであろうA17 Bionicチップに、TSMCの3nm世代プロセス(N3)を採用するとウワサされています。IT系メディアのThe Informationが、AppleはN3によるチップ製造をTSMCに独占的に発注し、TSMCはその見返りとして「製造したプロセッサダイの欠陥品によるコストをすべてTSMC側が負担する」という契約を交わしていると報じられています。

How Apple Will Save Billions of Dollars on Chips for New iPhone - The Information

https://www.theinformation.com/articles/how-apple-will-save-billions-of-dollars-on-chips-for-new-iphone



Report: Apple buys every 3 nm chip that TSMC can make for next-gen iPhones and Macs | Ars Technica

https://arstechnica.com/gadgets/2023/08/report-apple-is-saving-billions-on-chips-thanks-to-unique-deal-with-tsmc/



TSMC Not Charging Apple for Defective 3nm Chips Ahead of iPhone 15 Pro Introduction - MacRumors

https://www.macrumors.com/2023/08/07/tsmc-not-charging-apple-for-defective-chips/



AppleがMac向け独自SoCの次世代モデルとしてM3シリーズを2023年中に発表し、M3シリーズを搭載したMacを2023年末から2024年初頭に発売するというウワサがすでに報じられています。

AppleがCPU12コア&GPU18コアのM3 Proチップをテスト中とのウワサ - GIGAZINE

https://gigazine.net/news/20230515-apple-test-m3-pro-chip/



AppleのM2シリーズはTSMCの5nm世代プロセスの改良版であるN5Pを採用していますが、M3シリーズはTSMCのN3プロセスを採用するといわれています。N3は2020年にTSMCが発表したプロセスノードで、2022年4月に量産体制を整えたことが報じられました。

TSMCが3nmプロセスによる量産体制に入ったという報道、2nmプロセスは2025年頃に展開か - GIGAZINE



N3はN5Pよりシリコンダイ面積当りの論理密度が高く、電力消費の削減とパフォーマンスの向上が期待できます。ただし、N3のような微細なプロセスで製造すると、製造ラインを動かした当初はどうしても一定の割合で不良品が発生してしまいます。

通常、チップメーカーが半導体ファブにチップの製造を注文した場合、欠陥品も含めた製品すべての代金を支払わなければなりません。そのため、チップメーカーは不良ダイをバラバラにして使い回したり、動作クロックを落として下位モデルに流用したりすることがあります。



by Payton Kramer

しかし、The Informationによると、TSMCはAppleに対して「不良品分のダイの代金は請求しない」という契約を交わしたとのこと。TSMCの2022年における収益720億ドル(約10兆3000億円)のうちの23%はAppleが支払っており、AppleはTSMCにとって最大の顧客となっています。The Informationは「TSMCの3nm世代プロセス技術は、十分な生産能力が確保されるまでのおよそ1年はAppleに独占されるだろう」と報じています。TSMCは最大の顧客であるAppleとの契約を続けるため、「不良品分の代金を請求しない」という条件をのんでいるというわけです。

また、AppleがTSMCにN3プロセスでM3シリーズやA17 Bionicチップを大量に発注すれば、TSMCは量産体制を改善しながら歩留まり率をより下げることができるようになります。Appleとの契約を維持するだけではなく、Appleによる大量注文でN3プロセスを改善することで、Apple以外の顧客もN3プロセスに注目するようになるという狙いがあるとThe Informationは指摘しています。

IT系ニュースサイトのArs Technicaは「Apple、NVIDIA、AMD、Qualcommはいずれも最先端チップの製造をTSMCに委託しており、ここ数年でSamsungやGrobalFoundriesといったTSMCの競合企業から乗り越えたメーカーも多く存在します。Intelでさえ、その歴史のほとんどにおいて自社工場で製造してきましたが、Arc GPUやMeteor Lake世代の一部の部品についてはTSMCに依存しているのです」と述べ、Appleとの関係によってTSMCは半導体製造でシェア1位を握り続けることができていると語りました。