Jリーグ7月のベスト11を独自選考 「今季最大の発見」「シーズンMVP級の活躍」を見せる選手たち
スポルティーバJ1月間ベストイレブン
識者による独自選考のJリーグ月間ベストイレブン。7月は、サッカージャーナリストの後藤健生氏に11人を選んでもらった。7月のみならず、今シーズンここまで好プレーを続けているプレーヤーたちの顔が並んだ。
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7月のJ1ベストイレブン。今季好プレーを続けている選手たちが選ばれた
FW/アンデルソン・ロペス(横浜FM)、大迫勇也(神戸)
MF/エウベル(横浜FM)、ジョアン・シミッチ(川崎)、齊藤未月(神戸)、武藤嘉紀(神戸)
DF/永戸勝也(横浜FM)、車屋紳太郎(川崎)、高井幸大(川崎)、山根視来(川崎)
GK/一森純(横浜FM)
7月22日にヴィッセル神戸対川崎フロンターレという注目の一戦があったが、その他のチームは同15日と16日の第21節終了時点で約3週間のミニブレークに入った。従って、ほとんどのチームは7月は3試合を戦っただけだった。
そこで7月のベスト11は、7月に活躍した選手であると同時に2023年シーズンの中盤戦まで、ほぼ3分の2を終えた段階での総括という意味も込めて選出する。
7月に入って、横浜F・マリノスは湘南ベルマーレには勝利したものの、名古屋グランパスと引き分け、そして川崎フロンターレには終了間際の失点で敗戦。天皇杯3回戦でもJ2首位のFC町田ゼルビアに完敗するなど、"足踏み状態"だった。
これに対して、神戸は北海道コンサドーレ札幌とは引き分けたものの、アルビレックス新潟、サガン鳥栖という"難敵"を下し、延期分の川崎戦では前半2点のリードを許したものの、後半一気に流れを変えて大迫勇也の2ゴールで追いつき、首位をキープして中断に入ることに成功した。
首位争いを演じる神戸と横浜FMは、夏場を迎えてともに「万全」とは言えなかったが、サンフレッチェ広島が失速するなど追走グループにも勢いが見られず、奇跡の逆転優勝を狙った川崎も神戸戦が引き分けに終わったため、首位との差を縮めることができなかった。
今季のJ1は、どうやら横浜FMと神戸のマッチレースとなりそうだ。
そこで、7月のベスト11は神戸と横浜FM、そして川崎を中心に選考した。「ベスト11」としては変則的だが、クラブでのコンビネーションを生かしてチームとして機能させたいからでもある。
【大迫勇也は今季MVP級の活躍】神戸が優勝を飾ったら、最優秀選手(MVP)の最有力候補は大迫勇也だろう。
前線から守備をして、ボールを奪ったらショートカウンターで仕留めるという今シーズンの神戸だが、奪ったボールをすぐに展開できるのは前線に大迫というターゲットがいるからだ。
ターゲットとしてポストプレーでチームの攻撃を組織化するとともに、スルーパスも出せるし、そして自らもゴールを狙える大迫。川崎戦の2ゴールによって得点王争いでもアンデルソン・ロペス(横浜FM)を抜いて単独トップに躍り出た。
いずれは日本代表からも声がかかるであろう。
この大迫と良好な関係を築き上げているのが武藤嘉紀。2人でボールを奪って、2人だけで相手ゴールを脅かせるのはすばらしい。大迫が代表復帰する時には、武藤にもチャンスがありそうだ。
アンデルソン・ロペスの得点力もまったく落ちない。リーグ戦では湘南戦の2ゴールだけだったが、セルティック戦で2ゴール、マンチェスター・シティ戦でも1ゴールを決めている。
そこで、大迫とアンデルソン・ロペスにツートップを組ませた。横浜FMでも最近はマルコス・ジュニオールが高い位置にいてツートップ気味でプレーしているので問題はないだろう。大迫がアンデルソン・ロペスにパスを供給するような形で機能するはずだ。
左サイドには横浜FMのエウベルを起用した。
横浜FMの前線のブラジル人トリオのなかで、7月に入って右のヤン・マテウスはお疲れ気味だが、今季はやや出遅れていた感もあったエウベルが元気を取り戻した。
湘南戦、川崎戦ではエウベルのいる左サイドが攻撃正面だったし、マンチェスター・シティ戦でもスピードを生かしてカイル・ウォーカーに競り勝ち、またサイドバックの永戸勝也の攻撃参加を引き出した。
永戸もこのところ好調で、オーバーラップ、インナーラップを繰り返して横浜FMの攻撃に多彩さを加えている。
左右のバランスを取るために、右サイドバックにも攻撃参加の形を期待したいので、MFとしてもプレーできる山根視来を置いた。山根と武藤、大迫が組む右サイドも面白いコンビネーションが実現するのではないだろうか。
セントラルMFとしては、川崎のジョアン・シミッチと神戸の齊藤未月を選んだ。
シミッチは守備的なイメージが強いが、最近は攻撃の組み立てでも中心として安定したパフォーマンスを発揮している。また、齊藤は新天地の神戸で次第にチームに馴染み、地味ではあるが中盤で存在感を高めてきている。
【今季最大の発見は川崎のセンターバック】川崎のセンターバック(CB)の高井幸大は、今シーズンのJリーグの最大の発見の一つだろう。負傷者が続出するなかで1年目の高井が起用されたのだが、高さとスピードを兼ね備え、また正確なパスも出せるCBとしての総合的な能力の高さを発揮している。
U−20ワールドカップではサイドバックとして起用されて迷いが生じたのか、帰国後はミスを多発していたが、7月に入ってようやく復調。横浜FMとの試合ではアンデルソン・ロペスやエウベルと渡り合って、抜かれかけても体を入れて深いタックルでボールを奪う場面もあった。
無理な体勢でもプレーできるのは大きな魅力。まだまだ、判断ミスも多いが、経験を積んでいけば将来は日本を代表するDFになれるだろう。
高井と組むCBには、横浜FM戦で決勝ゴールを決めて脚光を浴びた車屋紳太郎を入れた。高井をサポートさせたいからだ。谷口彰悟が抜けたあと、川崎のDFラインでは車屋がようやくリーダーシップを発揮できるようになってきた。
こうして、強豪チームの選手を中心に「コンビネーション」を重視しながらベスト11を選んできた。
当然、GKもチームもその流れで選考したい。
今や、GKは単に相手のシュートをキャッチするだけでもなければ、ディフェンスラインの背後をカバーするだけの存在でもなくなっている。DFとの間でパスを交換して攻撃を組み立てる役割が要求されるようになってきたのだ。
GKがフィールドプレーヤーの1人としてプレーすることによって、味方のフィールドは11人となり、相手のフィールドより1人多くなることができるのだ(守備側のGKはゴール前を離れるわけにはいかない)。
現在のJリーグでは、各監督の哲学によって古典的なGKと現代的なGKが併存しているのが現状だ(もちろん、バックパス・ルールがあるので古典的GKといえども足の技術も必要なのだが)。
そこで、今回はフィールドプレーヤーとしてもプレーできるGKの代表として、横浜FMの一森純を入れた。
今季、期限付き移籍で横浜FMに移った一森は、プレー経験を積むとともにこのチームで役割を確立。新しいスタイルのGKとしての魅力を発揮し始めている。
付け加えておきたいのは喜田拓也という選手の重要性だ。7月に横浜FMは足踏み状態となったが、原因の一つは喜田の欠場だったのである。
7月最初の湘南戦で喜田は「体調不良」で欠場。天皇杯の町田戦では復帰し、川崎戦ではベンチスタートで後半から投入されたが、やはりコンディションは良さそうではなかった。
豊富な運動量を持つ喜田は今季も横浜FMのダイナモとして中盤を支えている。すっかり横浜FMに馴染んだ渡辺皓太とのコンビネーションが、この超攻撃的チームに安定感をもたらしている。
その喜田が欠場したことで横浜FMは失速してしまったのだ。つまり、不在だったことによって喜田の重要性がかえってクローズアップされたというわけである。