シボレー・カマロが生産終了! 次期モデルは? マスタングとの比較で考える
シボレーが現行型(第6世代)「カマロ」の生産終了を発表した。最後のカマロは2024年1月、米国ミシガン州のランシング・グランドリバー組立工場で製造・出荷する予定だという。日本でも楽しめる稀少なアメ車のカマロがなくなってしまうと寂しいが、次期モデルはどうなるのだろうか。ライバル「マスタング」との関係性も踏まえて考えてみたい。
現行型「カマロ」が来年1月で生産終了!
○これが最後ではない?
現在、ゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン)が日本で販売しているシボレーブランドのクルマは「カマロ」と「コルベット」の2種類。スポーツカーに特化したラインアップだ。コルベットは1,400万円からのスーパースポーツカーであるため、4人乗りクーペのカマロが販売の主力となっている。
GMジャパンは2023年5月末、富士スピードウェイでシボレーの公式イベント「CHEVROLET FAN DAY 2023」を開催した。会場には全国から255台のシボレーが集結。来場者数は500人を超えたという
「CHEVROLET FAN DAY 2023」でGMジャパンは、シボレーのフラッグシップスポーツ「コルベット」のハイパフォーマンスモデル「Z06」(写真左)を日本初公開。スペシャルティクーペ「カマロ」の限定車「VIVID ORANGE EDITION」(写真右)も同イベントで初披露した
カマロの現行型が発表となったのは2017年11月のこと。当時のエントリー価格は500万円台と輸入スポーツカーとしては現実的な価格であったことから、アメ車ファンだけでなく、欧州車とは異なる選択をしたい輸入車ファンの心もつかみ、若いユーザーの獲得にも成功した。
このように日本のシボレーを支えてきたカマロだが、GMは2024年1月の生産終了を決めたそうだ。現時点で後継モデルの発表はない。グローバル・シボレーのバイスプレジデントであるスコット・ベルは「すぐに後続車を発表する予定はないが、これがカマロの終わりではないので安心してほしい」とのコメントを発表しているが、カマロの今後について心配しているファンも多いのではないだろうか。
日本で販売中の「カマロ」は「LT RS」「SS」「コンバーチブル」の3グレード。SSは6.2LのV型8気筒エンジン、残りの2グレードは2Lの直列4気筒ターボエンジンを搭載している。ボディサイズは全長4,785mm、全幅1,900mm、全高1,345mm。ハンドルは全て左。価格は668万円〜848万円
○マスタングは電動化
カマロの将来はどうなるのだろうか。そのためには、永遠のライバルであるフォード「マスタング」について考えてみる必要がある。なぜならばカマロは、初代マスタングの成功を受けて誕生したクルマであり、この2台には互いに切磋琢磨して進化を続けてきた歴史があるからだ。
マスタングが7代目にフルモデルチェンジすることは2022年9月に発表済み。新型は2023年夏の発売を予定している。歴代モデル同様、ボディタイプは2ドアハードトップクーペとそれをベースとするオープンカーの2種類。駆動方式は後輪駆動となる。
2023年夏から米国で販売が始まるフォードの新型「マスタング」
注目すべきはパワーユニットで、2.3Lの直列4気筒ターボエンジンか自然吸気の5.0L V型8気筒エンジンのピュアエンジン車なのだ。10速ATが基本だが、V8エンジンでは6速MTも選べる。電制ブレーキながらドリフト走行を可能にする「ドリフトブレーキ」という新機能もあるという。
これらの情報から、新型も伝統的なマスタングとなることははっきりしているが、マスタングにはもうひとつの顔がある。それがSUVの「マスタング マッハE」だ。マスタング史上初のSUVであるとともに、こちらは電気自動車(EV)専用モデルであり、2020年から販売中のモデルだ。
「マスタング マッハE」はSUVタイプのEV。「マスタング」と共通性のあるクーペライクなデザインも特徴だ
マッハEは6代目マスタングを意識したクーペSUVで、1モーターの後輪駆動車と2モーターの四輪駆動車が用意されている。最上位モデルの最高出力は480ps。91kWhの大容量バッテリーを搭載しており、電動SUVでもマスタングらしいスポーティーな走りが期待できる。価格は新型マスタングが3.092万ドルからであるのに対し、マッハEは4.2995万ドルから。エントリー価格でも約1.2万ドルもの価格差がある。もちろんEVには補助金が適用されるので価格差は圧縮されるが、EVの方が高価なことが分かる。
では、カマロは電動化するのだろうか。
カマロの次期型について現時点でアナウンスはないが、シボレーは後続車の存在をほのめかしている。米国も欧州同様、EVシフトに熱心な国のひとつだが、インディ500やNASCAR、デイトナ500などが日本でも知られているように、モータースポーツにも熱心なクルマ文化を持つ。このためクルマ好きも多く、シボレーのスポーツカーにも熱狂的なファンがいる。彼らの期待に応えるならば、高性能なだけでなく感性にも訴えかけるクルマが求められる。そのためには、可能な限りピュアなエンジン車を提供するのもブランド価値を守る大切な手段だ。
また現実的に、EVで広大な米国を移動するとなるとバッテリー容量も極めて重要な要素となる。クーペの場合、スペース的に大きなバッテリーを積むのは難しい。だからマスタングも、EVではSUVというボディタイプを選択している。
シボレーもブランド全体で電動化を進めており、定番モデルであるSUVやトラックではEVのラインアップ拡充を進めている。将来的にはスポーツカーも電動化していくであろうことは疑いない。まずはプラグインハイブリッド車(PHEV)を投入し、やがてはEVスポーツカーを登場させるのではないだろうか。
現時点では、水素やEフューエルといった代替燃料に対応することでゼロエミッション化を図る可能性もある。GMは水素にも熱心なメーカーだからだ。
○次期型カマロはどうなる?
これらの背景から、次期型カマロはエンジン車の可能性が高いと予測する。ただ、SUVが人気の今、カマロテイストを取り入れたスペシャルティなSUVの登場もありえる。そういったテイストのSUVが今のシボレーに存在しないことも、SUV版カマロの登場に期待したくなる理由だ。
日本でのシボレーの販売台数は極めて少なく、スポーツカーに特化することで導入が続けられているというのが現状だ。ちなみに、セダンやSUVは同じGMのブランドである「キャデラック」が担う。その流れは、しばらくは変わらないだろう。そのため、次期型カマロが登場すれば、日本にも導入される可能性が高い。ただ、時期は未定だ。
GMジャパンでは現行型カマロの最終生産分を確保しているだろうが、年内にオーダーストップとなる可能性もある。令和のアメ車ライフをスタートさせるなら、今のうちに現行型カマロを確保しておくのがオススメだ。その夢の実現に役立つ新サービス「CHEVROLET OWNER EXPERIENCE PLAN for CAMARO」も、2023年4月にスタートした。これは最近多くの自動車メーカーが採用している残価保証型リースプランだが、「残価保証型」はアメ車では珍しい取り組みなのだ。下取り価格を心配することなく熟成された現行型カマロを味わいつつ、次期型カマロの登場を待つというのも悪くないだろう。
大音安弘 おおとやすひろ 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。 この著者の記事一覧はこちら
現行型「カマロ」が来年1月で生産終了!
現在、ゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン)が日本で販売しているシボレーブランドのクルマは「カマロ」と「コルベット」の2種類。スポーツカーに特化したラインアップだ。コルベットは1,400万円からのスーパースポーツカーであるため、4人乗りクーペのカマロが販売の主力となっている。
GMジャパンは2023年5月末、富士スピードウェイでシボレーの公式イベント「CHEVROLET FAN DAY 2023」を開催した。会場には全国から255台のシボレーが集結。来場者数は500人を超えたという
「CHEVROLET FAN DAY 2023」でGMジャパンは、シボレーのフラッグシップスポーツ「コルベット」のハイパフォーマンスモデル「Z06」(写真左)を日本初公開。スペシャルティクーペ「カマロ」の限定車「VIVID ORANGE EDITION」(写真右)も同イベントで初披露した
カマロの現行型が発表となったのは2017年11月のこと。当時のエントリー価格は500万円台と輸入スポーツカーとしては現実的な価格であったことから、アメ車ファンだけでなく、欧州車とは異なる選択をしたい輸入車ファンの心もつかみ、若いユーザーの獲得にも成功した。
このように日本のシボレーを支えてきたカマロだが、GMは2024年1月の生産終了を決めたそうだ。現時点で後継モデルの発表はない。グローバル・シボレーのバイスプレジデントであるスコット・ベルは「すぐに後続車を発表する予定はないが、これがカマロの終わりではないので安心してほしい」とのコメントを発表しているが、カマロの今後について心配しているファンも多いのではないだろうか。
日本で販売中の「カマロ」は「LT RS」「SS」「コンバーチブル」の3グレード。SSは6.2LのV型8気筒エンジン、残りの2グレードは2Lの直列4気筒ターボエンジンを搭載している。ボディサイズは全長4,785mm、全幅1,900mm、全高1,345mm。ハンドルは全て左。価格は668万円〜848万円
○マスタングは電動化
カマロの将来はどうなるのだろうか。そのためには、永遠のライバルであるフォード「マスタング」について考えてみる必要がある。なぜならばカマロは、初代マスタングの成功を受けて誕生したクルマであり、この2台には互いに切磋琢磨して進化を続けてきた歴史があるからだ。
マスタングが7代目にフルモデルチェンジすることは2022年9月に発表済み。新型は2023年夏の発売を予定している。歴代モデル同様、ボディタイプは2ドアハードトップクーペとそれをベースとするオープンカーの2種類。駆動方式は後輪駆動となる。
2023年夏から米国で販売が始まるフォードの新型「マスタング」
注目すべきはパワーユニットで、2.3Lの直列4気筒ターボエンジンか自然吸気の5.0L V型8気筒エンジンのピュアエンジン車なのだ。10速ATが基本だが、V8エンジンでは6速MTも選べる。電制ブレーキながらドリフト走行を可能にする「ドリフトブレーキ」という新機能もあるという。
これらの情報から、新型も伝統的なマスタングとなることははっきりしているが、マスタングにはもうひとつの顔がある。それがSUVの「マスタング マッハE」だ。マスタング史上初のSUVであるとともに、こちらは電気自動車(EV)専用モデルであり、2020年から販売中のモデルだ。
「マスタング マッハE」はSUVタイプのEV。「マスタング」と共通性のあるクーペライクなデザインも特徴だ
マッハEは6代目マスタングを意識したクーペSUVで、1モーターの後輪駆動車と2モーターの四輪駆動車が用意されている。最上位モデルの最高出力は480ps。91kWhの大容量バッテリーを搭載しており、電動SUVでもマスタングらしいスポーティーな走りが期待できる。価格は新型マスタングが3.092万ドルからであるのに対し、マッハEは4.2995万ドルから。エントリー価格でも約1.2万ドルもの価格差がある。もちろんEVには補助金が適用されるので価格差は圧縮されるが、EVの方が高価なことが分かる。
では、カマロは電動化するのだろうか。
カマロの次期型について現時点でアナウンスはないが、シボレーは後続車の存在をほのめかしている。米国も欧州同様、EVシフトに熱心な国のひとつだが、インディ500やNASCAR、デイトナ500などが日本でも知られているように、モータースポーツにも熱心なクルマ文化を持つ。このためクルマ好きも多く、シボレーのスポーツカーにも熱狂的なファンがいる。彼らの期待に応えるならば、高性能なだけでなく感性にも訴えかけるクルマが求められる。そのためには、可能な限りピュアなエンジン車を提供するのもブランド価値を守る大切な手段だ。
また現実的に、EVで広大な米国を移動するとなるとバッテリー容量も極めて重要な要素となる。クーペの場合、スペース的に大きなバッテリーを積むのは難しい。だからマスタングも、EVではSUVというボディタイプを選択している。
シボレーもブランド全体で電動化を進めており、定番モデルであるSUVやトラックではEVのラインアップ拡充を進めている。将来的にはスポーツカーも電動化していくであろうことは疑いない。まずはプラグインハイブリッド車(PHEV)を投入し、やがてはEVスポーツカーを登場させるのではないだろうか。
現時点では、水素やEフューエルといった代替燃料に対応することでゼロエミッション化を図る可能性もある。GMは水素にも熱心なメーカーだからだ。
○次期型カマロはどうなる?
これらの背景から、次期型カマロはエンジン車の可能性が高いと予測する。ただ、SUVが人気の今、カマロテイストを取り入れたスペシャルティなSUVの登場もありえる。そういったテイストのSUVが今のシボレーに存在しないことも、SUV版カマロの登場に期待したくなる理由だ。
日本でのシボレーの販売台数は極めて少なく、スポーツカーに特化することで導入が続けられているというのが現状だ。ちなみに、セダンやSUVは同じGMのブランドである「キャデラック」が担う。その流れは、しばらくは変わらないだろう。そのため、次期型カマロが登場すれば、日本にも導入される可能性が高い。ただ、時期は未定だ。
GMジャパンでは現行型カマロの最終生産分を確保しているだろうが、年内にオーダーストップとなる可能性もある。令和のアメ車ライフをスタートさせるなら、今のうちに現行型カマロを確保しておくのがオススメだ。その夢の実現に役立つ新サービス「CHEVROLET OWNER EXPERIENCE PLAN for CAMARO」も、2023年4月にスタートした。これは最近多くの自動車メーカーが採用している残価保証型リースプランだが、「残価保証型」はアメ車では珍しい取り組みなのだ。下取り価格を心配することなく熟成された現行型カマロを味わいつつ、次期型カマロの登場を待つというのも悪くないだろう。
大音安弘 おおとやすひろ 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。 この著者の記事一覧はこちら