居心地サイコー、庭とつながる土間のLDK。築58年、祖母が残した一戸建てをリノベ
築58年の祖母が住んでいた戸建て住宅を、30代の夫婦と子ども3人の5人家族が暮らすためにリノベーションした事例です。LDKを土間にして床レベルを下げ、屋内と庭のある外の境界をあいまいに。庭を身近に感じながら過ごせます。土間には全面床暖房を設置。おかげで冬は暖かく、夏はひんやり。どこか懐かしくて、居心地のいい住まいです。
思い出ある外観イメージは残し、内と外がつながる家に
●この家のプロフィール
・家族構成：夫30代 妻30代 長男6歳 二男4歳 長女0歳
・築年数：58年（1964年築）
・敷地面積：222.53��
・延床面積：118.07�屐�1階71.70�屐�2階46.37�屐�
・工事費：2500万円（税・設計料込み）
・設計：アトリエコ一級建築士事務所
1964年に建てられた妻の祖母の家をリノベーションしたNさん夫妻。妻の実家は隣にありますが、両親が共働きだったため、子どもの頃は学校から祖母の家に帰ってきて、夕食を食べてから自分の家に帰る毎日だったそう。
祖母が亡くなったあと、しばらくそのままになっていましたが、母や叔母（母の妹）のすすめもあり、Nさん一家がリノベして住むことになりました。
設計の依頼を受けたアトリエコの小林佐絵子さんは、母と叔母の願いでもあった「家と庭を残したい」との要望を受け、外観は既存の屋根瓦などもとの家のイメージを残しつつ、ピクチャーウィンドウのように庭を眺められる土間のLDKを提案。
床を下げて庭と近づけることで、内と外がつながるような一体感が生まれています。天井は現しにして、傷んでいた箇所を補修したり鉄骨の柱で補強したりしながら、大らかな空間を実現。壁はもとの家に合わせてラワン合板で仕上げています。
大きな窓をすべて引き込めるようにしたことで、祖母が残してくれた庭を切り取るピクチャーウィンドウに。ダイニングテーブルにしつらえたシンクの前からの眺めは絶景。
写真左右に見える鉄骨柱は、1.7×2mのダイニングテーブルの脚も兼ねています。急だった階段も鉄骨でつくり直しました。
土間のリビングに敷いたラグでゴロゴロしながら、生まれたばかりの妹をやさしく見守る兄2人。土間には全面床暖房を設置しているため冬は暖かく、夏はひんやりしているので、素足でも快適に過ごせます。
間取り（リノベーション前後）と外観
リノベーション前
リノベーション後
1階はDKとリビングの間仕切りをなくし、庭とつながる大らかな土間のLDKに。北東側にあった玄関を南西に移動し、水回りを西側にまとめました。
2階は、壁の位置は変えていませんが、西側に子ども部屋を2室設けて、中央に風が抜けるプレイスペースを配置。
土間とアプローチ、庭がつながる南側外観。以前は東側にあった玄関は、庭側に移動した。屋根は雨漏りしていなかったので既存の瓦のままとし、バルコニーを拡張しています。
庭と一体に使えるLDKに、人が集まって楽しい！
テーブル側にシンクを設置したオープンなキッチン。壁側にはコンロと棚をつくりつけ、カウンター下部には土間と素材感が調和するフレキシブルボードで、食器などを収納する引き出しを設置しました。
妻は、ダイニングテーブルにシンクを載せたオープンなキッチンがお気に入り。「境界があいまいで、キッチンにいてもみんなと一緒に過ごしている感じ。とにかく人がよく来る家なので、ダイニングテーブルが大きいのも助かります」。
「天井はかなり高くなりました。木と鉄骨の組み合わせも、無骨な感じで気に入っています」と夫。
イスがなくても土間との段差に腰掛けられるので、大勢でも大丈夫。外にテーブルを出して、夏は焼き肉やバーベキュー、冬は鍋をすることも。庭と一体に使えるLDKを存分に楽しんでいる様子。
キッチンの窓や食器棚にガラスを再利用しています。
冷蔵庫の隣につくりつけた食器棚にも、もとのキッチンで使われていたレトロな模様入りのガラスを再利用。
また、2階ホールのアーチはそのまま残し、昔ながらの家のよさを生かした仕上がりに。母も叔母もとても気に入ってくれたそうです。
かつての面影を残しつつ心地いい部屋
リビングに隣接する和室は、内装は大きく変えずにリビングから行き来しやすいように、出入り口の位置を変更しました。
南側に張り出して増築されていたスペースを玄関に。以前は祖母のミシンなどが置かれた趣味部屋だったそう。天井までのオープンなゲタ箱を設けました。
壁にアクセントクロスを採用したトイレは、浴室があった場所に設置。窓からは妻の実家が見えます。ゆったりとしたスペースを生かし、棚を設けてカーテンで目隠ししています。
シンプルな洗面カウンターをつくりつけたサニタリー。壁面の黒いモザイクタイルが空間を引き締めています。
LDK同様、天井を現しにした2階プレイスペースは、開放感あふれる大空間。子どもたちの作品が飾られたラワン合板の壁も、大らかで楽しい雰囲気を演出。壁の向こうには子ども部屋が2室配されています。
プレイルームはバルコニーに面しているので、風が抜け気持ちいい。窓には青と黄色の2 枚のカーテンを、1本のレールに互い違いにかけています。
2階東側の寝室は、現在は夫の筋トレと趣味のギターを楽しむ部屋に。
階段上部のアーチは既存のまま。「印象的なディテールは、なるべくそのまま見せています」と設計を担当した小林さん。
この家のデータ＆使われている素材と設備
建物規模：木造軸組工法2階建て
素材
玄関
床：モルタル、ラワン合板 壁、天井：ラワン合板
土間
床：モルタル、ラワン合板 壁：ラワン合板、タイル 天井：躯体現し
個室
床、壁：ラワン合板 天井：既存
和室
床、天井：既存
壁：砂壁
子ども部屋、トイレ、洗面室
床：ビニール床タイル
壁、天井：ビニールクロス
プレイスペース
床、壁、天井：ラワン合板
寝室
床、壁、天井：既存
設備
キッチン
オリジナル
コンロ：リンナイ
レンジフード：サンワカンパニー
食洗機：パナソニック
サニタリー
ユニットバス、トイレ：LIXIL
洗面ボウル、水栓：サンワカンパニー
