父親の10人に1人が「産後うつ病」になると専門家、ベイビーブルーになった父親はどうすればいいのか?
両親のうち子どもを出産するのは母親なので、「産後うつ病は女性がなるもの」と思っている人も多いはず。しかし、実際は母親と同じ割合の父親たちが産後うつ病に悩んでいるとのことで、イギリス・ボーンマス大学の心理学主任研究員であるアンドリュー・メイヤーズ氏が、子どもを授かった父親がうつ病になるメカニズムや対象法について解説しました。
Postnatal depression: what new fathers need to know - and how to ask for help
イギリスの医療当局である国民保健サービスは、産後うつ病に関する情報提供ページで、「新しく父親になった人のうち、最大で10人に1人が産後うつ病になることが研究で判明しています」と述べています。出産後1年以内に産後うつ病になる女性の割合は10人に1人であるとされているため、父親と母親が産後うつ病にかかる可能性は同じだということになります。
一般的に、女性の産後うつ病はホルモンが関与していると考えられていますが、メイヤーズ氏によると産後うつ病におけるホルモンの影響はわずかだとのこと。それよりも、うつ病の既往歴、出産後の睡眠障害、社会的支援の欠如、経済的困難など、女性に限定されない危険因子の組み合わせが産後うつ病の原因になることが多いと、メイヤーズ氏は指摘しています。
産後うつ病の症状はうつ病とよく似ており、具体的には気分の落ち込み、意欲の減退、睡眠不足、罪悪感や自分は無価値だという感覚、集中力の低下、食欲や体重の変化、疲労感、死や自殺を考えること、いわゆる希死念慮などが含まれます。そのため、産後うつ病と通常のうつ病の主な違いは、赤ちゃんが生まれてから1〜2年ほどの間に起きる傾向があるかどうかという点になります。
とはいえ、赤ちゃんが生まれるとなると生活のあらゆる場面が激変するため、多少メンタルヘルスに悩むのは普通のことです。しかし、やる気の喪失や気分の落ち込みが何週間も続き、そのせいで赤ちゃんと向き合うのが難しいと感じるのであれば、かかりつけ医やメンタルヘルスの専門家に相談することを検討したほうがいいとメイヤーズ氏は勧めました。
また、産後うつ病から立ち直るには周囲からサポートを受けることも欠かせません。メイヤーズ氏は、「助けが必要なことは悪いことではありませんし、パートナーや友人、医師にサポートを求めることは恥ずかしいことではありません」とした上で、「サポートを受ける第一歩は、そのことを切り出すのが難しいことだと認めることです。そうすることで、誰かに打ち明けるときに気まずさを感じにくくなるかもしれません。また、誰かに話すときは言うべきことを言おうとするのではなく、自分が本当に感じていることを言うことが肝心だというのも覚えておくといいでしょう」と述べています。
こうしたやり方にイライラしてしまう人もいるかもしれませんが、それも正常なことだとメイヤーズ氏は指摘します。メイヤーズ氏によると、メンタルヘルスに悩む若い男性が怒りを感じたり、パートナーにがっかりされてしまうのではないかと心配したりするケースは多いとのこと。怒りへの対応としては、忍耐強く怒りを静めることが大切です。こうすることでその他の感情をパートナーに打ち明けやすくなると述べられています。
話しやすさには、雰囲気も重要です。例えば、かかりつけの医師に話すのが楽だと思う人もいれば、オンラインのチャットグループで話す方が楽だと感じる人もいます。また、友だちとスポーツ観戦しているときなど、堅苦しくない場面の方が話しやすいと感じる人もいるかもしれません。もし自分から切り出すのが難しい場合は、他の人はどうだったかを尋ねるのも会話の糸口になります。特に、相手にも子育て経験があるのであれば、子どもが生まれた時に同じような経験がないか聞いてみるのも手です。
メイヤーズ氏は最後に「父親の産後うつ病は事実であり、軽視できない問題です。幸いなことに、少し前に比べれば父親の産後うつ病の認知度は高まっており、サポートも受けやすくなっています」と述べました。