山田祥平のニュース羅針盤 第391回 大きなスマホ、小さなパソコン、またあるときはデタッチャブルスマートディスプレイ
GoogleのPixel Tabletが発売された。スマホでお馴染みのPixelシリーズのタブレットで、現行最新世代のスマホPixel 7シリーズと同じプロセッサGoogle Tensor G2を搭載し、10.95インチ液晶ディスプレイを持つ493グラムのタブレットだ。
Google純正にしてPixelシリーズ初のタブレット「Pixel Tablet」
スクリーンの解像度は2,560×1,600ドットで十分に明るく美しい。比率は16:10で縦方向での利用にも使いやすい。USI 2.0 タッチペンにも対応する。8GBのメインメモリで、スペック的には申し分ない。
そして、そのスペックに期待できるサクサク感のある軽快なデバイスだ。
○GoogleがAndroidタブレットの存在意義を問う
タブレットデバイスのカテゴリは、iPadの独擅場といってもよく、それでもOSシェアではAndoroidが優勢で、デバイス各社は地味にビジネスを進めてきたが、Nexusシリーズが終焉したあと、今、満を持して、改めてGoogleがAndroidタブレットの存在意義を問う。
というのも、Pure Google体験をもたらすシリーズとしてのNexusシリーズはNexus 6P(2015年)が最後だったし、タブレットについてはAsusのNexus 7(2013)やHTCのNexus 9(2014)が最後となっていたからだ。
2016年以降はスマホとしてのPixelシリーズが発売され、スマホについては着実に上昇気流に乗っているが、Googleはタブレットをどう考えているのだろうかと心配していた。今回の発売は、その模索のトンネルを抜けたということなんだろう。
付属する充電スピーカーホルダー。Pixel Tabletを充電でき、ついでにサウンドも向上させる
Androidタブレットというと、居酒屋やファミリーレストランのテーブルで、オーダー用端末として使われているごっついデバイスを想像する方も少なくないだろう。だが、そのあたりのハードウェアとはきちんと差別化されていて、業務機っぽい印象はまったくない。
このハードウェアでGoogleが提案しようとしているのは、モバイルではないカジュアルなスマートデバイスだ。モバイルネットワーク内蔵のモデルは用意されずGPSも実装されていない。通信のためには必ず別途Wi-Fiなどのネットワークを調達する必要がある。
なのに、タブレットからスマホのテザリングをオンにするような仕組みは用意されていない。あくまでも、きちんとしたWi-Fiネットワークインフラが整った場所で使うことが想定されている。
製品はタブレット本体と、充電スピーカーホルダー、電源アダプターで構成されたオールインワンパッケージだ。
本体と充電スピーカーホルダー、電源アダプターがワンパッケージに入っている
スピーカーホルダーは同梱の電源アダプタ(24V1.25A30W)を丸型バレルコネクタで接続して机上や棚上などに設置する。
ホルダーにもタブレットにも4本のポゴピンがあって、タブレットをホルダーに近づけると、かなり強力な磁力でくっつき合体される。タブレット本体側の磁力もけっこう強力で、磁石がくっつく素材でできた冷蔵庫などならくっつけておくこともできるくらいには強力だ。
この状態で電力が本体に供給されて継続的に充電、タブレットの音声出力はホルダ側のスピーカーに自動的に切り替わる。バッテリ保護のために、この状態での充電はデフォルトで約90%に抑制される。
スピーカーホルダーと本体は4本のポゴピンで接続
○誰もがGoogleアシスタントと役立つ会話を楽しめる
タブレット下部にはUSB PD Type-C(USB Gen1)ポートがあり、そこにUSB PDアダプタをつなげばスマホのように普通の充電ができる。
だが、製品パッケージにはUSB PDアダプタもType-Cケーブルも同梱されない。セッティングされたPixel Tabletを、背景を知らないで見たら、このタブレットが台座的な充電スピーカーホルダーから取り外せるなどとは夢にも思わないだろう。
Pixel Tablet(と充電スピーカーホルダー)を裏側から見たところ
Pixel Tablet本体にも、USB Type-Cの充電ポートがある
しかも、スピーカーホルダーと合体しているときの利用のために「ハブモード」と呼ばれる機能が用意され、最初に合体したときに、そのセッティングインストラクションが案内される。
このモードでは特定された個人がパーソナルにタブレットを使うのではなく、匿名の不特定多数ユーザーがGoogleアシスタントとカジュアルにコミュニケーションすることができる。ハブモードでは、本来の持ち主のプライバシーをうまく隠蔽しつつ、誰もがアシスタントとの対話の中で、楽しく役に立つ情報を提供してもらえる。
スクリーンセーバーは時計の全画面表示になり、その状態でコミュニケーションができる。その内容に応じて画面表示は遷移する。また、ホルダーと合体された状態では、Chromecastのキャスト先としても機能する。スマホでYouTubeコンテンツを探して、見つかったらキャストして大きな画面で楽しむといった使い方もできるわけだ。
ハブモードで使用するアカウントは、自分本来のものとは異なる他のアカウントを指定することもできる。むしろそのほうがセキュリティをより強いものにすることができる。
特定少数と不特定多数の狭間にいる「自宅というゆるやかなパブリック空間」にいる「誰でも」をサポートするための、Googleならではのスタンスだ。そして、タブレットをホルダーから取り外すなどで、ハブモードを抜ければ、スマホ同等のプライバシー遵守のデバイスに切り替わる。
○Pixel Tabletの立ち位置は大きなスマホ、小さなパソコン
個人的には、初代Nexus One(2010年)から最新のPixelまでを、ずっと愛用した。だから、タブレットとして使うときにも、スマホとほぼ同じ操作性が得られるところは快適だ。ここは、iOSのiPhoneとiPadOSのiPadを併用するよりもシームレスだと感じる。そういう意味では大きなスマホになる。
また、ChromebookのようにキーボードなどをつないでGoogleの各種Workspaceサービスを利用すればまるでパソコンのようにも使える。そういう意味では小さなパソコンでもある。
スマートスピーカー/ディスプレイをデタッチャブルにしたことで、大きなスマホと小さなパソコンの使い方のモデルを浮上させた。ただ、ポゴピンを使ってワンタッチ装着できるような純正キーボードアクセサリなどはまだ用意されていない。きっと、Google自身も模索の途中なのだろう。
著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら
Google純正にしてPixelシリーズ初のタブレット「Pixel Tablet」
スクリーンの解像度は2,560×1,600ドットで十分に明るく美しい。比率は16:10で縦方向での利用にも使いやすい。USI 2.0 タッチペンにも対応する。8GBのメインメモリで、スペック的には申し分ない。
○GoogleがAndroidタブレットの存在意義を問う
タブレットデバイスのカテゴリは、iPadの独擅場といってもよく、それでもOSシェアではAndoroidが優勢で、デバイス各社は地味にビジネスを進めてきたが、Nexusシリーズが終焉したあと、今、満を持して、改めてGoogleがAndroidタブレットの存在意義を問う。
というのも、Pure Google体験をもたらすシリーズとしてのNexusシリーズはNexus 6P(2015年)が最後だったし、タブレットについてはAsusのNexus 7(2013)やHTCのNexus 9(2014)が最後となっていたからだ。
2016年以降はスマホとしてのPixelシリーズが発売され、スマホについては着実に上昇気流に乗っているが、Googleはタブレットをどう考えているのだろうかと心配していた。今回の発売は、その模索のトンネルを抜けたということなんだろう。
付属する充電スピーカーホルダー。Pixel Tabletを充電でき、ついでにサウンドも向上させる
Androidタブレットというと、居酒屋やファミリーレストランのテーブルで、オーダー用端末として使われているごっついデバイスを想像する方も少なくないだろう。だが、そのあたりのハードウェアとはきちんと差別化されていて、業務機っぽい印象はまったくない。
このハードウェアでGoogleが提案しようとしているのは、モバイルではないカジュアルなスマートデバイスだ。モバイルネットワーク内蔵のモデルは用意されずGPSも実装されていない。通信のためには必ず別途Wi-Fiなどのネットワークを調達する必要がある。
なのに、タブレットからスマホのテザリングをオンにするような仕組みは用意されていない。あくまでも、きちんとしたWi-Fiネットワークインフラが整った場所で使うことが想定されている。
製品はタブレット本体と、充電スピーカーホルダー、電源アダプターで構成されたオールインワンパッケージだ。
本体と充電スピーカーホルダー、電源アダプターがワンパッケージに入っている
スピーカーホルダーは同梱の電源アダプタ(24V1.25A30W)を丸型バレルコネクタで接続して机上や棚上などに設置する。
ホルダーにもタブレットにも4本のポゴピンがあって、タブレットをホルダーに近づけると、かなり強力な磁力でくっつき合体される。タブレット本体側の磁力もけっこう強力で、磁石がくっつく素材でできた冷蔵庫などならくっつけておくこともできるくらいには強力だ。
この状態で電力が本体に供給されて継続的に充電、タブレットの音声出力はホルダ側のスピーカーに自動的に切り替わる。バッテリ保護のために、この状態での充電はデフォルトで約90%に抑制される。
スピーカーホルダーと本体は4本のポゴピンで接続
○誰もがGoogleアシスタントと役立つ会話を楽しめる
タブレット下部にはUSB PD Type-C(USB Gen1)ポートがあり、そこにUSB PDアダプタをつなげばスマホのように普通の充電ができる。
だが、製品パッケージにはUSB PDアダプタもType-Cケーブルも同梱されない。セッティングされたPixel Tabletを、背景を知らないで見たら、このタブレットが台座的な充電スピーカーホルダーから取り外せるなどとは夢にも思わないだろう。
Pixel Tablet(と充電スピーカーホルダー)を裏側から見たところ
Pixel Tablet本体にも、USB Type-Cの充電ポートがある
しかも、スピーカーホルダーと合体しているときの利用のために「ハブモード」と呼ばれる機能が用意され、最初に合体したときに、そのセッティングインストラクションが案内される。
このモードでは特定された個人がパーソナルにタブレットを使うのではなく、匿名の不特定多数ユーザーがGoogleアシスタントとカジュアルにコミュニケーションすることができる。ハブモードでは、本来の持ち主のプライバシーをうまく隠蔽しつつ、誰もがアシスタントとの対話の中で、楽しく役に立つ情報を提供してもらえる。
スクリーンセーバーは時計の全画面表示になり、その状態でコミュニケーションができる。その内容に応じて画面表示は遷移する。また、ホルダーと合体された状態では、Chromecastのキャスト先としても機能する。スマホでYouTubeコンテンツを探して、見つかったらキャストして大きな画面で楽しむといった使い方もできるわけだ。
ハブモードで使用するアカウントは、自分本来のものとは異なる他のアカウントを指定することもできる。むしろそのほうがセキュリティをより強いものにすることができる。
特定少数と不特定多数の狭間にいる「自宅というゆるやかなパブリック空間」にいる「誰でも」をサポートするための、Googleならではのスタンスだ。そして、タブレットをホルダーから取り外すなどで、ハブモードを抜ければ、スマホ同等のプライバシー遵守のデバイスに切り替わる。
○Pixel Tabletの立ち位置は大きなスマホ、小さなパソコン
個人的には、初代Nexus One(2010年)から最新のPixelまでを、ずっと愛用した。だから、タブレットとして使うときにも、スマホとほぼ同じ操作性が得られるところは快適だ。ここは、iOSのiPhoneとiPadOSのiPadを併用するよりもシームレスだと感じる。そういう意味では大きなスマホになる。
また、ChromebookのようにキーボードなどをつないでGoogleの各種Workspaceサービスを利用すればまるでパソコンのようにも使える。そういう意味では小さなパソコンでもある。
スマートスピーカー/ディスプレイをデタッチャブルにしたことで、大きなスマホと小さなパソコンの使い方のモデルを浮上させた。ただ、ポゴピンを使ってワンタッチ装着できるような純正キーボードアクセサリなどはまだ用意されていない。きっと、Google自身も模索の途中なのだろう。
著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら