「この先、私有地」の道路、17年ぶりに全面開通へ 過去に「通行料4万円」トラブルも… 茨城「シーサイド道路」が7月10日に開通目指す
道路上に私有地・・・地権者とのトラブルとは
茨城県神栖市には、道路の一部が私有地であるために2006年から現在に至るまで一部区間の通行止めが続く市道・通称「シーサイド道路」が存在します。
実は2023年7月から、このシーサイド道路が全面開通すると報じられましたが、全面開通までにはどのような背景があったのでしょうか。
千葉県銚子市との境に位置する茨城県神栖市には、2006年から現在まで一部区間の通行止めが続いている市道・通称「シーサイド道路」が通っています。
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この一部通行止めの影響により通行者は道路の迂回を余儀なくされていますが、そもそも道路が通行止めになっている原因は、その区間が「私有地」であるためです。
もともとシーサイド道路は1970年に茨城県の鹿島臨海工業地帯へのアクセスを向上させる道路として開通しました。
開通してしばらくはキャンプや海水浴目的の観光客が訪れるなど賑わっていましたが、1994年にある男性がシーサイド道路沿いの土地を購入して測量したところ、土地の一部がシーサイド道路にかかっていることが判明します。
道路に私有地が含まれていた理由については、シーサイド道路を建設した旧波崎町(現在は神栖市と合併)が土地の権利関係を十分に確認していなかったためと言われています。
土地購入者の男性は1996年、旧波崎町を相手に土地の所有権をめぐって裁判を起こしました。
その結果、2004年にシーサイド道路の一部が男性の土地と認められたのです。
判決後も旧波崎町や市町村合併後の神栖市が地権者の男性と土地の買い取りについての交渉を続けていましたが、提示金額の条件が合わず交渉は決裂。
2006年からは地権者の男性が私有地の付近にバリケードを設置し、道を通行する人には通行料を求めるようになりました。
当初は500円と設定されていた通行料も徐々に金額が上がり、最終的には4万円という法外な値段まで増加しています。
通行止め措置がとられている場所には「私有地につき通行止め 無断進入した場合は4万円を徴収します」、「支払いができない場合は車を預かります」などと書かれた警告看板を設置。
この道路の通行をめぐっては地権者と通行しようとする人との間で警察沙汰になるトラブルもたびたび発生していました。
和解が成立したものの…全面開通には時間がかかるはずだったが
このように長い間一部通行止めが続いていましたが、2020年に地権者の男性が死去、男性の長男が土地を相続したこともあり、2023年3月にようやく神栖市と私有地の買い取りに関する和解が成立しました。
その際、神栖市は通行止め区間にはこの男性以外にも地権者が複数存在する共有地があるとして他の地権者とも交渉をおこなう考えを示しており、シーサイド道路が全面開通するまでにはまだ時間がかかると想定されていました。
ところが、それから3か月あまり経過した2023年6月15日の市議会定例会において、神栖市の石田進市長が「7月10日の全面開通を目指して整備を進めている」と報告し、予想以上に早く開通することが明らかになりました。
そのため、他の地権者との交渉は比較的スムーズにおこなわれたものとみられます。
石田市長はシーサイド道路に関して、「神栖市を含めた複数人で所有する土地が含まれるものの、道路法に基づき供用開始された市道として管理する」と話しています。
道路の供用開始とは道路を一般交通の用に供するという意思表示のことで、この手続きにより一部通行止めがおこなわれていた区間においても不特定多数の人が自由に通行できるようになります。
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20年近くにわたって一部通行止めが続いていた茨城県神栖市のシーサイド道路は、2023年7月10日にようやく全面開通する見通しです。
このニュースに対してはSNS上でも高い関心が寄せられており、開通によって再び周辺地域が活気づくことも期待されています。