「執事は見た!」(イラスト/上田惣子)

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 世界中の「とんでもないお金持ち」の“お世話役”を長年務めてきた新井直之さん。

【写真】大富豪の考え方が分かる「ものの選び方」

「皆さん年収は少なくとも5億円以上、人によっては資産数兆円という方々にお仕えしてきました。先祖代々の資産家もいれば、一代で巨万の富を築き上げた“たたき上げ”の方も。共通していえるのは、決して無駄遣いはされないことです」

大富豪たちが持つ貯蓄脳を手に入れる!

 普段の生活は意外に質素。自分のためよりも人のため、社会のためにお金を回していく志向が共通しており、それは富豪の家族も徹底していたと話す。

「そばで見ていて思ったのは“貯蓄脳”を持つことの大切さ。価値がないものへの出費は極端に嫌うのです。ケチというより、合理的なお金の使い方を好みます。

 ゴージャスなことを楽しむときも、投資で得た利益や利子などの不労所得の範囲内でお金を使い、原資を減らさないなど“お金持ちをキープする”努力も惜しみません」

 節約に励む庶民とはレべチの暮らしぶりとはいえ、そのマインドと習慣には金運を上げるヒントがたっぷりだ。

これぞ大金持ち!? 驚きの大富豪マインド

【大富豪の辞書に「失敗」の文字はございません】

「9割失敗しても、1割成功すれば御の字。大富豪は、そんな超ポジティブな捉え方で生きておられます。例えば投資で損をしても、『株式市場への貯金だ』とおっしゃいます」(新井さん、以下同)

 さまざまな失敗をひとつずつつぶしていけば、残るのは成功する方法。長い目で見て、大きな成功を手に入れている。

【1杯5000円のコーヒーに喜んで代金を支払われます】

「大富豪の方々は、どのような商品でも原価を試算、買う手間まで考え、その価格に納得しなければ、お金をお支払いになりません」

 価値に納得すればコーヒー1杯5000円でも支払うが、価値がないと判断すれば200円でもケチる。そのスタンスをつらぬけば、“つまらないものを買ってしまった”という後悔とは、無縁になれるかもしれない。

大富豪が「する」こと

習慣1:迷われたら、松竹梅の“梅”を選ばれます

 “松竹梅”でランク分けされている、鰻屋や寿司店のメニュー。

「お金持ちは確実に“松”を選ぶと、誰もが思うでしょうね(笑)。ところが、彼らは迷ったら“梅”。いちばん安いものを選びます」

 なぜなら、高いものはプレミアム価格が乗っている場合があり、安いものがいちばんお値打ちなことが多いからだそう。

「メニュー選びだけではなく投資用の不動産のときも同様です」

 景気後退期の下落率が高い不動産は、同じマンション内で高額と低額な部屋が売り出されていたら低額を選び、リスクを避ける。

「人を雇うときも年俸2000万円のベテランよりも500万円の若手を選びます。失敗しても出銭が少ないし、チェンジする選択肢があるほうが得という理屈です」

習慣2:徹底した固定費の節約を実践されています

 大富豪は、“お金を増やす”よりも“余計な支出をなくす”ことを大事にしているという。

「特に光熱費や携帯代など継続的に出ていく費用をどう削るかが、お金を増やすために重要だと心得ています。飲食代も、実は普段は質素な方が多いのです」

 携帯電話の安いプランなど、支出の節約方法は、依頼があれば執事が調べて提案することも多いのだとか。また、ダラダラ浪費することを嫌うので、コンビニに寄ることもほとんどしない。

 ただし、ここぞという場面では惜しみなくお金を使う。

「お世話になったという人には手土産をお持ちになったり、気遣いにはお金を惜しみません。行きつけの美容院のスタッフや、私たちにくださることも多いですね。それが新たな出会いやチャンスを生み、さらなる富をもたらすとわかっていらっしゃるのです」

習慣3:100円単位の出費を大切になさいます

 日々、大金を動かしている大富豪は、小さいお金には関心がないように思われがちですが、実は100円単位の小銭にこだわる。

「積もれば見過ごせない額になることがわかっているのです。例えば、家電も省エネ性能の高い最新機器のほうが月々の電気代が安くなるなら、長い目で見ればそちらが得だと、喜んで買い替えます」

 最近使っていないアプリ代、自販機のジュース代、100円ショップでの買い物……少額のお金の管理が緩くなりがちな人が、大きなお金を管理できるはずはないのだ。

習慣4:金やプラチナを現物保管されています

 安定した価値を持つ金やプラチナは、大富豪に好まれる投資商品。密かに自宅に置いていることも多いとか。

「株や債券などは発行元が倒産したら紙クズになってしまう可能性があります。それに比べ、金やプラチナはいつの時代もどこの国でも価値が落ちにくい。買い足して自宅に保管し、着実に増えていく資産を確認しながら『もっと稼ごう、仕事をしよう』というモチベーションにしていた富豪もいます」

 資産が増えていく快感がお金を呼び込む……庶民の私たちには金やプラチナの購入はなかなかできないが、手軽な“小銭貯金”などからマネしてみよう。

庶民でもできる!大富豪の投資術
・価値が落ちにくい記念コインや切手がおすすめでございます
 投資といっても株式などはハードルが高いという方におすすめ投資法のひとつが、記念コインや記念切手を購入すること。例えば10万円金貨など高いものでなくても、額面どおりの価格のものを買っておけば、それ以下に価値が下がることはない。もしかするといつか、プレミアがついて値が上がることもあるかも?

大富豪が「しない」こと

習慣5:グチはいっさいこぼされません

「大富豪の皆様は仕事相手はもちろん部下や家族など、身近な人についても、悪く言っているのを聞いたことがありません。ほんの些細なグチさえなく、逆に相手を褒めることはよくあります」

 とにかくネガティブな発言をすることがないので、人に嫌われることがほぼないそう。

「常にポジティブな気持ちで生きていらっしゃいます。そうすると、知らず知らずのうちに上質ないい人々が周りに集まり、その人々によって、新たなビジネスや大きな成功がもたらされることも多いのではと思っています」

習慣6:稼いだお金では贅沢をなさいません

 お給料日などにお金が入ると、われわれはつい使ってしまうもの。

「ところが大富豪は、働いて得たお金では贅沢をしません。使うのは、投資でもうけた分のお金や、定期預金の利子など。原資を減らさない金額の中でのみ、贅沢をされます」 

 といっても、これは原資が大きいから叶うワザ。ならば私たちはどうしたらいい? 

「まずは『生活費では贅沢をしない』こと。ボーナスから必要な出費を抜いた残りや臨時収入があったときだけと決めるのです。日常的に贅沢をしないことが、たまの贅沢を楽しむための秘訣になると大富豪は考えています」

習慣7:派手なふるまいをなさいません

 十分すぎるお金を持っている大富豪なら、上から下までブランド品、車はもちろん超高級車などと思われがち。

「実はどんなものでも、気に入ったものを大切に、修理しながら長く持ち続ける方が多いのです。洋服なら古くなったら繕い、長く着用されるので、買い物に行かれることも案外少ないですよ」

 自宅も、シンプルかつ厳選されたものでスッキリしていることが多いそう。

「欲望のまま派手にふるまい己を見失えば、『お金を失ってしまう=大富豪でい続けられない』ことをご存じ。常に自分を律していくことが、お金を増やすために大切なことだと思います」 

即マネできそう!?今日からスタート!大富豪の貯まる暮らし方

習慣8:決済専用口座をお持ちでいらっしゃいます

 大富豪は、決済専用口座に毎月決めた金額を入れ、それ以上はお金を使わない状態にしている。

「月が終わるころの残金は数百円程度です。また、ATMの前を通るたびに、預貯金専用口座に小銭を入金するという方もいらっしゃいます。そして、この預貯金専用口座はないものとします」

 この方法は“お金を貯める習慣”を身につけ、さらには“お金が貯まる快感を覚える”のにも役立つ。

習慣9:財布の中身を常に把握されています

「財布の中に今いくら入っているのか? 大富豪は100円単位くらいまでならほぼ正確に答えられます。毎日一日の最後に財布を整理、現状を把握するのです」

 財布の中身は、自分にとっていちばん身近な資産。小銭まで管理し、それを続けていくことで、大きなお金も管理、コントロールできるようになっていく。

習慣10:占いはいいことしか信用されません

「悩む時間をつくらないために、占いを利用される方もいらっしゃいます。皆さん、信じるのはいいことのみ」

 例えば、“3年後に事業が成功します”という話は信用するが、“4年後に病気になります”と言われたら、気をつける程度でいいと考える。

「悪い結果もポジティブにとらえ、何かに依存せず、自分の人生や未来を自分で変えていくのです」

習慣11:身を置かれる環境にこだわりをお持ちです

 大富豪は、いざとなればどこに住んでも構わない人が多いそう。

「ただし、自分のステージを引き上げてくれる人々と出会え、自分の意識も高まる、そのような場所に身を置くことに、こだわります」

 環境によって人生が変わることがある。自分の考えや心を変えるのは難しいけれど、動き方や環境を変えることは、いつでも誰でもできることだ。

お話を伺ったのは……新井直之さん●執事。日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長。執事やコンシェルジュを派遣する会社を営む傍ら、富裕層ビジネスに関する講演を行う。作家としても活躍し、『執事だけが知っている世界の大富豪53のお金の哲学』(幻冬舎)など、著書も多数。

(取材・文/堀井明日香 イラスト/上田惣子)