マイナンバーめぐりトラブルが続発(写真はイメージです)

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マイナンバーと公金受取口座や保険証の紐付け、住民票の出力などでトラブルが相次いでいる。

どのようなトラブルが起こっているのか。各種の報道をまとめると、(1)公金受取口座の誤登録や別人登録(2)マイナポイントを誤って付与(3)マイナ保険証の誤登録(4)別人の証明書が発行――のようだ。

(1)〜(3)は従来からの人為ミス

(1)〜(3)は、マイナンバー所有者自身の端末でないか他人が紐付け作業をして発生した人為的ミスだ。

そもそも紐付けといっても、今でも普通になされている。

この種のミスは根絶することはできないが、作業の自動化によりかなり減らせる。

こういう話をすると、自分の端末で自分で入力できない人もいるとの反論がでてくる。そういう人は親族の助けを借りるのはいいと思うが、役所の人など他人の助けなしで対応できないなら、無理にやらせる必要もない。従来のままでも支障のない制度設計をすべきだ。

この話に関連して、地方公務員関係者から今の実情を聞けた。マイナンバー推進の下、地方自治体の共用端末で、役人が大量動員され、各種のサポートが行われているという。その中で、ログイン・ログアウトも理解していない役人や住民が今回の誤登録問題を起こしたようだ。これは良かれと思った行動だろうが、やり過ぎだ。

というわけで、(1)〜(3)は起こってはいけないが、従来からの人為ミスなので、重要度は低く対処方法もある。

しかも、(1)公金口座の家族名義13万件というと一見膨大な数だが5400万ある公金受取口座の0.2%だ。誤登録の748件は0.001%だ。

新しい制度に移行するとき一時的なミスはある

問題は(4)だ。これはマイナンバー所有者にはなんの落ち度もなく、システム会社が責任を負うべきミスだ。システムに負荷がかかった時に、エラーが出ずに前の情報で処理してしまったというのが真相らしい。

住民は自分のデータが使われたときには、その通知を受けるなどで知る権利がある。それを徹底して、誤った使用がないようにするなど、ミスを前提として、大きなミスに繋がらないような対策を講ずるべきだろう。

同時にシステム会社にも大きな責任があることを認識すべきだ。

いずれにしてもマスコミは13万件とか大きな数字を出す時には比率0.2%も同時に見たらいい。

また、新しい制度に移行するとき一時的なミスはある。一方、移行しないときは、コロナ危機で他国では行えた給付金を即座に国民口座に振り込むなどの政策をできない永続的なデメリットもある。一時的なミスと永続的なデメリットの両方をよく比較考慮してほしい。

++ 高橋洋一プロフィール高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。