本当のお金持ちが「あえてしない」こと。元・国税専門官が明かす富裕層の共通点
物価上昇などが続いている昨今、「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と思っている人も多いはず。
ここでは、『元国税専門官がこっそり教えるあなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社刊)の著者で、東京国税局の国税専門官として、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた小林義崇さんに、今からでもまねすることができる「富裕層の習慣」を教えてもらいました。
富裕層が、お金の情報を家族とシェアする理由
富裕層の家庭を見ていると、お金を稼いでいる人がみなお金に執着しているかというと、
そうではないことがわかります。むしろ、本人はお金に無頓着で、家族がしっかり管理しているという傾向があるのです。
私が相続税調査をした家庭は、夫が働き、妻が家庭を守るのが一般的な世代でした。このような場合、夫は「お金を稼ぐ人」、妻は「お金を守る人」という役割分担ができています。
そういう家庭には妻という“お金の管理者”がいるので、「お金を稼いだ夫が亡くなった」という状況であるにもかかわらず、相続税調査をすれば必要な情報のほとんどが集まります。
私が携わったケースでは、妻だけでなく、同居の子が家計を管理していることも多かったです。ですから、通帳を見て「この出金は、なにに使ったのですか?」といった質問をすると、ある程度確かな答えを得ることができました。
●家族とお金の情報をシェアして過度な出費を防ぐ
老人ホーム検索サイト「みんなの介護」によるアンケート調査によると、自分でお金を管理している高齢者は24.7%に過ぎません。やはり多くの家庭では配偶者や子どもが家計の管理をしているようです。家計の管理を家族に任せることは、2つの意味で合理的です。
まずは、第三者の目が入ることで無駄遣いが減ります。イギリスの政治学者パーキンソンが唱えた「パーキンソンの法則」では、「支出は収入の額に達するまで膨張する」ことが示されています。つまり、人はお金があると思うと、そのお金を使い切ってしまう傾向があるということです。
そのため、家族にお金の管理を任せることが、過度な消費を防ぐことにつながります。私が以前インタビューをした資産管理アドバイザーの方も、「お小遣い制にしたほうが、結果的に家庭のお金が残りやすい」と教えてくれました。
●家族に家計管理を任せるもう1つのメリット
家族に家計管理を任せるもう1つのメリットは、相続の手続きがスムーズに運ぶこと。
家計の管理を夫が一手に担っていたとして、その夫が突然亡くなってしまったらどうなるでしょうか? おそらく財産を確認するだけでも、相当な日数がかかるはずです。
そして、相続の手続きは、財産確認ができないと進められないものが非常に多いです。亡くなった被相続人が残したすべての財産や債務などを把握しないと「遺産分割協議」を完結できません。
さらに、相続放棄の手続きや、相続税申告など、被相続人の財産調査が終わらないと進められない行政手続きが数多くあります。このような手続きを期限内にスムーズに終えるには、財産などの情報を家族に残しておかなくてはいけません。
正式には遺言を残すのがいちばんですが、そうでなくとも「財産目録」や「エンディングノート」を残すなどの準備は生前にやっておきたいものです。
●いざというときの手続きがスムーズになる習慣
私は普段から「マネーフォワードME」という家計管理アプリを使って、預金口座や証券口座などの情報を一括管理しています。このアプリには妻もログインできる状態にしていので、どの口座にどれくらいの残高があるかを、いつでもスマホやPCで確認できます。
アプリを使うと便利ですが、シンプルに紙のノートやExcelシートなどで、自分たちの財産をリスト化しておくだけでも役立つでしょう。すべての情報を整理しようとすると面倒に感じますが、主要な銀行や保険会社などの名前をリストアップするだけなら、1時間もかからず終わるはずです。
その情報があるだけでも、家族になにか起きたとき、さまざまな手続きがはるかにスムーズに進みます。これを機会にとり組んでみることを強くおすすめします。
こちらの記事でご紹介した以外にも、『元国税専門官がこっそり教えるあなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社刊)では、「家計」「資産運用」「生活」「家族」の4つの切り口で、富裕層の共通点をお伝えしています。