「狂犬病」を発症すると現れる症状・嚙まれた時の対処法はご存知ですか?
「狂犬病」という言葉は聞いたことがあるけれど、どのような病気なのか分からない方も多いのではないでしょうか。
犬を飼育する際や国外へ出かける際によく耳にする狂犬病ですが、日本ではあまりなじみがなく、なぜ犬を飼育する際に狂犬病ワクチンを接種する必要があるのか疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
一方で、感染したら死亡するというイメージから犬は好きだけど、狂犬病は怖いという不安を感じている方が多いのも現状です。
近年では、予防接種を受けない人が増えてきていると問題視されています。
今回は狂犬病の感染ルートや感染した際に発症する症状、そもそもどのような病気なのか、その予防法を解説していきます。
漠然とした不安をなくすために、正しい知識を学んでいきましょう。
狂犬病の原因や症状
狂犬病とはどのような病気ですか?
狂犬病とは、犬をはじめとする動物にかまれることで発症する感染症です。発症する原因となるのは、犬だけではありません。病名の通り犬から感染することが多いですが、猫やシマリス、コウモリやキツネなども対象です。狂犬病ウイルスを持つ動物に噛まれることで感染します。狂犬病ウイルスは陸上に生息する全ての哺乳類動物がこのウイルスを保有している可能性があります。
狂犬病は発症してしまうと回復が難しい病気のため、予防対策を徹底することが大切です。
狂犬病の原因はなんですか?
狂犬病を発症する原因は、陸上に生息する全ての哺乳類動物が持つとされている狂犬病ウイルスが原因になります。狂犬病ウイルスは「ラブドウイルス科リッサウイルス属」に分類されている病原体です。人間と動物が共通して感染する病気で、傷口や粘膜に付着した動物の唾液から発症します。
犬にかまれる
傷口を舐められる
口や目などを舐められる
狂犬病は、犬にかまれたら感染すると思われがちです。しかし、愛犬とスキンシップをとっていたら感染したという事例もあります。
感染すると侵入した狂犬病ウイルスが筋肉などの細胞に付着し、どんどん増殖する恐ろしいウイルスです。筋肉細胞で増殖した狂犬病ウイルスが神経や脊髄を通り、脳に到達して全身に広がるため回復が難しいとされています。
狂犬病の症状は?
狂犬病に感染してしまうと、風邪のような初期症状が現れます。倦怠感
不眠症になる
筋肉痛になる
頭痛がする
発熱する
風邪薬を飲んでも回復する見込みがなく、1週間ほど軽い症状が続きます。その後は、狂犬病特有の意識障害に関連する症状が出始めます。
興奮や錯乱状態になる
幻覚を見る
意識障害になる
水を恐れる
空調の風が不快になる恐風症になる
水が怖いと感じてしまうため、水分補給や食事が難しくなることが多いです。この水を恐れる様子から狂犬病は「恐水症」と呼ばれることもあります。さらに症状が悪化していくと、下記のような症状が見られます。
全身まひ
呼吸困難
けいれん
不整脈
全身の臓器障害
などの全身に関わる症状を発症し、死に至ります。狂犬病ウイルスの潜伏期間は患部から脳までの距離とウイルス量によって前後しますが、犬の場合で3~8週間、人間の場合だと1~3ヶ月です。動物も人間も感染すると、平均1ヶ月で死に至ります。
狂犬病の世界での発生状況を教えてください。
狂犬病の世界での発生状況について、WHOが2017年に報告しています。その内容によると、狂犬病による年間死亡者数推計は59,000人です内訳としてはアジアで35,000人、アフリカ地域での死亡者は21,000人となっています。発展途上国などの地域では、狂犬病が特に深刻な問題です。
アジア(インドや中国)
アフリカ
南アメリカ
東ヨーロッパ
これらの地域は主に狂犬病の発生・流行地域とされています。その原因は、狂犬病対策が不十分なためです。狂犬病の予防接種対策だけでなく医療体制が整っていないにもかかわらず、農村部では犬との接触が多いため感染リスクが高まっています。
狂犬病は日本でも発生しているのですか?
1956年以降、日本で狂犬病を発症した犬は確認されていません。しかし、2000年以降も国内での狂犬病発症者が報告されています。フィリピンやネパールを旅行した人が犬にかまれ、帰国後に発症し、その後死亡が確認されています。世界中では発症率が増加傾向です。狂犬病は一度流行すると、あっという間に感染が広がります。1997年に初めて狂犬病が確認されたインドネシアのフローレス島では、3年で全島に蔓延したという事例があります。
このときフローレス島の犬総数の63%にも及ぶ50万頭もの犬が処分され、81人が狂犬病によって死亡しています。感染症を防ぐためには予防接種が大切です。狂犬病は集団の70%が予防接種を受けていれば、感染症の蔓延を防止できます。
狂犬病の対処方法や治療方法
犬にかまれたらどうすればよいですか?
まずは落ち着いて水で創部をきれいに洗い流すことが大切です。血が出ている場合は創部に流水をかけ、消毒液があれば最後に消毒しましょう。狂犬病ウイルスは体外では壊れやすい性質を持っているため、流水により創部を洗浄することが大切です。
洗浄後にはガーゼや清潔なタオルでしっかり傷口を押さえて、病院へ受診しましょう。
いつ・どこで・どのような動物に・なぜかまれたのかしっかりと伝えてください。
狂犬病を治療する方法はありますか?
結論からお伝えすると、狂犬病の治療は確立されていません。後述しますが、狂犬病を発症するとほぼ100%の方が命を落とします。しかし狂犬病の疑いのある動物にかまれた後、すぐにワクチン接種をすることで発症は抑えられます。日本国内では狂犬病は発生していないので心配はありませんが、東南アジアなどの流行国で狂犬病の疑いのある犬・猫などの野生動物にかまれた時は速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
狂犬病の予防や致死率
狂犬病の予防接種・ワクチンは人間にも有効ですか?
狂犬病を発症させないための予防接種・ワクチン接種は人間にも有効です。実際に人間も狂犬病のワクチンプログラムを受ける条件をWHOが公表しています。狂犬病の流行地域への渡航
動物との接触が避けられない
医療機関が近くにない地域への長期滞在
このような条件に当てはまる場合は、予防接種・ワクチンを3回接種完了することが国内では推奨されています。
WHOでは、2回までの予防接種・ワクチンを2回接種完了することとなっているため、予防接種・ワクチンの種類や接種方法はかかりつけの医師と相談しましょう。また人によって予防の方法は異なるため、早めの受診がおすすめです。
狂犬病の致死率はどのくらいですか?
狂犬病が発症してからの致死率は、動物・人間に限らずほぼ100%です。狂犬病の発症を未然に防ぐためには、ワクチン接種が有効です。狂犬病のワクチン接種は国内の医療機関で受けられますので、感染予防対策をしっかりと行いましょう。最後に、読者へメッセージをお願いします。
狂犬病は、致死率だけでなく蔓延率も高い病気です。ですが、しっかり予防していれば感染は抑えられます。狂犬病に感染しないためには、いかに予防対策を行うかが大切です。狂犬病を防ぐことは私たちだけでなく、犬をはじめとする動物たちを守ることに繋がります。正しい知識を持って対応できるように、疑問や不安なことがあったらすぐに医師に相談しましょう。
編集部まとめ
狂犬病は犬をはじめとする動物にかまれたら、確実に発症するものではありません。
致死率も高く恐ろしい病気であることは間違いありませんが、60年以上も日本では発症例がなく、なじみがないかもしれません。
ですが、世界中で狂犬病をみるとその発症率は増加傾向にあります。
狂犬病を抑える方法は、予防接種・ワクチンのみです。
犬をはじめとする動物も私たち人間もしっかり予防を行うことが、感染のリスクを下げます。
ペットを飼う際には必ず狂犬病の予防注射を行い、これらの予防対策を行った上で不安を感じたらすぐ病院へ受診することを心がけましょう。
参考文献
狂犬病(厚生労働省)
狂犬病に関するQ&Aについて(厚生労働省)