両備システムズは5月10日、主に地域包括ケア(医療・介護情報連携)業務において在宅医療を支援する多職種情報連携システム「ケアキャビネット」を、大学での障がい学生支援業務向けに「ケアキャビネット for 学生支援」として開発し、京都大学DRC(Disability Resource Center:学生総合支援機構 障害学生支援部門)が障がい学生支援の強化のために導入、2023年1月から運用開始したと明らかにした。

「ケアキャビネット for 学生支援」の運用イメージ

同社では地域包括ケアを支える職種(医師、看護師、薬剤師、訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなど)の情報発信・共有の仕組みとしてケアキャビネットを2013年から開発・提供開始。現在、医療機関、介護施設、自治体など、全国約300施設で利用されている。

一方、全国の大学における障がいのある学生数は10年(2012年〜2021年)で、約4倍に増加傾向となっており、約8割の大学が相談窓口を設置しているが、専門部署を設置しているのは約2.5割、専任担当者がいるのは約2割という現状となっている。

2018年に閣議決定された「障害者基本計画」(第4次)で、障がいのある各学生の個別ニーズをふまえた建設的対話にもとづく支援を促進するため、大学などにおける相談窓口の統一や支援担当部署の設置、支援人材の養成・配置をはじめ、支援体制の整備、大学間連携といった支援担当間ネットワークの構築を推進する、と定められている。

そのため、全国の大学では大学内のみでなく、カウンセラーなどの専門職や大学間のネットワークにより連携し、支援の強化が求められているという。そこで、同社ではケアキャビネット for 学生支援を開発した。

主な特徴はクラウド型多職種連携サービスのため、電子書類画像も容量を気にすることなく保存可能とし、必要な時に必要な情報へアクセスできるほか、利用端末(PC、タブレットなど)にはデータ保存がなくセキュリティを確保している。

また、さまざまな職種、施設で情報共有や利用されていることから拡張性が高く、面談記録などの情報を在籍中、卒業生など構造化で管理。さらに、マルチデバイス対応(PC、タブレット、スマートフォンなど)に加え、時系列で情報参照可能で経過や課題、各職種の関わりが把握しやすいという。

1月から同サービスを運用している京都大学DRCでは、従来ケースごとに相談支援の記録を電子ファイルで作成・保存していたが、個々の記録の効果的な整理、記録の二次利用(統計など)に向けた構造化管理、今後の支援体制の拡充、多職種での協働に向けて、安全なクラウドで管理する必要があったという。

その点、ケアキャビネット for 学生支援は学生の属性情報、面談記録などをステータス(在籍中の利用学生、卒業生)に分けて構造化できることに加え、機微な情報を自治体、医療機関で実績を持つデータセンターで安全・安心に管理できる点、タブレットといったマルチデバイス対応で、さまざまなシチュエーションでの相談に対応できる点を評価し、導入を決定。

これにより、必要な情報へのアクセス、入力に至るまでの操作がシンプルで、業務が効率化されたほか、電子書類や画像を格納・共有できるため、豊富な情報によって支援の質向上につながり、時系列で記事を参照できることから支援の経過や課題、各職種の関わりを把握しやすくなったという。

今後、同社では教育現場における多職種連携(学内・学外問わず)の可能性を探り、大学での支援を拡大していく考えだ。