2017年3月、那須町で登山講習中だった大田原高校の生徒と教諭合わせて8人が雪崩に巻き込まれて死亡した事故で、業務上過失致死傷の罪に問われている講習会の責任者だった教諭3人の裁判が9日、宇都宮地方裁判所で開かれ、雪崩を研究する専門家が「当時、雪崩の危険性が高い状況だった」と説明しました。

 業務上過失致死傷の罪に問われているのは、当時の講習会の責任者(56)、8人が亡くなった大田原高校の班の引率者(54)、それに後続の班の引率者(60)の3人の教諭です。

 裁判では雪崩を予見できたかなどが争われています。今回の証人尋問では、那須雪崩事故の検証委員会で副委員長を務め、雪氷災害の研究をする日本雪氷学会会長の西村浩一さんが証言台に立ちました。

 当時の風速や風向きなど気象状況を分析した結果、短時間で新しい雪が30センチ以上積もり、雪崩の危険性が高まっていた状態だったと指摘しました。また、これまでの研究結果から、斜面の傾斜角度が30度から45度で雪崩の発生が多いことが分かっていて、事故発生後に見つかった、雪崩に巻き込まれた第1班の生徒たちの足跡の場所から、傾斜の角度が30度から40度あったと説明しました。

 検察側、弁護側の両方から「雪崩の発生は予見できたか」と問われた西村さんは、短時間で30センチ以上新しい雪が積もり、歩いていたところも30度を超える斜面だったことから、雪崩発生の危険度は高かったと指摘しました。その上で、登る前に斜面の安定度を計るため、手を雪の中に入れて固さを調べる弱層テストを行い、安全を確認してほしかったと述べました。

 次回の公判は6月23日に開かれます。