新横浜駅の新幹線停車本数は開業以来どう変遷したか(写真:i-flower/PIXTA)

東急、相鉄の新横浜線が開業してから1カ月以上が経った。渋谷―新横浜間を直通する列車が誕生したことで、都内、特に渋谷、新宿、池袋といった山手線の西側にある街から新横浜へのアクセスが改善。さらに月曜日、土曜日を中心に運転される臨時列車として新横浜を6時03分に出る「のぞみ号」が登場したことで、朝イチで東京を出る「のぞみ号」よりもおよそ15分、朝イチで品川を出る「のぞみ号」よりもおよそ10分早く名古屋、京都、新大阪へ行けるようになった。

たかだか10分、15分の違いだが、USJで遊びたい人や、2年後に開催される大阪・関西万博を楽しみたい人にとって、朝の10分、15分の違いは大きいだろう。

新横浜の発展ぶりを振り返る

新横浜から名古屋方面へ向かう新幹線は、ほとんどが東京始発。新横浜始発は今紹介した6時03分発の「のぞみ号」と6時00分発の「ひかり号」しかないので、新横浜からだと自由席は座れない可能性がある。だが現在はJR東海のEX予約サービスを使ってチケットを取ると指定席のチケットが自由席よりも安く入手できること、「のぞみ号」は自由席が16両中3両、指定席が11両(ほかグリーン車が2両)と指定席の座席供給数が圧倒的に多いことを考えると、自由席に座れない問題も大きな懸念材料にならないと思われる。

そんなわけで、今後は都内に住む人が東海道新幹線に乗るために利用しそうな新横浜駅。現在は「のぞみ号」「ひかり号」「こだま号」のすべての列車が停車する駅だが、1964年の開業当初は横浜線と交差するという理由で作られたような駅で周辺には田んぼが広がっていたという。

そんな田んぼの中に建てられた乗り換え駅はどのようにして発展していったのか。国鉄の社史や横浜市史ではなく、過去の時刻表からその発展ぶりを振り返ってみた。

調査した時刻表は、東海道新幹線が開業した月に発売された11月号。1964年、1969年、1974年と、11月号を5年ごとにピックアップ(最後は2023年4月号)した。取り上げたのは平日1日に停車する下り、東京→新大阪方面の新幹線の本数(この駅止まり、この駅始発の列車もそれぞれ1本としてカウント)。

新横浜と比較するため、東海道新幹線の他の「のぞみ号」の停車駅の本数も調べた。雑誌に記載されているものを手計算でカウントしたものなので、数え間違いもあるかもしれないが、新横浜の発展ぶりがうかがえる結果となったので「新横浜ってすごいね〜」くらいの軽い気持ちで眺めていただけたら幸いだ。

当初の停車率は半分程度

開業当初の東海道新幹線は、停車駅が東京、名古屋、京都、新大阪の「ひかり」と、各駅に停車する「こだま」のみで、1時間に「ひかり号」1本、「こだま号」1本というダイヤだった。新横浜に停車するのは「こだま号」のみのため、停車する列車は東京の半分だった。

開業10年後、岡山まで延伸した1974年の新幹線時刻表を見ると、運転本数は約2.7倍となるも「ひかり号」中心の増便のため、停車率は47.37%と開業当初より若干下がっている。

さらに5年後、1979年の時刻表を見ると、新横浜に停車する「ひかり号」が1日1往復登場。ここから新横浜に停車する列車が増えていくのだが、新横浜を通過する「ひかり号」増発で停車率をみると37.78%と5年前より10%ほど下落するという結果に。

新横浜に停車する「ひかり号」が増え始めたのは国鉄が分割民営化されてJRグループに生まれ変わった1987年以降だ。1989年の時刻表を見ると30本近い「ひかり号」が新横浜に停車。1984年に41.86%だった停車率が64.76%と20%以上伸びた。

新横浜の駅としての認知度が大きく上がった理由の1つに1992年の「のぞみ号」の誕生が挙げられる。当時の「のぞみ号」は朝と夜の1日2往復しかなかった。そのうち東京を朝6時00分に出発する「のぞみ301号」の途中停車駅は新横浜のみ。名古屋、京都を通過する列車が「ひかり号」の一部が通過する新横浜に停車するとあって、新横浜という駅の存在がクローズアップされた。

そんな名古屋、京都通過の「のぞみ301号」が運転されている時期、1994年の時刻表を見ると、新横浜に停車する「ひかり号」の停車本数は据え置き。代わりに新横浜を通過して静岡や浜松などに停車する「ひかり号」を増発したため、停車率は下がっていた。


「鉄道最前線」の記事はツイッターでも配信中!最新情報から最近の話題に関連した記事まで紹介します。フォローはこちらから

700系が登場し「のぞみ号」が増発された1999年。新横浜に停車する「ひかり号」「のぞみ号」は再び増加し、停車率が再び60%を超えた。品川駅が開業し東海道新幹線が「のぞみ号」主体となった時期、2004年の時刻表を見ると新横浜の停車本数は102本。停車率は82.26%に。品川の停車本数が91本、停車率が72.80%なので、東海道新幹線を運行するJR東海としては「都内の品川より新横浜のほうが主要」と判断した格好だ。ちなみにこの時期、新横浜を通過する列車の大半が、静岡や浜松などの静岡県内に停車する「ひかり号」で、新横浜は「のぞみ号」はたくさん停車するが、「ひかり号」の半分は通過するという、「のぞみ号」と「ひかり号」の関係が逆転する現象が起こっていた。

2009年以降の停車率は100%

2009年以降の時刻表を見ると、「のぞみ号」の停車駅は東京、品川、新横浜、名古屋、京都、新大阪に統一され、停車率は100%に。列車の本数も2009年までは140本台とほぼ横ばいとなった。

1987年にJRが誕生してから2009年にかけ、停車率、停車本数をグッと増やしていった新横浜。ここ15年ほどは運行本数がほぼ変わらないが、新横浜始発の「のぞみ号」の利用者数や、2025年の大阪・関西万博の開催で大きく変化する可能性がある。さらにリニア中央新幹線の開業でどのように変わっていくのか。時刻表好きの私にとって、新横浜に停車する新幹線の本数はしばらくの間目が離せない案件となっている。


(渡辺 雅史 : 時刻表探検家)