「いきなり!ステーキ」の店名は秀逸すぎる…25歳女性起業家が「育てるオナホ」の商品名に使った驚きの四字熟語
※本稿は、神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■「まさにこんな商品が欲しかった」と言わせる方法
インタビューをするうちに様々なインサイトを見つけるでしょう。
その中から「まだ解決されていない重大な悩み」を選び、未解決かつ深刻度の高い順番にインサイトを検討して、その解決策(コンセプト)が提供できないかを考えます。
「洗って繰り返し長く使えることを期待していたのに、使っているうちにすぐ壊れてしまってコスパの悪さを感じる」
「オナホユーザー界隈では、使用を繰り返すと素材が劣化して気持ち良くなる“覚醒”という伝説現象がある」(これは調べてみると、ある特殊な素材が混ざっているオナホールに起こる現象でした)
などの情報をヒントに、こんなオナホを作ったら、割とヒットしました。
通称「育てるオナホ」。
「使えば使うほど、素材が形状変化して自分のチンチンに馴染む育成型オナホール」というコンセプトの中に、「どんな人でも、まずこのオナホールを買えば間違いないということ」、「育てる前提のため、長く使えること」を暗に意味しているため、これらの悩みを抱えている人に刺さるという設計にしました。
当初は、「パーソナライズオナホ」として、ZOZOスーツのチンチン版のようなものを考えていましたが、自分のチンチンのデータを企業に送るなんて、ターゲット顧客は抵抗あるだろうなと思ったので、こちらの「育てるオナホ」にしました。
商品をリリースしたとき、SNSで「そう、まさにこんな商品が欲しかった!」という言葉をいただきました。
この「そう、まさにこんな商品が欲しかった!」がコンセプト大勝利の証になると思っています。
■良いコンセプトは「商品の良さとベネフィットを端的に伝える」
「良いコンセプト」とはなんでしょう。
まず“性質要件”としては、
2.同じコンセプトで売り出している商品が、まだ市場に存在していないこと
でしょう。
そして“表現要件”としては、
2.1文で表現できること(端的であること)
です。
これはキャッチコピーとは全然違います。
キャッチコピーは、「聞き心地をよくする」「情報を削ってでも印象を残す」などが目的になりますが、コンセプトの表現は「商品の良さとベネフィットを端的に伝えること」が目的になるからです。
だからコンセプトの表現は、かっこ良くなくていいのです。
一言で商品の情報が伝わることが第一優先です。
この「育てるオナホ」を思いついたとき、正直「いや絶対これじゃん!」という確信は……ありました(笑)。
しかし、製造の最小ロット数がかなり多く、失敗したらオシマイなので、コンセプトの検証を念入りにすることにしました。
■コンセプトを商品名で表現「いきなり!ステーキ」の例
お客さんに対してできるだけ早い段階で商品の良さを伝えるため、商品名にもコンセプト要素を含ませました。
コンセプトとは、他の商品にはない、その商品の最大の強みです。
顧客が購入の比較検討段階において、商品説明をじっくりと読まないことも多いため、少しでも早く顧客にコンセプトを伝える必要があります。
商品名を聞くだけで「あ、こういう商品なのかな」となんとなく察せるようにします。
例として、「いきなり!ステーキ」はめちゃくちゃわかりやすいです。
「ラーメン感覚で、気軽にステーキを食べたいなあ」という人に対して、「うちは、最初からステーキだけ出てきてサクッと食べれるよ!」というお店の特徴を、店名にも表現しています。
最近は、ウーバーイーツなどにも最適化するように、「なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。」など商品の特徴を店名に反映している店舗が増えてきましたね。
店名を一覧で見たときに、店の特徴が即座にわかるため選んでもらいやすくなります。
私が応援しているノンワイヤーブラ専門D2Cブランド「BELLE MACARON」の「24hブラ」も「24時間つけていられるくらいつけ心地がよいブラジャー」という特徴を端的に表現しています。
また、小林製薬の商品はコンセプトを超わかりやすく表現しているものが多いので参考になります。
例えば、シミを防ぐ化粧水「ケシミン美容液」や、アルコールによる頭痛に効く薬「アルピタン」、ガス溜まり改善薬「ガスピタン」、蓄膿症に効く薬「チクナイン」などがあります。
私が大好きなYouTubeチャンネル「考えすぎちゃう人」も、動画を再生せずとも、動画一覧を見るだけで「アニメなどの解釈を考えすぎたらどうなるのかという動画なんだな」など、察しがつく表現に統一されています。
このように、コンセプトを商品名で表現すると、悩みを持っている人が比較検討段階で見逃しにくく、選んでもらいやすくなります。
■既存の競合商品名と「違うパターン」でインパクトをつける
商品名で目を引くために、既存の競合商品名とは「違うパターン」を使うのも効果的です。
私の場合は、「違う文字列」を用いました。
当時のオナホ市場では、既存の競合商品名はカタカナが多かったため、私が企画した新商品「育てるオナホ」の商品名には四字熟語をあて、「淫乱覚醒」としました。
先ほども例に挙げた「なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。」という蕎麦屋も、それまでの蕎麦屋では「○○屋」「○○そば」がよくあるパターンだった中で、あえて文章を店名にするという「違うパターン」で目を引きやすくしています。
さらに疑問系の文章にするという、キャッチコピーではお馴染みのテクニックを店名に使うことで、よりインパクトのある店名になっています。
商品名を付けるとき、「なんとなくそれっぽい商品名」を付けてしまいがちです。
しかし「なんとなくそれっぽい」とは、競合商品たちがこれまで作り上げてきた文化のため、競合商品と似たようなものになってしまいます。
せっかく競合商品とは異なる良いコンセプトを作っても、競合商品に埋もれてしまうと顧客の目にとまらなくなります。
顧客に選んでもらうために、あえてこれまでと「違うパターン」を用いて、商品棚で少しでも目立つ工夫を忘れないようにしましょう。
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神山 理子(かみやま・りこ)
起業家
愛称はリコピン。1997年生まれ。明治大学商学部卒。20歳の時にインターン先で音楽メディアの運営責任者となり、業界No.1までグロースして売却。その後シンガポールにて新規事業を立ち上げ、同事業の法人化を経て、オナホD2Cの会社を創業。自ら開発したオナホをAmazonランキング4位にまで育てるも過労のため退任。休暇3日目に新しい事業アイデアが閃き、休みもそこそこに自身2社目となる(株)ひだねを立ち上げる。創業1年で同社を売却し、次の事業に向けて準備中。消費者のインサイトを掘って、コンセプトをつくることが得意。たまにマグロ漁船員。1児の母でもある。
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(起業家 神山 理子)