【ROYAL ENFIELD 350 3機種乗り較べ試乗インプレ】人気の350は3機種がまるで違うキャラを楽しめる!?【What′s New】(What′s New)
どれも外装の着せ替えではなく、キャラクターが大きく違う!
英国ルーツでR&Dが英国と生産拠点のインドのロイヤルエンフィールド。
先のHUNTER 350 を日本でもデリバリーを開始したことで、主力の350は先行していた METEOR 350、CLASSIS 350 と3機種が出揃ったことになる。
350ccの中型クラスながら、アメリカンの雰囲気のMETEOR、レトロな1940年代イメージのCLASSIC、そしてベーシックなスポーツバイク仕様のHUNTER……見た目から外装を変えたカテゴリーに思われるかも知れないが、実は乗ってみると違うエンジンと車体としか思えないほどの大差。
同じエンジンとフレームなのに?という、同時に比較試乗してわかった、まさかの驚くべき事実をそれぞれの車種で順を追ってお伝えしよう。
ビンテージなルックスと1950年代英国スポーツ流の前19インチ・後18インチ
まずはCLASSIC。何ともレトロなルックスで、1940年代からの単気筒スポーツをつくり続けてきたメーカーならではの本モノ感はさすが。
実際に1952年型のFURYという当時の主力モデルをベースに、世代を新しく進化させてきただけに、350でも大型バイクのサイズと質感だ。
実は3機種ともタイヤのサイズが異なっていて、これがハンドリングのキャラクター違いにも直結している要素でもある。
CLASSICは前19インチに後18インチ。英国勢の500~650ccが世界のスポーツバイクで頂点に位置していた頃の黄金バランスで、いまもクラシックな乗り味というと採用されることが多いサイズだ。
そして実際に走ると、見た目とは裏腹といえるほどスポーティなバイク。シート幅があるので、足つきが3機種で一番届きにくい(805mm)が、よほど小柄でないかぎり問題ないだろう。
ライポジが案外とハンドルが高くなく、シート位置との関係で上半身がやや前傾する。
このポジションでシート座面の腰の収まりがピタッとキマるため、'50~'60年代の英国スポーツ流儀のライディングが楽しめる。
後輪を軸に、前輪が穏やかなタイムラグで追従してくる曲がり方は、超低速でもフラつきにくいメリットと共に優れたハンドリングを操る醍醐味が満喫できる。
エンジンもカーブ立ち上がりのトラクションが硬質な感じで、キレの良い旋回で刺激的な破裂音が楽しめる歯切れの良いエキゾーストノートと相俟って「開け開け」で走るようになること請け合いだ。
街中からツーリングを意識した前19インチ・後17インチ
METEORはアメリカンだろうと思いがちだが、この3機種での位置づけはタウンライディングと、ツーリングアベレージでのクルージングにもってこいのキャラクターということだった。
フォワードステップで、シートに深く座り両手が伸びた姿勢をイメージしていたが、そうした位置関係ではあるものの、実際に跨がって走るとフツーのポジションにしか思えない絶妙なバランス。
そしてライディングは後輪を意識してとか、ハンドルからチカラを抜いてとか、セオリーとして気をつけたほうがバイクも素直に走る……そんな一般的な前提も気にかけず乗れてしまうイージーライディングが最大の魅力だろう。
17インチのワイドな後輪は、常にトレースラインが安定していて、前輪荷重の大きくない関係で僅かアンダー気味に安定し続ける安心感は、ビギナーでなくてもツーリングをバイクを操ることに神経を遣わず済む気楽さが魅力となるに違いない。疲れにくさではピカいちの存在だろう。
いかにも粘るビートの効いた排気音の低回転域トルクで、発進でほぼ気遣いナシの気楽さもイイ。
前後17インチの操る意欲を掻き立てる乗りやすいスポーツ性
そして新たに加わったばかりのHUNTER。前後17インチと最新スポーツの設定で、走りだした途端にコンパクトで軽快なフィーリングだ。
実は3機種とも重量は数kgしか違わず、ホイールベースも10~20mm程度の差。
もちろん前後輪のサイズ違いとサスペンションの長さの差と共に、アライメント設定が数値以上に異なるフィーリングになる。
とりわけHUNTERのコンパクトさを感じさせるマジックは、意外なほど幅の狭いハンドルにはじまり、ライディングポジション全般が絶妙な形状で乗り心地が抜群のシートを含め、長い時間をかけて吟味した結果なのが伝わる優秀さだ。
バランスの良い乗りやすさに終始するので、街中からツーリングまで守備範囲の広さを感じさせるが、やはりワインディングのコーナリングが続くシチュエーションへ来ると、両輪で弧を描くコーナリングマシン的なハンドリングがヤル気を奮い立たせるのは間違いない。
エンジンも中速域のパンチ、コーナリングでここぞトラクションで蹴りながら旋回加速をという区間で、待ってましたとばかりにグイグイできるのが気持ち良い。
中型クラスで、しかも単気筒でこんなコーナリングマシンは、他にないと断言できるアドバンテージだ。
これら3機種の走りを支える、72mm×85.8mmのロングストローク単気筒。
20HPほどだが、トルクを含めた力量感は日本車に慣れた感覚だと段違いに力強く感じる。
バランサーとのカウンターバランス配分を応用した、単気筒を変わらず長年進化させてきた慣性モーメントの使い方など日本車との違いは明らかだ。
ジェネレーターも利用した遠心力を出力へ振り分けるノウハウは、振動を打ち消すのも役割だが、偶力方向に見合った質量で感じるバイブレーションを、滑らかにしているそもそもの違いを痛感するスムーズ且つパルシブ。日本製エンジンにはない活気が心地よい。
ご覧のように3機種は呆れるほどにマフラー形状が異なる。これがエンジン出力特性とくにレスポンスや楽しめる回転域の違いを生んでいて、それぞれのカテゴリーに相応しいエキゾーストノートを醸し出す。
サウンドの魅力は大したもので、パルシブな破裂音だったり、偶力の発生でトルクがグイグイ発揮する回転域では活気あるビートを聴かせる。
フレームもハーリス設計の共通ベースだが、エンジン特性と共に走りのフィーリングを全く別なモノにしてしまった作り込みの素晴らしさには脱帽というしかない。
HUNTERに乗った直後にCLASSICへ乗り換えても、次元は違うがスポーツ性の高さというか、どこかスパルタンな快感が伝わるので、見た目よりずっとスポーティであることに、試乗されたら間違いなく驚かれるだろう。
METEORのイージーライディングが、曖昧に設定している中庸なバイクとは次元が異なり、様々な状況でも身を委ねているのに運転している楽しさを感じられるエンジン特性、そして軽快にリーンできるアライメント設定の確かさなど、スタイルだけでカテゴリーをつくったようにみせる最近の日本車の安易なつくりとの違いが明白だ。
そして3機種ともカラーリングで雰囲気を大きく変える多様なグラフィックが用意されている。HUNTERだけでも、全く異なる好みに応じる選択肢の広さも大きな特徴だろう。
見て乗って、ご自分のバイクライフにいまどの機種が旬なのか、ぜひご自身で確かめて頂きたい。