最近の景気後退が不況に変わる恐れがあるなか、ユーザーは今、インフレも考慮しながら予算を考えなければならないという厳しい現実に直面している。購読のような固定費が再検討の対象になるのも当然だ。

年頭に発表されたデータをみると、パブリッシャーの場合、サブスクリプション事業は幸運にも広告のようなほかの事業ほど景気後退の影響を強く受けていないことがわかる。しかしながら、2022年の平均解約率は2021年よりも若干高く、とくに消費者向けパブリケーションではその傾向が強い。

2022年は解約が進んでいる



サブスクリプション事業の成熟化に伴い、パブリッシャーの目下の課題は解約率である。購読者に「このコンテンツなら、お金を支払う価値がある」と思ってもらえるような購読継続や価格設定、登録ウォールの戦略改善に取り組んでいる。

顧客に全国紙やデジタルパブリッシャーを持つFTIコンサルティング(FTI Consulting)で、テレコム・メディア・テクノロジー部門担当マネージングディレクターを務めるジャスティン・アイゼンバンド氏によると、解約は「2021年と比較すると、2022年のほうが間違いなく進んでいる」という。同氏が担当する顧客の場合、大半のパブリッシャーで平均解約率が2021年で3〜4%、2022年で4〜5%になる。

アイゼンバンド氏いわく、顧客が解約の理由として挙げるのは「財布の中身の問題がほとんどだ。個人的には、クレジットカードのエラーによる不払いが若干増加している点が気になっている。不払いの理由がクレジットカードの審査が通らないからなのであれば、依然として根底には経済的な問題があるといえるだろう」。

とはいえ、実際のところ、経済の影響はそれほど大きくない。

購読者数の伸びが鈍化



ペイウォールプラットフォームのピアノ(Piano)の報告書によると、サブスクリプション事業は前年比を見ると平均して伸びが鈍化しており、2020年にピークを迎えてからというもの、その傾向が続いている。2021年1年間のアクティブ購読の成長率は約36.1%だが、2022年11月の前年比成長率は14.2%である。

ピアノで戦略およびソーシャル担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるマイケル・シルバーマン氏は、「2020年に購読者数が劇的に伸びたのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まった最初の4カ月間だ」と話す。また、この激増で、2020年は平均アクティブ購読が前年比60%以上の成長を見せたという。

つまり、パブリッシャーなら2021年と2022年の数字は状況が落ち着いた結果だと捉えられるのではないだろうか。また、伸び率の減少は必ずしも経済が原因ではなく、どちらかというとパンデミック前の成長に即したものである。

主なポイント



パブリッシャーの報告では、購読者の購読継続率の急激な下落や解約率の大幅な上昇が景気低迷に起因するとはされていない。

購読者の伸びは2021年と2022年で鈍化したものの、依然として増加傾向にある。

しかしながら、解約率は平均して2021年よりも2022年が1〜2%高い。



ピアノのデータで購読者の解約傾向をさらに詳しく見ると、2022年と2021年の解約率は2020年とは違い、両年とも同じような推移を見せている。なお、このデータは、購読者をトライアルから購読に変更したグループ(たとえば購読開始から3カ月間は1カ月1ドル[約130円]の特別料金など)と、最初から有料購読を申し込んだグループに分けたものだ。



ピアノのシルバーマン氏は、2020年の購読継続率がそれ以降よりも高いのは、「2020年のニュースサイクルのおかげで、いったん購読したら、やめずに継続しようと意思が働いたからだ」と話す。それに対し、現在の経済状況下で購読者は月々の出費を抑制せざるを得ず、2022年の購読継続率はその影響を受けているという。

2020年の1年間は、「本来なら、購読を決めるにはもう少し納得のいく理由が必要だった利用者も、購読料の支払いに極めて積極的だった。そのため、状況が落ち着いたその後の2年間と比較すると、購読維持率の伸びが大きい」とシルバーマン氏はいう。また、同じ傾向が「トライアルなしの購読開始よりも有料トライアルで顕著に見られる。というのも、こうしたトライアルは、どちらかというとそれまで購読にあまり関心のなかった人たちをターゲットにしているからだ」と話す。

[原文:Media Briefing: Subscriber churn is up, but the economic downturn isn’t necessarily to blame]

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)