1兆円追加で「5兆円」 老朽化する高速道路の“更新事業”なぜ費用膨らむ? NEXCO
NEXCO3社の新たな「更新計画」の概略がまとまりました。老朽化する高速道路の作り替えに相当するようなリニューアルプロジェクトとして、新たに500km、約1兆円の事業費が追加されます。総額で5兆円規模となる見込みです。
1兆円追加 高速道路の更新計画
NEXCO3社(東日本、中日本、西日本)が2023年1月31日に合同の記者会見を開催し、高速道路の「更新計画」について発表しました。
現在(2021年度末時点)、NEXCOが管理する高速道路およそ1万kmのうち、約3000kmで開通から40年以上が経過しており、うち約1360kmで大規模な更新事業「高速道路リニューアルプロジェクト」が行われています。3社は今回、著しい変状が確認され“新たに更新が必要な箇所”約500kmを対象に計画を取りまとめました。
高速道路の更新工事のイメージ(画像:NEXCO中日本)。
その事業費は約1兆円とのこと。ちなみに現在進められている更新事業は2015年度から始まっていますが、その総事業費は約4兆円。今回の追加分と合わせて5兆円規模になります。
新たな更新事業箇所は、5年で1サイクルの定期点検を経て、非破壊検査など新たな技術でわかった損傷や、新たに明らかになった変状のメカニズムなどを踏まえ、対策が必要な箇所を選定した結果だといいます。
代表的な事例として挙げられた箇所のち、西湘バイパスの滄浪橋(そうろうばし)などは1971年開通と50年が経過していますが、関越道の水上IC〜湯沢IC間は1987年、山陽道の三木JCT〜神戸西IC間は1998年と、比較的新しい箇所も含まれています。
たとえば関越道の水上IC〜湯沢IC間は、繰り返しの部分補修を実施してきたものの、路面を開削し、舗装の下の「路盤」を確認したところ、下(下層路盤)から上(上層路盤)へのひび割れや変形が判明したといいます。従来は、路面からだんだん下層へと影響が進展していくと考えられていたといい、新たに分かった変状のメカニズムの一つだそうです。
1兆円で収まらない可能性大!?
今回、選定された更新箇所は損傷原因や対策も様々ですが、同じような構造で変状・損傷が確認されている箇所をピックアップしているといいます。事業化まで、さらに詳細な区間や対策方針を詰めていくといいます。
ちなみに、現在進んでいる更新事業費の約4兆円は、当初、約3兆円とアナウンスされましたが、事業化までのあいだに労務費や物価が上昇し、更新事業に伴う渋滞対策も盛り込んだ結果、4兆円になったといいます。今回の約1兆円も、事業化までの精査で費用が前後する可能性があるといいます。
折しも、国土交通省が高速道路の無料化を2115年まで先延ばしする方針を固め、記者からは道路公団民営化時の無料化へのスキームはますます非現実的なものになっている、民営化時点で耐用年数や更新の必要性などはなぜ考えられなかったのか、といった指摘も出ました。
「かつては、通常の維持管理を行っていけば50年以上使える認識がありました。しかし実際に50年経過してみると、いろいろ不具合がでてきました。高速道路の使われ方は一般道と異なり、(道路へのダメージが大きい)大型車の割合が多く、安全のために凍結防止剤を多く撒いている(塩害の原因)など、構造物にとってダメージを受けやすいことがわかってきました」(NEXCO東日本 管理事業本部長 八木茂樹さん)
NEXCO3社合同による会見の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
一方、最近の構造物は100年使用を想定してつくられているとのこと。更新事業は永続的に高速道路の健全性を確保するために必要であると訴えました。
直近では、首都高速道路も新たに約3000億円、阪神高速道路も約2000億円の規模で、それぞれ追加の更新計画を発表しています。高速道路の老朽化対策は今後さらに本格化していくようです。