「最初は奨学金を返すためだった...」風俗で働く女性たちが”ホス狂い”に堕ちる背景

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SNSや漫画など、様々なところで耳にする"ホス狂い"という言葉。"担当"と呼ばれるホストに狂うほど夢中になり、ハマってしまった女性のことを指す。
そこで今回の「テレ東プラス 人生劇場」では、著書「ホス狂い」が話題の作家・大泉りか氏を取材。ホストを取り巻く実情や背景、さらに、近年身近な存在となった"女性風俗"にいたるまで話を聞き、深掘りしていく。 ※前編はこちら



頑張り屋さんじゃないと"ホス狂い"になれない


――大泉さんの著書「ホス狂い」には、ホスト遊びにハマり、担当にお金をつぎ込む女性たちの背景がリアルに描かれています。彼女たちは、ソープランドなどの風俗で働いたり、パパ活をしたりしてお金を稼いでいるのですね。

「私が取材した女性たちは、そういうケースが多かったですね。自己犠牲がすぎるというか、なんというか...。でも、彼女たちに風俗を始めたきっかけを聞くと、『最初は大学の奨学金を返すためだった』と答える子が意外と多いことに驚きました。奨学金を返し終わった後もダラダラと風俗を続けていたら、ホストに出会ってしまったと」

――それを聞くと、子どもを持つ身としては、なんとも言えない複雑な気持ちになります。

「そうなんですよ。しかも私が取材したケースでは、決して貧困で払えないのではなく、親御さんが『大学に行きたいんだったら自分でお金を出しない』という独自の教育方針を持っていて、そこには社会の厳しさを教えるための親心がある。学費のために風俗に入り、そしてホストにハマるって本末転倒な気もするんですが...。」


――エピソードを読むと、彼女たちはみな、とても頑張り屋さんであることがわかります。

「そもそも、ホストクラブの"売り掛け"という、代金ツケ払いのシステムが問題という意見もあります。今のホストクラブのシステムだと、先に多額の売り掛け(ツケ)が作れてしまうので、その結果、お客である女性は風俗で働かざるを得ない。今現在、持っているお金で遊ぶのであれば、無理して風俗で働く必要はないのです」

画像素材:PIXTA ※写真はイメージです

――売春島と同じようなシステムですね。逃げられないようにする...。

「ある意味そうかもしれません。でも今回、出版前に取材した女性全員に原稿チェックをお願いしたところ、1人を除き、全員担当が変わっていました。あんなにお金を使っていたのに、『今の担当とUSJ行ってますー』と嬉々として返信してくる子もいて(笑)。ホストを卒業している女性もいましたね」

――その方は、どうやって卒業したのでしょう。

「コロナの感染者数が増え、風俗で稼げなくなってしまったそうなんですよ。一度大金を使う遊び方を覚えたら、少額では楽しめなくなってしまうので、ホストクラブに行けないと落ち込んでいた矢先に同級生と再会し、普通のデートをするようになったそうです。さんざんガチャで課金してきたけど、ゲームから降りたみたいな感じですよね」

――最近は、ホストクラブの宣伝トラックもよく走っていますよね。やはりホストの世界は、儲かっているのでしょうか。

「めちゃくちゃ儲かっていますよ。昔は1億円プレイヤーは稀でしたが、今は1店舗に3〜4人いるのが当たり前。5億円稼ぐホストもいます。私も会ったことがありますが、『あなたが1億円?』と思ってしまうような人もいました。トーク力も顔も、ごく普通の男の子でしたね」

――えーっ! ROLANDやジャニーズ系のようなカッコいい方ばかりじゃないんですね(笑)。

「もちろん、そういう方もいるとは思います。ただ、聞いた話によるとホストの世界ではマニュアルが存在しているそうで。よく聞くのは、Tinderなどのマッチングアプリで知り合って、まずは恋人になる。半年ぐらい経った時点で『1回だけお店に来てほしい』と誘い、『僕のことを本当に好きなんだったら、夢を叶えるために支えてほしい』とお願いするそうなんですよ。そうなると、女性は徐々にホストクラブにお金を落とすようになってしまう」

画像素材:PIXTA

――ホストの皆さんは、“女性をだましている”という自覚はないのでしょうか。

「ホストも店側から洗脳されていると聞きます。『彼女=お前のことを一番支えてくれる女性だよ』と言われ続けるうちに『そうなのかな?』と思ってしまう。なので、恋人に貢いでもらうのを悪いとは思わない」

――若いからすぐに洗脳されて、売り上げを作るために頑張ってしまうのでしょうね。

「だからホストクラブの一番の顧客はホストなんですよ。ホストが増えれば増えるほど儲かるし、女の子から集金もできる」


――ホストクラブは、このまま発展していくのでしょうか。

「推し文化が流行っているうちは、発展するでしょうね。でも実は、ホストクラブって、新宿以外では、そこまで流行っていない。ホストだったら歌舞伎というステータスがあり、女の子たちのホスト遊びも、結局はマウント文化なので、ステータスにお金を払う感覚。歌舞伎町は、これからもホストクラブが増えていくでしょうね」

――最近、某女性タレントが使っていたという噂もありましたが、女性側がお金を払って欲望を満たす女性用風俗も、少しずつメジャーになってきたような気がします。大泉さんは、このテーマについても取材していらっしゃいますよね。

「そうですね。ホストクラブで100万円使ってシャンパンタワーを入れるなら、女性用風俗で、好きな推しメンを1ヵ月貸し切った方がお得ではないかと思います。夫やパートナーには言いにくい要望でも応えてくれますし、 “アイススケートを一緒にやりたい”“カラオケボックスでイチャイチャしたい”みたいなことでも、文句も言わずに同伴してくれます。
相場は2時間で2万円。ホストより断然安いですよね。マッサージもしてもらえますし。興味がある方は、ホストの前に1度試してみてもいいかもしれません」

「ホス狂い」(鉄人社)

【大泉りか プロフィール】
1977年、東京都生まれ。SMショーのモデルやキャットファイターなど、アンダーグラウンドな世界にどっぷりと浸かった20代を過ごす。2004年に『ファック・ミー・テンダー』(講談社)でデビュー。以後、官能小説や女性向けポルノノベル、女性の生き方をテーマとしたエッセイなどの執筆を中心に活躍。漫画の原作なども手がけ、20冊以上の著書を持つ。女性用風俗を取材した「FORZA STYLE」も話題。毎月、「聖ドグダミ女学院」というイベントも行っている。
「聖ドグダミ女学院」公式Twitter:@pundit_dokudami

(取材・文/谷亜ヒロコ)