ヨガは呼吸が大事!体にさまざまな効果をもたらす6つの呼吸法とは?
エクササイズ効果が期待できることから女性に人気のヨガ。そんなヨガとは切っても切り離せないほど大切なのが「呼吸」です。
ヨガは、呼吸や姿勢などを組み合わせて生命エネルギーを巡らせ、心身を整えることが目的の一つ。呼吸を正しく行うことは、ポーズの持つ効果を高めることにもつながり、また、ヨガの呼吸法を行うだけでも体にさまざまなメリットをもたらします。
今回は、そんなヨガにおける呼吸の重要性について、ヨガインストラクターの漆原真理さんに伺いました。日常的に取り入れたいヨガの呼吸法も教えてもらったので、ぜひ参考にしてください。
ヨガインストラクター
漆原真理さん
商社勤務のときに始めたヨガ。疲れが抜けない毎日から自分が楽になったことに魅了され、インドで生活全体を通したヨガを学ぶ。現在は都内スタジオやプライベートクラスのほか、インストラクター養成講座の講師も務める。 ヨガのほか、基礎医学や解剖学にも精通し、パーソナルトレーナーとしてのアプローチも視野に、日々学び自らの実践も大切にしている。穏やかで心地の良い声、丁寧なガイドでインナーから効かせるクラスが好評。
ヨガにおける呼吸の重要性とは?
ヨガは柔軟性の高いポーズに注目が集まりがちですが、ヨガ経験者や熟練者ほど「呼吸」を大切にしているそうです。その理由を漆原さんに伺いました。
「ヨガにおいての呼吸は、『プラーナ』と呼ばれる生命エネルギーを取り込む動作として考えられています。呼吸法は『プラーナヤーマ』とも呼ばれ、プラーナをコントロールする調気法を意味し、呼吸法によってエネルギーを全身に取り入れ、体中に行き渡らせることを目的としています。
また、ヨガは呼吸を意識しなければ、ポーズは単なるストレッチになってしまいます。実際、呼吸への意識の差が、ヨガかストレッチかの違いを左右するほど大切です。
心と体は切り離せないものですから、呼吸をコントロールすることで心も変えられます。ヨガをすると心が静まるのを感じたり、リラックスした感覚がありますが、それらはゆったりとした深い呼吸がもたらしているからです。」
また、メンタル面だけでなく、ヨガの呼吸による身体的効果について、漆原さんは次のように話します。
「私たちは内臓器官をほとんど意識することができませんが、肺やお腹まわりは、その周辺の筋肉と呼吸を通じて、どんな状態か意識することができます。
また、さまざまな体の不調や症状は自律神経と関係していて、特に現代の私たちは交感神経過多になりがちです。自律神経は脊柱を通り体全体に張り巡らされ、内臓や血管を制御していますが、これが乱れることでさまざまな内臓疾患を引き起こします。
この自律神経も自分でコントロールはできませんが、呼吸器系の器官は唯一、自律神経と運動神経の2つが支配しているため、呼吸の仕方(長さや深さ)を変えることでコントロールすることができます。呼吸は目に見えない部分にまで影響があり、心身全体を整える大切な術と言えます。」
【ヨガの呼吸法で得られる効果】
自律神経のバランスを整える 血流が良くなる 新陳代謝の向上 内臓機能の活性化 インナーマッスルの強化 脂肪燃焼効率アップ リラックス効果 集中力を高める【腹式呼吸】気持ちを落ち着かせたいときにおすすめ
ヨガにとって「呼吸」は非常に大切なもの。さまざまな効果が得られ、心と体にとってもメリットが多いことも分かりました。ここからは、そんなヨガの呼吸法から、代表的な6つの呼吸法を紹介していきます。
まず紹介するのは、ヨガの基本的な呼吸法となる「腹式呼吸」です。お腹を膨らませるように鼻からゆっくり息を吸って、お腹をへこませるように鼻から吐きます。
腹式呼吸をすると横隔膜が上下に動き、内臓をほど良く刺激します。これにより便秘の解消や血行促進などにつながるとされています。
また、ゆっくりと深く呼吸を行うため、副交感神経を活性化してリラックス効果を促します。自律神経のバランスを整えるのにも効果的な呼吸法です。
腹式呼吸は、気持ちを落ち着かせたいときやリラックスしたいときにおすすめ。普段の生活では、胸の高いところで浅い呼吸をしている場合がほとんどで、腹式呼吸は意識しないとなかなかできないと漆原さんは話します。
「腹式呼吸は、横隔膜を動かせるのがポイント。横隔膜はストレスなどの影響で硬くなり、その周辺にある内蔵の動きも鈍ってしまいます。日常的に刺激を与えてあげることが重要で、そのためには腹式呼吸が最適なんです。
お風呂に入ったときに思わず出る、“ハァ~”をイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。あれが腹式呼吸です。
気持ちを落ち着かせるには、あれくらい深い呼吸をすることがとても大事なので、緊張時や寝る前などにぜひ腹式呼吸を取り入れてみてください。お腹に手を当てて、意識して呼吸するだけでも効果的です。」
【胸式呼吸】集中力を高めたいときにおすすめ
腹式呼吸と同じく鼻から息を吸って、肺を大きく膨らませ、そして鼻から吐くのが「胸式呼吸」です。
肋骨を広げるように意識して、深く呼吸するのがポイント。横隔膜と外肋間筋という肋骨のまわりにある筋肉を動かすことによって、肺の収縮を助けてより多くの息を取り込めます。
胸式呼吸には交感神経を優位にする効果があり、この呼吸法を行うことで心と体が緊張状態や活動状態に。そのため動きのあるポーズをとる前など、集中力を高めたいときに向いています。
私たちが普段している呼吸のほとんどが胸式呼吸。しかし、日常の胸式呼吸は浅くて小さいのに対し、ヨガの胸式呼吸は深くて大きいのが特徴です。
「胸式呼吸は、呼吸を助けてくれる肋間筋(肋骨のまわりの筋肉)を動かすことができる呼吸法です。肋間筋もストレスなどで硬くなってしまうので、深い呼吸でしっかり動かすことにより、多くの酸素を取り込んで心身を活発にさせる効果があると言われています。
そのため胸式呼吸は集中力を高め、体を強くする呼吸法として知られています。大事な商談の前やスポーツの試合前など、勝ちに行くときは自然と胸式呼吸を行っているのではないでしょうか。ヨガのクラスでも、強度の高いポーズをする際は必ず胸式呼吸になっています。」
【片鼻呼吸】ヨガをした後や寝る前におすすめ
ヨガをした後や寝る前におすすめなのが、自律神経を刺激する「片鼻呼吸」です。ほかの呼吸は基本的にヨガのポーズと連動して行うことが多いですが、この片鼻呼吸は呼吸単独で行う呼吸法となります。
片方の鼻の穴を手で塞ぎ、左右の穴から交互に呼吸をするのが特徴。片方の鼻から息を吸って、もう片方の鼻から息を吐き出します。これを数回繰り返すのが片鼻呼吸です。
右の鼻から呼吸をすると交感神経を刺激し、心と体が活動状態に。反対に、左の鼻から呼吸すると副交感神経を活性化し、リラックス効果が生まれると言われています。片鼻呼吸で左右交互に呼吸することで、自律神経のバランスを整えられます。
片鼻呼吸はあぐらをかくような状態で座り、骨盤から上半身を真っ直ぐに。左手は膝の上に置き、右手のみを使って行います。
まず右手の親指で右の鼻の穴を閉じ、空いている左の鼻からゆっくりと息を吸います。そして右手の薬指で左の鼻の穴を閉じ、親指を鼻から離して右の鼻からゆっくりと息を吐きます。
次に、そのまま右の鼻からゆっくりと息を吸い、親指で右の鼻の穴を閉じて、薬指を鼻から離して左の鼻からゆっくりと息を吐いていきます。これを10回程度繰り返し行います。
「片鼻呼吸は自律神経に働きかける呼吸法です。自律神経は、交感神経と副交感神経がバランス良く作用することで機能します。右鼻と左鼻で交互に呼吸することで、そのスイッチを切り替えて自律神経に働きかけます。
また、吸って吐くことを意識しながら呼吸し、呼吸単独で集中して行うためリラックス効果があります。ヨガのクラスの最後や就寝前など、リラックスしたいときにおすすめです。」
併せて知っておきたい3つの呼吸法
まず習得したいのが「腹式呼吸」と「胸式呼吸」。次に実践的なのが「片鼻呼吸」です。このほか、併せて知っておきたい3つの呼吸法を簡単に紹介します。
【カパラバティ呼吸】体を温める効果がある
「カパラバティ呼吸」は鼻から息を力強く吸って、鼻から一気に吐き出す呼吸法。腹筋を意識しながら、吸って吐いてを1秒に1回くらいのペースで素早く行うのが特徴です。
肺や横隔膜を強く動かすため、血行促進効果が期待できます。さらに、腹筋も大きく動かす呼吸法なので、お腹の引き締めにも効果があるとされています。この呼吸を行った後は頭もすっきり。気持ちを切り替えたいときにも◎です。
しかし、体への負担が大きいため、高血圧や心臓疾患がある方、妊娠中の方などは控えてください。また、必ず空腹時に行います。
「腹部をへこませるポンピング作用を使って行う呼吸法で、体が活性化されて温まります。寝起きや朝の時間帯におすすめです。」
【シータリー呼吸】体を冷やす効果がある
クールダウンにおすすめなのが「シータリー呼吸」。舌を口から少し出し、ストローのように丸めてそこから息を吸います。そして鼻からゆっくりと息を吐きます。
この変わった呼吸の仕方により、冷たい空気を体に取り込み、体内の温かい空気を外に逃がすため、体温を下げることができます。気分転換したいときにもぴったりです。
「ヨガの呼吸は、鼻から吸って鼻から吐くものがほとんどですが、シータリー呼吸は口から吸って鼻から吐く呼吸法です。ヨガの呼吸には体を温める作用があるのですが、シータリー呼吸は体を冷やす作用があるので、スポーツ後や体が熱いときに行います。」
【ウジャイ呼吸】体を強くする効果がある
「ウジャイ呼吸」は胸式呼吸の一種で、鼻から息を吸って鼻から吐きます。その際、喉の奥から「シュー」という摩擦音を鳴らしながら息を吐き出すのが特徴です。
「ウジャイ呼吸は喉を締めて行う呼吸法です。自律神経のバランスを整え、体を温めるとされていて、血行促進や内臓の活性化、集中力アップなどの効果に期待できると言われています。」
ヨガの呼吸法を日常生活にも取り入れよう!
漆原さんの話から、ヨガにおける呼吸の重要性が分かったのではないでしょうか。また、今回紹介した6つの呼吸法は、それぞれ得られる効果が異なる点も興味深いですね。
「まずやってほしいのが腹式呼吸です。吸って吐いてを意識するだけでも良いと思います。お腹に手を当てて呼吸を行い、硬い場合は緊張していたり疲れていたりすることが分かります。そういった心と体の変化に気付くことが大切です。」
正しい呼吸法を身に付けると、ヨガに限らず日常生活においてもメリットがあります。寝る前に腹式呼吸の時間を少し作るだけでもリラックスできるので、ぜひ積極的に取り入れてみてください。