2018年から仮想通貨取引所のBinanceをマネーロンダリングや脱税、制裁違反の疑いで調査しているアメリカ司法省の一部の検察官が、Binanceやその幹部を起訴するに足る証拠があると考えていることが分かりました。しかしながら、証拠は十分だと考える検察官と多くの証拠を検討したい検察官の間で意見が分かれていると伝えられています。

Exclusive: U.S. Justice Dept is split over charging Binance as crypto world falters, sources say | Reuters

https://www.reuters.com/markets/us/us-justice-dept-is-split-over-charging-binance-crypto-world-falters-sources-2022-12-12/

Binance Is Trying to Calm Investors, but Its Finances Remain a Mystery - WSJ

https://www.wsj.com/articles/binance-is-trying-to-calm-investors-but-its-finances-remain-a-mystery-11670679351

Binance 'Finances Remain a Mystery,' Claims New Report

https://bitcoinist.com/binance-finances-remain-a-mystery-claims-new-report/

司法省のマネーロンダリングおよび資産回収セクション(MLARS)、およびワシントン西部地区連邦検事局や国家仮想通貨執行チームが関与する捜査チームは2018年からBinanceの調査を行っており、Binanceや創業者のチャンポン・ジャオ氏、その他幹部に対して刑事告発を行う準備を進めているとのこと。

捜査中の容疑は無免許送金やマネーロンダリング謀議、刑事制裁違反だと伝えられています。事情に詳しい人物によると、検事局が捜査を始めたのは、犯罪者がBinanceを利用して不正な資金を移動させたという事件が相次いだのを受けてのことだといいます。また、Binanceがアメリカの金融保護規制に順守していないことも理由の1つでした。

アメリカの金融システムを不正金融から保護するために設計された銀行秘密法は、仮想通貨取引所がアメリカで「実質的な」ビジネスを行う場合、財務省に登録し、マネーロンダリング防止要件を順守し、取引所の場所や所有権の詳細を明らかにすることを要求しています。しかし、Binanceはこれを拒否し、代わりにBinance.USというアメリカ向けの取引所を設立することで監視の目をそこに集中させ、主要な取引所との間に一線を引くことで対応しているとロイターは伝えています。



司法省はこの件に関して以前から調査を進めており、内部文書を提出するように求めていることが報じられており、ロイターは「Binanceは顧客のチェックを怠り、規制当局の目をかいくぐって爆発的な成長を遂げました。犯罪者は取引所を通じて少なくとも23億5000万ドル(約3200億円)の不正資金を洗浄できる状態にありました」と伝えました。一方Binanceは「ナンセンスだ」と否定しています。

Binanceはロイターの報道に異議を唱え、不正資金の計算が不正確で、コンプライアンス管理に関する記述が時代遅れだとして反論しています。Binanceは「より高い業界標準を推進しており、当社のプラットフォーム上で違法な活動を検出する能力をさらに向上させています」と述べていました。

今回の報道に際し、ロイターは「司法省から求められた文書提出要請に対し、ジャオCEOが規定した秘密保持条項によってすでに文書は削除してしまったため対応できないとBinanceの幹部が述べている」などと伝えましたが、今回行われた報道に関しても、Binanceは「ロイターはまた間違っています」と指摘。Binanceは世界中の法執行機関との関係を強化し、2021年11月以降だけでも4万7000件を超える当局からの要請に応えてきたという旨の声明を発表しています。一連の報道のさなか、Binanceが発行する仮想通貨「Binance Coin」の価格は大きく値下がりしています。



ロイターの報道の数日前には、Binanceが受けた外部監査に正当性がないという報道も行われていました。監査機関のMazars

によって行われた証拠金監査では、Binanceの担保比率は100%を超えて十分な準備金を所持していることが示されましたが、調査の方法論が明確ではなく、一部の数値が以前に報告されたものと異なっていたことなどから、事前に合意した筋書きがあったのではとウォール・ストリート・ジャーナルなどが報じています。

また、Binanceは「疑わしい取引」があったかどで一部のアカウントを制限しましたが、ユーザーの苦情を受けて解除しました。Binanceは「アカウント侵害などの影響ではないと考えられます」と述べており、引き続き調査を続けています。この件に関し、ジャオCEOは「分散化の概念を中心とした業界で運営される取引所の維持には、過剰な介入というものがあることを認識しています。適切な介入量にはバランスがあるとし、同様の状況を放置することに価値がある場合もあります」と付け加えています。