「iPhoneのメモ」はもはや多機能なノートアプリだ
iOS16では、メモにも新機能が加わった。写真はその1つのクイックメモ(筆者撮影)
「メモ」というネーミングもあり、簡易的な機能を想像してしまうiPhoneのメモアプリだが、その実態は多機能なノートアプリに近い。WordやPagesのような文章レイアウトまではできないものの、画像を張り付けたり、表組を挿入したりと、短い文章を書くだけにとどまらない機能を備えている。メモ本来の意味である覚え書きを超えて、あたかもノートを作成するかのような使い方が可能だ。メモアプリはiPhoneの言語を英語にすると「Notes」という名称になるが、搭載されている機能や用途は「Notebook」に近い印象も受ける。
そんなiPhoneのメモアプリが、iOS16でより整理しやすく進化している。新機能として注目したいのが、「クイックメモ」。この機能を使うと、ブラウジングなどをしている際に、素早くメモを残せるようになる。特定の条件に合ったメモを自動でフォルダに分ける「スマートフォルダ」も、設定項目が増え、実用性が増している。また、メモにロックをかける際に、パスワードを選択できるようになった。
こうした機能を使いこなせば、紙のノートとペンで取るメモ以上に作業を効率化することが可能だ。すでにメモアプリを使っていた人も、iOS16にアップデートしたのを機に、改めて使い方を見直してみてもいいだろう。一方で、iOS16ではロック画面の刷新に重きが置かれていたこともあり、アップル自身もあまり大々的にメモの新機能を扱っていない。そこで、今回はメモアプリの新機能を中心に、その中身や使い方のコツを紹介していく。
閲覧中のサイトの情報をサッとメモに残す
閲覧中のサイトで、気になったことをサッと書き留めておきたい。そんなときに便利なのが、クイックメモという新機能だ。その名のとおり、素早くメモを取ることができるのが特徴。呼び出し方も簡単だ。まず、メモを取りたいサイトがあったら、共有メニューを開く。iOS16では、この中に「クイックメモに追加」という項目が追加されている。ここをタップすると、サイトへのリンクが張られたメモが作成される。必要なメモを取ったら、「保存」をタップするといい。
クイックメモは、その後もしばらく画面上にサムネイルとして表示され続ける。何か書き足したいことがあったら、そのままメモのサムネイルをタップすればOK。先ほど保存したクイックメモが再び表示される。しばらくするとサムネイルは消えてしまうが、いったんSafariを終了させる必要がないのは便利だ。保存したメモは、通常のメモとは別に、「クイックメモ」というフォルダに溜まっていく。
ここでは便宜的にSafariからの利用方法を紹介したが、共有メニューから呼び出せるという性質上、他のアプリでもクイックメモを取ることが可能だ。例えばマップアプリ。行きたいレストランなどを調べて、保存しておきたいと思ったら、共有メニューから「クイックメモ」をタップする。すると、マップへのリンクが張られたメモが出来上がる。ただし、同じマップでもGoogleマップはリンクが張られなかった。一方でTwitterのツイートやInstagramの投稿はメモを取れるなど、アプリによって対応の有無は異なる。
クイックメモを呼び出すボタンを配置
サイト閲覧中に共有メニューから「クイックメモに追加」を選ぶと、リンクが張られたメモを作成できる(筆者撮影)
また、コントロールセンターにクイックメモを呼び出すボタンを配置することもできる。共有メニューはアプリごとに配置されている場所が異なるため、探すのに手間がかかるというときには、このボタンを使うといいだろう。
ただし、標準ではコントロールセンターにクイックメモボタンが配置されていないため、設定の変更が必要になる。「設定」アプリから「コントロールセンター」を開き、「クイックメモ」の横にある「+」をタップしよう。
便利なのは、後から同じサイトを開いたときに、再びサムネイルが表示されること。そのサイトで重要だと思ったことを書き留めておくと、再びそのサイトにアクセスしたとき、情報を思い出しやすくなる。ただし、そのままだと、後述するようなロックをかけることができない。クイックメモをベースにして、中身を書き足していくようなときには、フォルダを移動させておくようにしたい。メモを開き、上部にある「…」から「メモを移動」を選ぶと、他のフォルダに移動することができる。
さらに賢くなったスマートフォルダ
取ったメモを分類したいときに役立つのが、「スマートフォルダ」という機能。2021年に登場したiOS15で採用されたものだが、当時はメモ内につけたハッシュタグ(#)でしかフォルダを作ることができなかった。あらかじめスマートフォルダを作ることを想定して、メモ内にハッシュタグを打っておかなければならず、準備に手間がかかっていたのが実情だ。この機能が、iOS16で大きく改善された。
iOS16のスマートフォルダは、ハッシュタグだけでなく、さまざまな項目でフォルダを自動作成することができる。作成日や編集日、共有の有無や、添付ファイルの有無や種類、ピンで固定しているかどうかなどを、フィルタとして選択可能。これにより、メモを自動で分類しやすくなった。ハッシュタグをつけていない、iOS15登場以前に取ったメモをフォルダ分けしたいときにも、便利な機能と言えるだろう。
日付や添付ファイルの有無などで、メモをフォルダ分けすることが可能になった(筆者撮影)
例えば、ロックをかけたメモだけをフォルダに分けておきたいときには、次のように操作する。
まず、メモアプリを立ち上げ、画面左上の「フォルダ」を選択する。次に、画面左下のフォルダに「+」のマークが重なったアイコンをタップしよう。
iPhone本体かiCloud、どちらにフォルダを作るかの選択肢が表示されるため、スマートフォルダを作りたいほうを選択。次にフォルダ名を決める。ここでは、ロックがかかったメモだけを集めたいため、「秘密のメモ」にした。
次に、「スマートフォルダに変換」をタップする。フィルタを選択する。ここでは、「ロック」という項目を選び、「含める」に変更した。あとは画面右上の完了をタップすると、ロックがかかったメモだけだけを集めたフォルダが自動的に出来上がる。
スマートフォルダはあくまでメモを分類していたリンクのようなもの。削除しても、メモ本体が消えるわけではない。条件を変えて作成したいときなどは、遠慮なく削除してしまえばいい。
残念ながら、キーワードだけではスマートフォルダを作ることができない。筆者の場合、記者会見のメモだけを分類したいが、メモの数が多く、今から1つひとつチェックしていくのは大変だ。タグをつけておけばよかったが、あとの祭り。検索でも、見つからないときがある。このように、スマートフォルダの項目が増えたといっても限界はある。あとから分類がしやすいよう、タグ付けもしておいたほうがいいだろう。
画面ロックのパスコードでメモをロック
人に見られたくないメモには、ロックをかけることができる。ロック機能自体はもともとあったが、iOS16ではその設定項目が増え、利便性が増している。以前のロックは、メモ用に専用のパスワードを設定する必要があった。ただ、パスワードは、入力する頻度が低いと、忘れてしまいがちだ。そうなると、重要なメモにアクセスできず、本末転倒だ。
こうした失敗をしなくて済むよう、iOS16ではiPhoneの画面ロックを解除するパスコードでロックがかけられるようになった。従来と同様、メモ専用のパスワードも残っているため、ユーザーはどちらかを選択することが可能だ。また、iCloudのメモは専用パスワード、iPhone本体は端末のパスコードと同じというように、アカウントごとにどちらを使ってメモをロックするかを変えることができる。
この選択肢は、初めてメモにロックをかける際に表示される。以前のバージョンですでにロックしたメモを作成している場合でも、設定を変更することが可能。「設定」アプリから「メモ」に進み、「パスワード」をタップする。続いて、設定をしたいアカウントを選択。過去のOSで使用していた場合、「カスタムパスワードを使用」にチェックがついているので、これを「デバイスのパスコードを使用」に切り替える。また、ロックの解除にはFace ID(Touch ID)も使用できる。この項目もオンにしておきたい。
メモに初めてロックをかける場合、画面ロックと同じパスコードにするかどうかをたずねられる。設定で変更することも可能だ(筆者撮影)
注意点として挙げておきたいのが、セキュリティーだ。端末そのもののロック解除と同じパスコードだと、忘れにくくて便利な反面、安全度は下がる。画面ロックのパスコードがわかっただけで、メモのロックまでまとめて解除できてしまうからだ。
画面ロックのパスコードとメモのパスワードを別々にしておけば、仮に画面ロックが解除されても、メモだけは守ることができて安心だ。忘れない自信があれば、別々にしておいてもいいだろう。
とは言え、画面ロックが他人に解除された段階で、メモ以外の情報にはアクセスできてしまうので、そのメモがどこまで重要かによるところが大きい。
また、両方が同じでも、自ら画面ロックを解除したiPhoneを置きっぱなしにしてしまったようなときに、メモを見られるリスクは減らせる。機密性がそこまで高くないなら、画面ロックのパスコードと同じにしたほうが、忘れる心配がなくなるだろう。この設定は、改めて見直してみたい。
(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)