英国伝統の乗り味は前輪19インチだった

’60年代、まだ日本車が4気筒など大型バイクを本格的に生産していない頃、スポーツバイクの頂点は英国勢だった。
そのハンドリングで最も優れていると定評があったのは、トライアンフのボンネビルなどバーチカルツインで、前輪19インチと現代のバイクよりやや大径。
国産のW1やXS-1など、英国流に倣ったバイクも前輪は19インチと相場が決まっていた。
リーンしていく曲がりはじめに、19インチはやや遅れて追従する大型バイクらしい安定感を重視した設定といわれていたからだ。

最新トラディショナルスポーツは、
19インチ派と18インチ派の両方が存在

ROYAL ENFIELD CLASSIC 350

ROYAL ENFIELD METEOR 350

ROYAL ENFIELD HUNTER 350

HONDA GB350

HONDA GB350S

いまトラディショナル・スポーツで人気の350クラスは、源流を英国に持ち長い間このクラスに君臨していたロイヤルエンフィールドが、最新型に刷新して用途に応じた前後の組み合わせをラインナップしている。

ベーシックなクラシックは前輪19インチと後輪を18インチのビッグバイク流の安定感を狙い、アメリカンクルーザーのメテオだと前輪19インチは変わらないが後輪に18インチでも2サイズほどワイドな設定。発表したばかりのトラディショナルのこだわりではなく、ベーシックスポーツに方向を振ったハンターでは前後とも17インチだ。
この3仕様は、まさにタイヤサイズとそれによるハンドリング・キャラクターの違いを象徴している。

このカテゴリーに後から加わったホンダGB350は、前輪19インチと後輪18インチでSのみ後輪をワイド設定。トラディショナルなハンドリングをベーシックに設定し、ワインディングを楽しむライダーにはリヤタイヤを太くしてアピールということになる。

源流の中大型2気筒トラディショナルは三者三様

本家本元のトライアンフはT100もT120も前18インチと後17インチ

INT650は意外や前後共18インチだが、走りは前19インチ的な安定感と運動性

コンチネンタルGT650もINT650と同サイズで走りは18インチ的

W800は前19インチに後18インチで、STREETとCAFEは前後18インチ

350クラスでは前19・後18がトラディショナル・スポーツのスタンダートな位置づけ。新しいハンターがベーシックスポーツとして前後17インチの最新バイク標準の仕様。
対して源流な筈のトライアンフでは、T100もT120も前17インチで後をやや小径の17インチという組み合わせ。
英国流の旧き良き時代のフロントは穏やかに追従してくるバランスは、この車格ではスポーツ性に欠けるということなのだろう。

また走りでは19/18の、まさに正当派といえる英国トラディショナル流儀をみせるロイヤルエンフィールドのINT650は、前後18インチでこの味わいを醸し出している。バリエーションのライポジがグッと後退して前傾となるコンチネンタルGT650でも前後18インチの同サイズ。19インチは好まれていない。

そしてカワサキW800では、650の頃から前19・後18を守ってきている。ただ新しく加わったSTREETとCAFEでは前後18インチ。
走りのペースがアップするとフロント19インチはいまひとつとの判断だろう。とはいえ、前輪が遅れて追従する前が19インチの感性に馴染みやすいハンドリングは、キャリアを積んだファンに好まれているのは確かだ。

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