11月1日、カタールW杯に臨む日本代表のメンバーが発表された。メンバーは以下のとおり。

GK
川島永嗣(ストラスブール)、権田修一(清水エスパルス)、シュミット・ダニエル(シント・トロイデン)

DF
長友佑都(FC東京)、山根視来(川崎フロンターレ)、谷口彰悟(川崎フロンターレ)、板倉滉(ボルシアMG)、冨安健洋(アーセナル)、酒井宏樹(浦和レッズ)、中山雄太(ハダースフィールド)、吉田麻也(シャルケ)、伊藤洋輝(シュツットガルト)

MF/FW
柴崎岳(レガネス)、遠藤航(シュツットガルト)、久保建英(レアル・ソシエダ)、鎌田大地(フランクフルト)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)、伊東純也(ランス)、相馬勇紀(名古屋グランパス)、田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)、三笘薫(ブライトン)、堂安律(フライブルク)、前田大然(セルティック)、浅野拓磨(ボーフム)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)


カタールW杯の日本代表メンバーを発表する森保一監督

 よく言えば粒ぞろい。悪く言えばどんぐりの背比べ。本大会出場は今回で7回目だが、26人を巡る争いは、過去に類を見ない接戦だった。十人十色。いや20人いても、森保一監督が選んだ26人と、顔ぶれをピタリと一致させることはできなかっただろう。

 というわけで、いまごろ巷ではさまざまな議論が湧き起こっているはずだ。「なぜ○○を入れたのか」「なぜ外したのか」等々、おそらくファンの8割は、森保監督と自分の見解の違いに違和感を覚えているものと思われる。

 筆者も例外ではない。突っ込みどころはいくつかある。

 まず守備的MFの選手層の薄さ。計算できる選手が守田英正と遠藤航の2人しかいない。これが1点。

 そしてそれ以上に大きな問題が、大迫勇也(ヴィッセル神戸)を外したセンターフォワード(CF)の人選になる。サッカーはCFで決まる。その優劣こそが試合の行方を左右する。前回、ロシアW杯で日本がベスト16入りした理由はいくつかあるが、一番は何だろうかと考えた時、筆者は大迫だと思った。釜本邦茂さんを除く日本の歴代のCFのなかで一番だと。

CFに90分を戦い抜く体力は不要

 10番テイストを漂わせた9番。当初はCFにしては弱々しく、頼りなげに見えたが、それは気がつけば技巧派のCFという概念に昇華していた。

 2018年ロシア大会では、高い位置で構える大迫に、いい感じでボールが収まったことが、躍進の原因だった。日本の攻撃は大迫がパスワークに絡むとより円滑さを増した。

 想起したのは2010年南アフリカW杯だ。0トップ気味にCFを務めた本田圭佑とハマり方が似ていた。ミラクルを生んだ原因は、この時もボールが高い位置できれいに収まっていたことだ。

 釜本さんを本格派CFとするなら、大迫は技巧派CF。釜本2世の誕生を切望してきた日本サッカーだが、その願いを叶えることはできなかった。大迫もその視点に基づくと不合格になる。ただ、前回ロシア大会は、本格派ストライカーが存在しなくても、ある程度、世界に通用することがわかったことが収穫のひとつだった。

 その時、大迫は28歳で、カタールW杯を32歳で迎えることはわかっていた。4年半後も大迫を攻撃のリーダーに据えて戦ってもベスト16が精一杯。森保監督がその就任記者会見で「目標はベスト8」と述べた時、ならばこの4年半で、大迫に代わるCFを探し求める必要があると強く思ったものだ。

 しかし、大迫を超える選手は現れなかった。そして大迫は何とかコンディションを維持していた。先週末に行なわれたJリーグの川崎フロンターレ戦にフルタイム出場する姿を見て、これなら大丈夫だと安心したばかりだった。

 登録選手の枠が従来の23人で、交代枠も3人制ならば、大迫を外すか否かは微妙な問題になって当然だ。しかし、登録枠26人、交代枠5人制で行なわれるとなると話は一変する。

 大袈裟に言えば、出場時間をシェアすることになるアタッカーに、90分を戦い抜く体力は不要になる。15分でも光るプレーをする選手は貴重な戦力になる。ここがこれまでのW杯との一番の違いだ。この特性を監督が活かせるか否か。その選手交代の妙こそが浮沈のカギとなっている。

この26人なら1トップに鎌田大地を

 特別な才能を持つ大迫というベテラン選手をどう活かすか。筆者はこれこそがベスト8入りのカギだと睨んでいた。

 スタメンを外すならわかる。だが、26人から外すという選択には唖然とする。会見場で、大迫の名前がないことを確認した瞬間、筆者は開いた口が塞がらなくなった。森保監督のサッカーの解釈が、こちらと根本的に違うことに、あらためて驚かされた。

 26人の名前を眺めると、CFの先発は上田綺世で、交代がスピード系の浅野拓磨というパターンが予想できる。浅野ではなく同じくスピード系の前田大然という手もあるが、ここになぜ、他の選手にはない才能を持つ大迫を選択肢として加えることはできないのか。何といっても勝負のカギを握るポジションだ。大迫の前に、他のフィールドプレーヤーのなかに削るべき選手はいる。

 上田も例外ではない。これまで彼に、代表の1トップを張るに相応しい器の持ち主だと確信を抱いたことはない。滞空時間の長いヘディング。ツボにハマった時のシュート力は確かに魅力だが、総合力はけっして高くない。パスワークに絡む機会が何より少ない。周囲とのコミュニケーション能力に欠けるプレーと言うべきか。前線で孤立することを辞さない「待ちのストライカー」。よく言えばそうなる。

 スピード系のCFを先発させる手もあるが、これまでの試合で成功した試しはない。そのスピードが調子外れに見えてしまうのだ。

 こう言ってはなんだが、この26人のメンバーで戦おうとした時、筆者が監督なら、1トップには鎌田大地を据える。2010年大会で0トップを務めた本田のような役回りで鎌田を使おうと考える。率直に言って、大迫の次に優れている選手だからだ。ポストプレーを得意とするプレーのタイプも似ている。高い位置でボールが収まるサッカーが可能になる。

 ついでに言うならば、鎌田は守備的MFでも行ける。となると、冒頭で述べた「守備的MFの層の薄さ」は解決できる。

 だが、いくら鎌田がハイスペックな多機能型選手だとしても、大迫を外していいはずがない。大迫と鎌田が前線に2人並ぶサッカーが見たいくらいだ。

 26人&選手交代5人制で行なわれる初のW杯。くり返すが、監督に問われているのは多彩な選択肢だ。フィールドプレーヤーは23人なので、そのなかから10人をどのようなコンビネーションで選ぶか。選択肢が豊富でないと、格上に勝つことはできない。大迫という燦然と輝く鮮やかな色を不要とした森保監督の判断に、最大限の疑問を覚える。