物価高倒産 年度半期別 発生件数推移

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「物価高倒産」動向調査(2022年度上半期)

 物価高倒産の勢いが止まらない。2022年度上半期の「物価高倒産」は159件となり、調査開始の2018年以降で最多だった前年同期(75件)から倍以上に増加している。
 9月は35件判明し、月間最多だった8月(34件)をさらに上回り、3カ月連続で最多を更新した。これらの数字は、個別の取材の中で倒産理由が判明したケースのみ集計しており、あくまで氷山の一角に過ぎない。実際にはさらに多方面に、物価高の影響が広がっている可能性が高い。

 2022年度上半期に発生した159件を業種別にみると、「建設業」(40件)がトップで、全体の約25%を占めた。以下、「運輸・通信業」(37件)、「製造業」(29件)、「卸売業」(24件)が続いた。このうち、9月は「建設業」(10件)、「製造業」(9件)、「卸売業」(6件)、「小売業」(3件)の順。規模別にみると、全体の約7割を負債5億円未満の中小企業が占めた。

 業種詳細別にみると、「運輸業」(37件)がトップとなり、次いで「総合工事」(24件)。以下、「飲食料品製造」(13件)、「職別工事」(10件)、「飲食料品卸売」(8件)が続いた。上位を運輸、建設、食品関連の3業種が占めた。

 9月の全国企業倒産件数は5カ月連続で増加となった。中小・零細企業の多くは、コロナ禍で経営体力を消耗している状態が依然続いている。ゼロゼロ融資などコロナ関連融資の返済局面で、足下の燃料、原材料、電気代、物流コストの高止まりによる収益悪化が企業を襲う。電気代の上昇や円安の進行も加わり、物価高の影響が徐々に本格化している様相がうかがえる。総合経済対策による物価高への効果がすぐに表れるかは不透明な部分も多く、資金需要が例年高まり、企業倒産が相次ぐ年末にかけて、物価高倒産はさらに増加していく可能性がある。

「物価高」が最後の追い打ちとなる倒産、年末にかけてさらに増える見込み

 岸田首相は、10月の所信表明演説内で物価高・円安について「今月中に総合経済対策を取りまとめ、何としても、この物価高から、国民生活と事業活動を守り抜く」と述べた。物価高対策が急がれる状況下において、原油や燃料、原材料等の「物価高」の影響を受けた倒産は増加の一途をたどっている。経営体力が限界に達した中小・零細企業を中心に、物価高が“最後の追い打ち”となり、事業継続断念に追い込まれる「物価高倒産」が、前例にない水準で推移していきそうだ。