【四角友里氏×アウトドア雑誌「ランドネ」編集長 佐藤泰那氏の特別対談】山ガール、グランピング、ソロキャンプ。2人が想うこれからのアウトドアカルチャーとは?
コロナ禍でも密を避けることができることからアウトドアに注目が集まっています。コロナきっかけでアウトドアを始めたという人も多く、特にキャンプは年々一大ブームに。
今では女子だけのキャンプは当たり前、ソロキャンプ女子も増えています。そんなアウトドアブームは、今後どのように変化していくのでしょうか。
そこで今回、日本のアウトドアカルチャーをつくってきたお2人にインタビュー。
「山スカート」を広めたアウトドアスタイル・クリエイター四角友里氏と、アウトドア雑誌「ランドネ」に創刊年から携わり、現在は編集長を務める佐藤泰那氏に、これからのアウトドアについて語っていただきました。
アウトドアスタイル・クリエイター
四角 友里(よすみ ゆり)
「山スカート」を日本に広めた、女子登山ブームの火付け役。全国での講演活動や執筆、アウトドアウェア・ギアの企画開発などを手がける。着物着付け師としての顔も持つ。2014年にはMarmotとのコラボウェアが米国のアウトドアギアコンテスト「APEX Awards」を受賞するなど評価が高い。ニュージーランド永住権を取得し、4年間在住。現在は日本を拠点に、四季折々の自然を味わいながら山歩きの魅力を伝えている。著書に『デイリーアウトドア』『一歩ずつの山歩き入門』『山登り12ヵ月』
WEB SITE:http://www.respect-nature.com/
FACEBOOK:https://www.facebook.com/yuri.yosumi/
INSTAGRAM:https://www.instagram.com/yuri_yosumi/
『ランドネ』編集長
佐藤 泰那(さとう やすな)
ピークス株式会社 執行役員 兼 CCOとして、コンテンツのデジタル設計及びマルチチャネル展開といった、BtoC事業を管掌。「山ガール」という言葉を世に広めたアウトドア雑誌『ランドネ』に2010年から携わり、2018年に編集長に就任。編集長を務めるかたわら、2020年に株式会社クッカを設立し、登山コミュニティ「KUKKA party」をスタート。コミュニティの活動としてオンライン会や登山イベントを行うなど、アウトドアや登山好きの裾野を広げるべく活動を続けている。
2人がアウトドアを始めたきっかけ
――まず、お2人がアウトドアを始めたきっかけを簡単に教えてください。
四角:私は学生時代に誘われてキャンプに行ったのが始まりですね。それまでは家族みんなインドアで、山に行ったこともなければ海にも行ったこともないみたいな感じで、エスカレーターにうまく乗れないぐらい運動音痴だったんです(笑)。
なので、キャンプはアクティブな人だけがするものだと思っていたし、山登りなんて選ばれた人たちにとっての別次元の世界で、自分には一生関係ないと思っていたんです。
でもキャンプに行ってみたらすごく楽しくて。ボーっと過ごす時間が心地良くて、タンポポが咲いてるなとか、芝生に朝露がついててきれいだなとか、風のにおいが良いなとか、いつもよりごはんがおいしいなとか。そういう体験を初めてしてみて、心が動かされる瞬間がいくつもあって。
体はさほど動かしてないけれど、心がいっぱい動くものなんだな、何もしなくてもアウトドアって楽しいなとそのとき思ったんです。
――四角さんは山登りのイメージがありますが、最初のきっかけはキャンプだったのですね。
そうなんです。そこから“心を動かすアウトドア”を5年ぐらい続けていくうちに、「自然のなかにいることが好き」という気持ちが自分のなかで熟成されていったんですよね、きっと。
その後、観光で訪れた長野県の上高地で1時間ほど散策路を歩き、向こう側に大きな山が見えたときに、山が迎えてくれてるような気がして。
すごく大きな山に抱き締めてもらっているような感じがして、そこからその奥に行ってみたいなと思ったのが山歩きのきっかけですね。
でも「あの山の頂上を目指す!」とかではなく、山の奥に、もうちょっと先まで自分の足で歩いていこうと。あまり「山登り」という感覚はなかったかもしれません。
佐藤:私は社会人2年目の夏。叔父が山登りが好きで、金沢へ家族旅行に出かけたついでに白山に登ったのがきっかけです。
私もそれまで山登りは全然やったことがなくて、コットンのTシャツにジャージみたいな格好で登って、体力も全然なかったのでヘトヘトに。
でも、それがすごく面白くて。それがきっかけで丹沢や奥多摩などの近くの山とかにも登るようになった感じです。
――山登りはどの辺が面白いと感じたのでしょうか?
佐藤:見たことないぐらいの種類のお花が咲いていて、あとから写真を見返したら花の写真をすごい枚数撮っていたんですよね。見たことないものに出会い続けられる感じに心を動かされたというか。
それまで山登りは晴天の日に山の上から景色を楽しむものだと思っていたんです。でもその日は天気が悪くて、広い湿原にモヤがかかっていて「こういう美しさもあるんだ!」ということを知りました。
休憩中に食べたりんごとみかんがめちゃくちゃおいしかったり、これまで知っていた世界のものを全然違う感覚で触れられて。山登りの出来事一つずつにすごく感動したんです。
それから社内のアウトドア編集部の人に、自分のこの感動を伝えて、「お花畑を眺めるには、次はどこへ行けば良い?」とか聞いて、週末のたびに友達と山に登るようになりました。
低山にもいろいろと登って、「山っていろいろな種類があるんだ」とか、一つずつ知っていく感じでしたね。
キャンプブームの今、2人が想うこと
――現在はキャンプがとても流行っていますが、もともとアウトドアを楽しんでいたお2人は、今のブームをどのように見ているのか教えてください。
四角:私たちがアウトドアを始めたときも、もちろんすでにアウトドアを楽しんでいた方たちがいらっしゃって。私たちのほうが、今までやってなかった側の人間だったので、当時は私たちが新米で「よろしくお願いします」みたいな状態でした。
佐藤:そうですね。私が始めたちょっとあとに山ガールブームがあって、富士山に登ったり高尾山に登ったりする人がグンと増えたタイミングだったので、その感覚を思い出すようでもあります。
山ガールブームのときは、私はランドネの編集者になりたて。そのときは、やっぱりファッションとか、分かりやすい楽しさをきっかけに始める方が多かった印象ですね。
でもその方たちが、自然のなかで過ごすことや、ライフスタイルの延長線上に自然があると感じることに豊かさを見出されて、アウトドアが定着していったのではないかと思います。今も同じような現象かなと思います。
キャンプのいろいろなグッズ使うのが楽しそうとか、焚き火のチル感が良さそうとか。
四角:グッズがすごく写真映えするのは、今のキャンプブームの後押しになっていると思いますね。コロナ禍でおうちやベランダで素敵な時間を演出してくれるアウトドアグッズを使ってみた方たちが、実際にキャンプに行ってみようという気になったり。
佐藤:キャンプ飯のようなキーワードもあるように、「アウトドアは映える!」というところや、密を避けられるというところをきっかけに、たくさんの方が始めているようです。その方たちが今後どういうふうにご自身のなかでアウトドアを定着させていくのかが楽しみです。
たくさんの人がアウトドアを始めてほしいとずっと思い続けているので、きっかけは何であれ、アウトドアを楽しむ人が増えているのはうれしいです。
四角:ブームになって全体の数が増えないと定着する人も増えないですからね。一般誌でもキャンプ特集が組まれていたり、アウトドアの服が駅直結のファッションビルで買えたり、きっかけが身近なところにあふれてるという状態なのはすごくうれしいことですよね。
佐藤:あとは自分自身もですけど、山に登ったりキャンプで自然に触れたりすると、自然環境に負荷をかけないように生活したいとか、必要以上の物はいらないんだなと気付くと思うんです。
今はサステナブルという考え方も浸透していますが、以前から山登りやキャンプをしていた人は、自然とそういう感覚が身に付いています。
自然のなかで遊ぶことでそういう感覚の人が増えて、みんなで自然環境のことを考えられるようになっていくのはすごく良いことだなと思いますね。
四角:自分の実体験に結び付けて、自然について考えられる人が増えるきっかけにもなるので、今のアウトドアブームはすごくうれしいなと私も思っています。
今のアウトドアファッションはかわいくておしゃれ!
――アウトドアファッションは、お2人がアウトドアを始めた10年以上前と比べてやはり変化していますか?
佐藤:私が山登りを始めた2008年頃は、まだあまりかわいいものがなくて。総合アウトドアショップに行って仕方なく消去法で選んでいました。でも今は、普段も着られるものがどんどん増えてますよね。
見た目だけじゃなく、素材感も化学繊維なのにコットンライクなものとか、すごく肌になじむけど機能も◎みたいなものに出会いやすくなったという感じがします。
四角:泰那さんよりさらに前、私がアウトドアを始めた2000年あたりは本当に何もない印象で。女性用のボトムスは当時の登山者層である中高年の小柄な方向けに作れたものが多かったから、私は身長が高いので丈などが足りないんですよ。チェック柄の山シャツもピチピチみたいな。
服自体が少なくて選びようがないから、男性用のXSやSサイズを試着して、いろいろなお店を巡ってやっと1着見つけるみたいな感じでした。色も、女性用は赤かピンクしかなかったような気がします。
それでも大好きな自然のなかに行くのだから自分らしくいたくて、私は海外のウェアを個人輸入して何とか過ごしてましたね。それがランドネが創刊されるあたりから変わってきて、かわいい服が増えていきました。今はとにかく選びやすくなったし、機能的で使いやすくなったことがうれしくてたまらないですね。
佐藤:選択肢があるというのはうれしいですよね。妥協するんじゃなくて、自分らしくいられるものを見つけられますから。
四角:カラーも原色が多かったのが、だんだんバリエーションも増えてきました。原色は山で遭難したときに見つかりやすいといった意味もあり大切なのですが、日常でも着やすい色はやっぱり使いやすいですよね。
サイズ展開も増えたし、女性特有のシルエットの悩みを解消するようなものも出てきたし、その点でもすごく市民権を得たという気がしますね。
佐藤:原色ばかりだった頃、それはそれで私はすごくかわいいと思って着ていたんですけど、「落ち着いたアースカラーもあったら良いのにね」みたいな話もしていたんですよね。でも一方で、「自然の色って、もっともっとカラフルだよね」みたいなことを友里さんが言っていてハッとしたんです。
――花や植物など自然のなかにある色は、実は思っているより鮮やかだと。
四角:アースカラーって昔は黄土色などのイメージだけが強かったんですよね。
佐藤:だけど実際には、例えば緑の葉っぱが朽ちて黄土色になったあと、蛍光のオレンジみたいになる瞬間もあって、私たちが思っているアースカラーより、自然の色のほうがもっと華やかなんだと。
四角:草花や空には、びっくりする色の組み合わせとかありますから。
佐藤:そういう色をあえて身に着けるのも、自然のなかに溶け込む一つだなと思ったりしています。身に着けるものをきっかけに、自然の色を改めて認識できることを、友里さんの言葉をきっかけに感じるようになりました。
四角友里×マーモット 2022FWコラボレーション
――女性のアウトドアファッションが変遷していくなかで、四角さんは10年以上もマーモットとコラボレーションしてきました。超ロングセラーとなった「山スカート」もその一つです。
四角:もうかれこれ20年くらい私は山でスカートをはいてきましたが、私のなかでは、ロングパンツ、ハーフパンツがあって山スカートがあるという「ボトムスの選択肢」の一つとして、女性ならではのアイテムである山スカートを提案したかったんです。
山ガールブームのときには、女性のアウトドアボトムスは山スカート一辺倒になってしまいましたが、その後、一時期よりも山スカートが落ち着いたこともまた正しい流れなのだと思います。
今は女性の登山人口が増えたことによって、パンツも快適になっているし、行く山に合わせてパンツを選んだり、ときにはスカートも楽しんだりするといったように、選択肢の一つとして山スカートを残していけたことがうれしいですね。
山スカートを始めたときもそうなんですけど、山で安全・快適に過ごすために素材は化学繊維やウールが良いとか、虫を寄せ付けない色とか、動きやすさを優先するなど、機能性をしっかりとクリアしたうえで自分らしさを出すことを常に考えてきました。
大自然への敬意を持ちながら、おしゃれについて考える作業が楽しいんですよね。
――13年目となる今季のコラボレーション商品について、四角さんのこだわりなど注目ポイントを教えてください。
四角:先ほど話したアースカラーのように、この13年間、常に自然のなかの色をテーマにしてきました。その色選びが私のコラボレーションアイテムの特徴だと思います。
私はデザイナーではないので、自然のなかで見つけたきれいな色をそのまま写真に撮って、マーモットのデザイナーさんに色を付けてもらうというやり方をしたんですよね。
今回は「種」がテーマなので、秋や冬に旅立ち、未来に向けて準備するイメージでデザインしました。こう考えると冬はすごく力強い季節でもあると思うので、終わりの始まりみたいなイメージがすごくあって、少し渋めだけど華やかなアースカラーが特徴になっています。
コレクションによっては、秋は紅葉をイメージした赤や黄色が多いときもあったのですが、今回は割と緑や茶色が多いですね。色が抜けたような緑だったり、すごく鮮やかな朽葉色だったり、そういう趣のある秋の色を取り入れたものが多いので、実際にそれを自然のなかで着たらどう見えるかなという楽しみがありました。
佐藤:この友里さんの最新ウェアの撮影を霧ヶ峰で行ったのですが、山のなかで友里さんが着ているのを見たとき、事前に見ていた色と全然違う印象で驚きました。今回は落ち着いた展開だなと思っていたのですが、自然のなかで華やかで発光しているように感じましたね。
四角:派手ではないのに、華やか。自然の色の一つになっていた感じがして、自分としてもすごく良かったですね。
左から:ウィメンズウォームハイクパンツ
ウィメンズシャツワンピース
ウィメンズコードベレー
ヤマタビ30エックスパック
四角さん着用アイテム。すべて四角友里×マーモットのコラボレーションアイテムの新作。
ウールライク・ツイルのシャツワンピは、ハイキングの羽織りとしてもワンマイルウェアとしても活躍。
左から:ウィメンズリバーシブルプリマロフトベスト
ウィメンズミールロングスリーブクルー
ウィメンズワイドハイクデニムパンツ
佐藤さん着用アイテム。すべて四角友里×マーモットのコラボレーションアイテムの新作。
インサレーションベストはリバーシブル仕様で、オリジナルプリントは植物の「種」を表現。
左から:ウィメンズリバーシブルプリマロフトジャケット
ウィメンズボアクルーコート
ウィメンズワイドハイクパンツ
2022年秋冬の四角友里×マーモットのコラボレーションは、“自然のなかにある色”を表現したアースカラーのアイテムをラインナップ。
2人が考えるこれからのアウトドア
――現在のようなアウトドアの変化を経て、これからはどう変わっていくと思いますか?
佐藤:今はキャンプが流行っていますが、キャンプは目的ではなく手段なのかなと思っています。まずキャンプをやり始めると、そこを拠点にいろいろなことをしたくなるんじゃないかなと。
最初のうちはただそこにいる時間が楽しい、自然のなかで生活することが楽しい。でもその先には、キャンプ場の近くに流れている川でラフティングしたいとか、キャンプ場から眺めている山をちょっと歩いてみたいとか、今キャンプをやっている方たちの好奇心が、キャンプ場の外に向いたり、体を動かしたりすることに移っていくんじゃないかなと。
これから、もっともっと日本人のアウトドアの楽しみ方の幅が広がっていけば良いなと思います。15年ぐらい前にアメリカを旅したとき、国立公園を拠点に多くの人がアウトドアを自由に楽しんでいたことに感動しました。
キャンピングカーで旅をしている人、スカートでハイキングしている人、川でカヤックをしている人、ただのんびりバーベキューをしている人。多様な楽しみ方が混在していて、その姿がとても衝撃的だったんです。
そういう方向に日本も近づいていくんじゃないかな、近づいていけば良いなと思っています。
四角:私も同じようなことを考えていました。キャンプも楽しいのでどんどんやってほしいけど、その先にある周りの自然環境に目が向くようになるともっと良いなと個人的に思っています。
私自身もキャンプ、登山、カヤックなどとスポーツの種目のようにカテゴライズしがちですけど、実は全部同じアウトドア。
自分にはできないとか、あれはこういう人たちがやるもの……といった線引きをしないで、どれも“自然と遊ばせてもらう”という一つのアクティビティとして、ボーダレスになったら良いなとすごく感じますね。
ただ、マーモットとの企画開発もそうだし、自分自身の仕事もそうなんですけど、「私自身が好きでやっています」というところを大切にずっと活動しているので、実際は未来がどうなるかはあまり意識できていません。自分が楽しいと感じたことを伝えることで、誰かの一歩が変われば良いなといつも思っています。
でも絶対、自然のなかに踏み出せば何かが始まると思っているので、そこは信じて、まずはキャンプでも山歩きでも、とにかくアウトドアを体験してもらうことを意識して活動していきたいですね。
――今後どのようなアウトドアライフを送りたいかなど、考えていることはありますか?
佐藤:これまでも友里さんにすごく刺激をもらって、「友里さんはこういう楽しみ方をしてるんだ、私もやってみたいな」という気持ちにずっと支えられてきたし、いつもワクワクしてきました。
自分自身が友人に恵まれて、アウトドアの楽しみを広げてこられたので、メディアでも同じような楽しみ方をしている人に出会うところもお手伝いできたら良いなと思ってコミュニティ運営を始めました。
山旅を振り返って結局思い出すことは、友里さんと2人で山に行って笑い合ったことや、あれを食べておいしかったなとか。そういう出来事と壮大な自然の景色が結び付いて思い出になっています。
また友里さんと気持ちを共有できるような体験をしたくて、次の山へ行きたいと思ったりもします。
「ランドネ」のアウトドアイベントでアンケートをとると、友達を作りたいという理由で参加してくださる方がほとんどなんですよ。だからそこにコミットしていきたいなと。そうやって友達の輪が広がって、「日本全国みんな山登り仲間です」みたいになっていったら良いなと思います。
それともう一つ、日本全国には自然豊かで美しい場所がたくさんあるので、その魅力をもっと伝えられたら良いなと思っていますね。
どうしても人気スポットに人が集中してしまいますが、それは自然環境に負荷がかかるし、混雑して楽しめない場合もあります。
人がいる安心感も大事ですが、ある程度人が少ない静かなところのほうがアウトドアを楽しめるし、自然を感じられると思うので、各地の魅力的なところを分かりやすい文脈に乗せて、多くの人に伝えていきたいと考えています。
四角:そうですよね、オフィスに行かなくても仕事できるようになったぐらいだから、山も土日に集中しないで楽しめたら良いですよね。
そういう意味では、私は鎌倉に引っ越して、初めてホームマウンテンを持つことができたんです。どこか遠くの山に出かけるのではなく、自分が住む場所から半径5kmくらいの、身近な自然に触れ合うようになりました。
お気に入りの場所に何度も通うことで、四季折々の発見があるような歩き方を今楽しんでいます。鎌倉にある自分のホームマウンテンの愛し方・歩き方を発信することで、高い山だけじゃなくて、小さいけどそばにいてくれる偉大な力を持った里山の素晴らしさをライフワークとして伝えていきたいですね。
あと、佐藤さんと2023年発売に向けて作っている『にっぽん食名山』という本も楽しみです。山小屋のごはんやおやつ、山麓のグルメなど、思い出深い山での「食」を切り口とした内容になっています。私たちがいただく“自然の恵み”への感謝を、山歩きのなかでの「おいしい」を通して表現できたら良いなと思っています。