首都圏企業、2年連続の「転出超過」へ 「転出超過」は70社超予想、20年ぶり高水準
首都圏・本社移転動向調査(2022年1-6月速報)
企業の「脱首都圏」が続く。2022年1-6月間に判明した、首都圏から地方へ本社を移転した企業数は168社に上った。昨年に続き2年連続で150社を超え、企業本社の首都圏外への転出の動きが加速している。このペースが続いた場合、首都圏外への企業移転は2001-02年以来20年ぶりに2年連続で300社を超える見込みのほか、1990年以降、昨年に次ぐ2番目の高水準となる可能性もある。この結果、2022年1−6月における首都圏への本社移転動向は、転出企業が転入企業を44社上回る「転出超過」となったほか、前年同時期(14社)に比べて大幅に増加した。このペースで推移した場合、22年通年の転出超過社数は70社を超える可能性が高い。この水準は、2001年(転出超過:92社)以来20年ぶりの水準となる。
移転先トップは「茨城県」、4年ぶりの多さ 移転先はより遠方・広範囲へ拡大
首都圏から地方へ移転した企業の転出先では、最も多かったのが「茨城県」の18社だった。茨城県は昨年も大阪府に次ぐ2番目の多さだったが、全国トップとなるのは2018年以来4年ぶりとなる。次いで「大阪府」(17社)、「愛知県」(13社)と続き、首都圏からの転出先として10社を超えたのはこの3県のみ。首都圏から離れた大都市などに移転先が集中する一方で、北陸地方では「新潟県」(8社)のほか、「群馬県」(9社)など首都圏に隣接する地域へ移転する企業も引き続き多い。ただ、移転先の都道府県数は計37となり、昨年(31)から増加するなど、移転先はより遠方・広範囲へと広がりをみせている。地方から首都圏へ移転した企業の転入元では、「大阪府」(22社)が最も多かった。次いで「愛知県」(17社)、「北海道」(11社)などが続いた。北海道は首都圏からの転入も多い(6社)一方、首都圏への転出も多くみられた。
企業の「脱首都圏」今後も続く可能性 本社の「複数拠点化」も進む
これまで、首都圏から地方への拠点分散化が進んだ時期はバブル崩壊後の1990年代や2008年のリーマン・ショック後など、経済環境が悪化した時期に重なっている。近時も、コロナ禍で多くの企業が売り上げを減らすなか、オフィス賃料が安い地方に移転することで経営立て直しを図るケースは多い。電気代の高騰などコスト増加要因が多いなか、経営コストを圧縮するため首都圏外へ退避する企業は今後も増加する可能性がある。他方、テレワークやウェブ会議が浸透しつつあるなかで、東京+αといった本社機能の複数拠点化や、社員の居住地制限の撤廃といった働き方の変化・定着により、企業における本社の在り方が見直されつつある。こうした「前向き」な本社移転ニーズの拡大により、企業における「脱首都圏」の流れが定着するかどうかが注目される。