マンションのベランダには、避難はしごが設置されている場合が多くあります。ですが、実際にどうやって使用するのかわからないという人もいるのではないでしょうか。今回は避難はしごの概要や種類について説明したうえで、その使い方を解説します。注意点も説明しますので、ぜひ役立ててください。

避難はしごとは

避難用の滑り台

避難はしごは避難器具の1つです。日本の法令等で定められている避難器具は全部で8種類あり、避難はしご以外にも以下のようにさまざまなものがあります。

1.避難はしご
2.緩降機(かんこうき)
3.救助袋
4.滑り台
5.避難用タラップ
6.避難橋
7.避難ロープ
8.滑り棒

消防法や建築基準法では、一定の要件を満たす建物に対して避難はしごの設置を義務づけています。マンションも避難はしごが必要な建物であり、多くの場合ベランダに設置されています。火災などの緊急事態により階段やエレベーターが使えないときも、避難はしごを利用すればすぐに階下へ移動できます。

避難はしごの種類

避難はしごの種類は主に4つです。ここでは、避難はしごの種類とその特徴を解説します。

固定はしご

固定はしごは、名前のとおり建物に固定されている避難はしごです。すぐに使える状態で設置されているため、避難時にわざわざ取り出す手間がかかりません。ただし、固定はしごの中には伸縮式になっているものがあり、その場合は使用するときに伸ばす必要があります。

立てかけはしご

立てかけはしごは、建物の下階から上階へ立てかけて上り下りする避難はしごです。専用の箱に収納されており、使用する際に箱から出すタイプが一般的です。

つり下げはしご

つり下げはしご

つり下げはしごは、上階から下階につり下げて使用する避難はしごです。立てかけはしごと同じく、たいてい専用の箱に収納されています。マンションの場合、ベランダの手すりからつり下げて使用します。壁に沿ってはしごが下りるため、壁伝いに避難することになります。

ハッチ用つり下げはしご

ハッチ用つり下げはしごは、ベランダの床下に収納されている避難はしごです。避難時に蓋を開けると、下階へ降りるためのつり下げはしごがつり下がるようになっています。マンションに設置されている避難はしごのほとんどは、このハッチ用つり下げはしごです。そのため、避難はしごといえばこちらをイメージする人が多いでしょう。

避難はしごの使い方

ここでは、多くのマンションに設置されているハッチ用つり下げはしごの使い方について解説します。

参照:東京消防庁「避難はしごの使用方法を知ろう!」

1.避難はしごの蓋を開ける

まずは蓋を開けます。蓋を開けるときは、ゆっくり持ち上げるようにしてください。ハッチ用つり下げはしごのなかには、チェーンでチャイルドロックがかかっているものもあります。チャイルドロックがかかっている状態で勢いよく蓋を開けると指を挟む可能性があるため、注意が必要です。

2.蓋を固定する

チャイルドロックはチェーンを外すだけで簡単に解除できます。チャイルドロックを外したら、そのまま蓋を持ち上げて90度まで開きます。その状態で蓋を固定してください。

なお、蓋の裏側には避難はしごの使い方が記載されているため、わからないときはこちらも確認しましょう。

3.はしごを下に降ろす

ハッチの中にはさらに下蓋がついているため、避難はしごを降ろすには下蓋も開ける必要があります。下蓋は下階から避難はしごが見えないようにするためのものであり、下蓋を開けないと避難はしごを降ろせないようになっています。

下蓋を開けたら、レバーを倒して避難はしごを降ろしましょう。なかには、ボタンを押すと自動的に避難はしごが降りるものもあります。

4.はしごを使って下に降りる

避難はしごを降ろしたら、下を確認したうえで降りましょう。下階に人がいる状態で降りると危険なため、必ず下を見てからはしごを使用してください。なお、避難はしごを人が降りるときは大きな音が出るため、訓練時など非常時以外であれば、周囲の人に伝えたうえで利用したほうがよいでしょう。

避難はしごを使用する際の注意点

避難はしごを使用するときは、気をつけたい点が複数あります。ここでは、具体的な注意点を解説します。

参照:防災新聞「避難はしごの設置基準は?使用時の注意点を知りもしもに備えよう」

蓋の上にはものを置かない

避難はしごの蓋の上には、普段から何も置かないようにしましょう。避難はしごの上に物があると、緊急時に使えない可能性があります。また、避難はしごの上で作業したり子どもが遊んだりすると、不具合や事故の原因にもなります。避難はしごの周囲には、普段から配慮が必要です。

なお、上階から避難はしごが降りてくる側のベランダも、いざという時に備えて整えておかなければなりません。避難はしごが降りてくる場所にも、物を置かないようにしましょう。

蓋はあわてずゆっくりと開ける

避難はしごを使う際は、蓋をゆっくり開けるようにしましょう。緊急時はあわててしまい、急いで蓋を開けてしまう人も少なくありません。しかし、あわててしまうと、チャイルドロックで蓋がうまく開かず指を挟む恐れがあります。

避難はしごを利用するときは、他のトラブルを引き起こさないよう冷静に行動することが大切です。そのためには避難はしごの使い方をあらかじめ確認しておき、緊急時にスムーズに使用できるようにしておくとよいでしょう。

はしごを降ろすときは下階の状況を確認する

避難はしごを降ろすときは、下階の状況を最初によく確認しなければなりません。下階の状態によっては、避難はしごを降ろせない可能性もあるでしょう。また、避難はしごが降りる場所に人がいる場合、そのままはしごを降ろすと危険です。スムーズに避難はしごを降ろせるようにするには、周囲にしっかり配慮しなければなりません。自分たちだけでなく、すべての人の安全を意識しましょう。

はしごの揺れに注意する

避難はしごで下に降りるときは、少なからず揺れが伴います。はしごを昇り降りする経験の少ない人は、揺れに恐怖を感じる可能性があります。特に高所から避難はしごを降ろす場合は、恐怖心がより強くなるでしょう。

しかし、足を踏み外さないように気をつけてゆっくり降りていけば、大きな問題は生じません。避難はしごは焦らず落ち着いて使用することが大切です。

大きな荷物は先に落とす

避難する際は、リュックなど大きな荷物を持って逃げる人もいます。大きな荷物を持ってはしごを降りようとすると、ハッチにひっかかる恐れがあります。大きな荷物を持っている場合は、自分がはしごを降りる前に荷物だけを降ろしてください。

そうすれば、荷物が引っかかることなくスムーズに階下へ降りられます。身軽になるとバランスも取りやすくなるため、はしごを降りる際の恐怖心も和らぐでしょう。

手袋・スニーカーを用意しておく

ハッチ用つり下げはしごの蓋はステンレス製が多く、火災時に熱を持ちやすい

ハッチ用つり下げはしごの蓋やはしご部分はステンレスでできている場合が多いため、火災の際は熱くなっている可能性があります。避難時のやけどを防ぐには、手袋(軍手)を用意しておくと安心です。いざというときに使えるよう、準備しておきましょう。

また、避難時の足元はスニーカーがおすすめです。裸足では足にケガをする恐れがあります。スリッパやサンダルなどは脱げやすいため、避難には不向きです。ベランダにスニーカーを置いておき、いつでもすぐに履けるようにしておきましょう。

まとめ

避難はしごは、いざというときに命を守るために重要なものです。日常生活では使用しませんが、避難時にスムーズに使えるようにしておく必要があります。定期的に点検を行うだけでなく、使い方についてもよく確認しておきましょう。自宅にどの種類の避難はしごがついているかチェックし、実際に逃げる際のシミュレーションをしておくと安心です。