マリナーズ戦で14勝目を挙げたパドレスのダルビッシュ有【写真:Getty Images】

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8回無失点で14勝目「楽に投げていたという感じではなかった」

■パドレス 2ー0 マリナーズ(日本時間14日・シアトル)

 パドレスのダルビッシュ有投手が13日(日本時間14日)、敵地・シアトルでのマリナーズ戦に登板。完投、完封はならなかったが8回を2安打無失点で、自己最多の16勝を挙げたメジャー1年目の12年以来となる14勝目(7敗)を96球の力投でつかんだ。

 3者凡退で終えた8回終了時点で1-0とリードし、球数は94球。8年ぶりの完投を目指す9回のマウンドに気持ちの準備はできていたが、メルビン監督の継投も察していた。

「自分も(続投が)あるのかなっていうふうに思っていたんですけど、やっぱり9月ってこともあって、どうしても勝たなきゃいけないってところなので。5回くらいにもう球数が少ないのはわかっていましたし、8回終わって球数少なかったとしても、9回は投げさせないだろうなっていうふうに。次は中4日だと思うので、それも自分の中では想定通り」

 この日の快投で6回以上の投球を20登板連続へと伸ばしたが、21年ぶりのプレーオフ進出へ向け勢いに乗るマリナーズ打線の重圧は感じていた。

「とにかく1イニングを無事に帰ってくるところから始まって、それを1イニング1イニング、1人1人というふうに。そのところだけ集中していましたね、ずっと。結果ほど自分は楽に投げていたという感じではなかったです」

フリオ・ロドリゲスから奪った三振が“大きな収穫”

 細心の注意を払ったのが、ここまで25本塁打、71打点、複数安打36度などの新人の打撃部門で他を圧倒し、今季ア・リーグの新人王候補筆頭のフリオ・ロドリゲスだった。若き好打者から2打席目に奪った三振はこの日の大きな収穫。シーズン中盤に感じた「変化的に僕の速いスライダーに近かったりしていた」という高速カッターの軌道のズレを約3週間の試行錯誤を重ねて解消。91マイル(約147キロ)の決め球には確かな手応えがあった。

 天賦の才と日々技術力の向上を目指すひたむきな取り組みを、イチロー氏が高く評価するロドリゲスには、腐心の組み立てでも実りがあった。

 三ゴロに打ち取った6回の第3打席は、この日もっとも多い8球を費やした。

「打てる球をしっかりと理解していました。初球スプリットから入ったんですけども、あれも振るっていう確信があった上で投げたので。ファウルだったり(ボールを見極められ)カウントをしっかり作られましたけども、その中でもしっかりと投げられて。ああいういいバッターと対戦できてすごくよかったと思います」

「自分はもう36歳。感謝というのはすごくある」

 木々の多いシアトルは季節が過ぎても飛散する花粉もあり、弱アレルギー体質のダルビッシュにとっては好ましからざる場所。球団医からは少し強めの薬を処方してもらい臨んだ。また温暖なサンディエゴから乗り込み、初秋を迎えた同地での投球は「指先の感触があまりよくない投球もあった」と明かす。

 9回のマウンド譲った抑えのヘイダーが締めて連敗は2でストップ。激化するワイルドカード争いで順位を1つ上げる大事な戦いをけん引したダルビッシュ。今季の投球回は176回2/3となり、13年に記録した自己最多の209回2/3超えも視界に入って来た。どんな状況下でも先発として責任を果たし続ける。その原動力はどこから来ているのか――。

 確かな口調で表した。

「自分はもう36歳。同級生の中でも、もう野球をやっていない人の方が多いですし、その中でこういう環境でやらせてもらえるということですごく感謝している部分というのはすごくあるので。今までより、プロとして仕事に対して打ち込もうというところからきていると思います」

 公式戦の残り登板はあと4試合。強靭な意思に支えられたダルビッシュ有の視線がブレることはない。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)