都営三田線で新型車両6500形が運行を開始しています。順に既存の6300形が置き換えられていますが、これにより東京の地下鉄では珍しかった座席が見納めに。どうやらこの座席を利用して、相鉄線へは行けなさそうです。

ついに始まった車両の世代交代

 都営三田線では2022年5月、新型車両6500形電車の営業運転が始まりました。これに伴い、今まで同線で使用されてきた6300形電車が順次廃車されています。

 6500形は8両編成で登場しましたが、淘汰される6300形は6両編成であり、車両の置き換えと同時に輸送力増強が行われます。6300形の完全な引退はまだ先となりそうです。


都営三田線では、新型車両の導入で6300形電車の一部が置き換えられる(2019年5月、柴田東吾撮影)。

 そもそも6300形は東急目黒線への乗り入れを見越して1993(平成5)年に登場し、2000(平成12)年までに3次に分けて導入されました。VVVFインバータ制御を採用した省エネルギー車両で、当初から冷房装置を備えるなど都営三田線の完全な冷房化にも寄与しています。また、目黒〜白金高輪間で東京メトロ南北線と線路を共用しつつ目黒線に直通する関連で、車両の寸法や性能、取扱いなどは東京都交通局・東京メトロ・東急の3者で申し合わせて造られているのです。

 新形車両の6500形は13本の導入が予定されていますが、これによって6300形も同じ本数が廃車される見込みです。

 6300形は1993(平成5)年に1次車の5本が造られたほか、翌年には2次車として8本が造られました。つまり、1・2次車の合計が6500形と同じ本数となるのです。また、1999(平成11)年から翌年にかけて3次車の製造が行われ、24本が導入されていますが、こちらは6500形の導入が完了した後も引き続き使われると見られています。

 ちなみに、6300形は全ての編成で基本的なデザインは揃っていますが、前面の下部に付くスカートは増備過程で形が変わっています。外観ならこの違いで1〜3次車を見分けられます。

都営三田線の車両から消えるもの

 内装では、1・2次車と3次車で客室設備に違いがあります。それは東京の地下鉄では珍しい「クロスシート」です。

 1・2次車では客室の端部にクロスシートが設置され、4人がけのボックス席が設けられています。一般的にクロスシートの長所は快適性の確保、短所は乗車定員の減少とされます。なぜ混雑する東京都心の地下鉄に、クロスシートが導入されたのでしょうか。


通勤形電車の座席配置はロングシートが基本。長手方向に座席が並ぶ(柴田東吾撮影)。

 それは6300形のデビュー当時、着座の点で乗客にとって選択性のある車内レイアウトを目指したため。そしてこれは、都営地下鉄で初の試みでもありました。ただ、3次車からはロングシートに統一され、コストダウンが図られました。

 東京メトロ南北線の9000系電車にも、かつてはクロスシートを備えた車両がありました。こちらはリニューアルに際してロングシートや車いすスペース、フリースペースに改修され、すでに消滅しています。

 ちなみに、都営三田線での導入が最後となったのが車いすスペースです。6300形に設置されたことで、都営地下鉄の全線で車いすスペースの導入が完了しました。

 登場から間もなく30年が経過する6300形ですが、車内の修繕を行った車両もあります。この際にクロスシートが廃止されても不思議なことではなかったのですが、そのまま残されました。翌2023年3月、都営三田線は新規開業する東急新横浜線を介し、相鉄線とも直通運転を開始します。現時点で判明している情報だと、6300形は新横浜駅までは顔を出すかもしれません。