88年前の8月16日、現在の長良川鉄道である「国鉄越美南線」が全通しました。

県境付近で終着駅を迎える


深い山間部の終着駅、北濃駅(恵 知仁撮影)。

 今から88年前の1934(昭和9)年8月16日。国鉄越美南線の美濃白鳥〜北濃が開業しました。現在の長良川鉄道にあたる路線が全線開業に至ったのです。

 名前のとおり、この鉄道路線は福井と岐阜をむすぶ幹線として計画されました。北陸で日本海側と太平洋側をむすぶルートは敦賀回り(米原経由)〜富山回り(高山本線経由)で250km近く離れており、中間にもう1本縦貫線があることで、北陸の輸送効率の向上が図られたのです。

 まずは1923(大正12)年、起点である高山本線の美濃太田駅から、美濃町駅までが開業。そこから順次延伸をつづけ、約11年を経て福井県境の峠近くまで到達したのが今日でした。

 一方の福井県側はまだ着工すらしていませんでした。北濃開業の同年にようやく期成同盟会が設立しましたが、戦火が激しくなると工事がストップ。九頭竜湖まで開業したのは40年近く経った1972(昭和47)年のことでした。

 その頃にはすでに国鉄は火の車状態。赤字路線を廃止していく方針が打ち出され、全通したばかりの越美北線もその対象に。着工すらしていない峠越え区間はもちろん、そのまま計画立ち消えとなったのです。

 1986(昭和61)年、越美南線は第三セクターの長良川鉄道に移管。名前のとおり大部分で長良川と並行し、車窓に渓流が映ります。これを活かして現在は観光列車「ながら」と「ゆら〜り眺めて清流列車」が運行され、旅人を楽しませています。

 終着駅の北濃駅は、県境越えの拠点として開業した経緯もあり、旧白鳥町の市街地からも離れた谷間の集落に、ポツンと無人駅があるだけとなっています。

 1968年10月の時点で、美濃太田を出発した11本のうち4本が美濃白鳥止まり。名古屋発着の急行「おくみの」が1往復設定されていました。また、朝と深夜に送り込みを兼ねて、美濃白鳥〜北濃(途中ノンストップ)という短い区間列車も1本ずつありました。

 さて、鉄道では果たせなかった「福井〜岐阜直結」を、高速道路が果たそうとしています。国道158号のバイパスとなる「大野油坂道路」が現在工事中。全通すれば、北陸道の福井北JCT・ICと東海北陸道の白鳥ICが高速道路で直結され、北陸・中部地方の交通ネットワークの利便性が大きく向上します。全通見込みは2026年となっています。