品川まで約15分という利便性に加え、商店街や公園、公共施設に恵まれた住環境が特徴の東急大井町線戸越公園駅(品川区)。駅周辺は、長年、細街路に老朽化した建物が密集するという防災上の問題を抱えていました。それを解決しようと再開発を含め、さまざまな動きが目立つようになってきました。

東急大井町線戸越公園駅前。南北に商店街が延びる、活気のある街です(筆者撮影)

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大井町駅まで2駅、首都圏のどこに行くにも便利な立地

東急大井町線。東急線の他沿線に比べると知名度はそれほど高くはありませんが、人気の駅、商店街のある街を繋いで走っています(筆者撮影)

東急大井町線(以下、大井町線)はJR京浜東北線、東京臨海高速鉄道りんかい線(以下、りんかい線)が利用できる大井町駅(品川区)から溝の口駅(川崎市高津区)を結ぶ、全長10キロほど(東急田園都市線区間を入れると約12キロ)の路線。

戸越公園駅の由来を書いた掲示。すぐ近くに東急中延駅があることも分かります(筆者撮影)

戸越公園駅は大井町駅から2駅、約4分の場所にあり、大井町駅でJR京浜東北線に乗り換えれば品川駅まで約15分、東京駅まで約30分などと都心へのアクセスに恵まれています。京浜東北線は都心を南北に縦貫して川崎駅、横浜駅などの神奈川方面、浦和駅、大宮駅などの埼玉方面と首都圏の主要駅を繋ぐ路線。この路線が利用できれば都心のみならず、どこに行くにも便利です。

また、大井町駅からりんかい線を利用すれば国際展示場駅、東京テレポート駅など湾岸エリアへも楽にアクセスできます。

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戸越公園駅から北側に伸びる商店街を抜けるとその先にあるのが戸越銀座。十分徒歩圏内にあり、こちらも店舗が長く連なる元気な商店街です(筆者撮影)

東急大井町線にも魅力的な駅が揃います。隣の中延駅、その先の荏原町駅は活気ある商店街で知られていますし、自由が丘駅、二子玉川駅はご存じのように買い物、外食などが楽しい場所。等々力駅近くには都内唯一の渓谷、等々力渓谷もあります。戸越公園駅は魅力的な街に囲まれた場所なのです。

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中延駅/荏原町駅/自由が丘駅/二子玉川駅/等々力駅

駅から500メートル圏に商店街、公園、公共施設が

もちろん、戸越公園駅も例外ではありません。まず大きな魅力は、駅から500メートルほどの範囲に商店街、公園、公共施設がぎゅっとまとまっていることです。

戸越公園駅周辺の商店街や公共施設の分布を現した地図。コンパクトにまとまっていることが分かります(戸越公園駅周辺まちづくりビジョン 基本計画編 2020年1月 品川区)

駅周辺の4つの商店街、若い感覚の店も

駅の北側にある戸越公園中央商店街。個人が経営している小規模な店舗が多いのが特徴です(筆者撮影)

駅北側には戸越公園中央商店街、宮前商店街、南側には戸越公園駅前南口商店会、ゆたか商店会と合計で4つの商店街があり、長く繋がっています。

戸越公園駅前南口商店会では夏の売り出しののぼりがあちこちにありました(筆者撮影)

昔ながらの八百屋、寿司屋などに混じってスーパー、ドラッグストアもあり、最近は若い店主が新たに開いたカフェやジェラート専門店などが目に付くようになりました。どの商店街も縁日やサマーセールなどのイベント開催で地域を盛り上げる活動にも熱心に取り組んでおり、買い物客との間に会話があるのもこの地域ならでは。庶民的で気さくな雰囲気があります。

平坦な場所のためもあり、自転車を利用している人が目に着きました(筆者撮影)

商店街で言えば、この地域の周辺には前述した中延、荏原町に加え、戸越銀座にもにぎやかな商店街があり、少し離れては武蔵小山の商店街も有名なところ。平坦な土地ですから、ぶらぶら歩いて、あるいは自転車で隣の町の商店街まで足を延ばすのも楽しいでしょう。

戸越公園、文庫の森で自然を満喫

戸越公園の池周辺。東屋もあり、のんびり過ごしている人たちの姿がありました(筆者撮影)

次に公園。駅名にある通り、駅の北東、歩いて7分ほどの場所に戸越公園があります。ここは江戸時代に肥後国(熊本)藩主細川家の下屋敷があった場所で、その庭園跡を利用して作られたのが戸越公園です。

正門。このすぐ隣に新しくできた環境学習交流施設エコルとごしがあります(筆者撮影)

品川区を代表する公園とされており、池を中心に滝や築山などが配され、四季折々の花など自然を楽しめます。大名庭園の面影を残す薬医門(正門)、冠木門(東門)などが残されているのも見どころでしょう。

戸越公園内には親子で水遊びを楽しめる場所があります(筆者撮影)

もうひとつ、この公園でうれしいのは水遊びができること。夏の週末には多くの家族連れでにぎわっており、皆さん、楽しそうです。

文庫の森にも池があり、虫取りをしようと子どもたちが網を持って追いかけていました(筆者撮影)

戸越公園のすぐ近くにはもうひとつ、防災機能を備えた公園、文庫の森があります。ここは、江戸時代には戸越公園同様、細川家の屋敷だった場所。その後、明治になって三井家の所有となり、大正期には三井文庫が置かれていました。昭和になって文部省に売却され、2008年に立川市に移転するまでは国文学研究資料館として使われていました。移転後の敷地を品川区が取得して公園として整備、2013年にオープンしました。

防災を考えた公園のため、広い芝生があり、周囲には塀が設けられていないのが特徴。逃げ込みやすい場所というわけです(筆者撮影)

特徴は中央に広い芝生の広場があること。天気の良い日には家族でお弁当を広げたり、寝っ転がって本を読んだりとのんびり過ごす人の姿が多く、戸越公園とは異なる楽しみ方ができるのはうれしいところでしょう。

体育館、図書館、環境学習交流施設などが集中

戸越公園とは道を隔ててすぐのところにあるゆたか図書館(筆者撮影)
ゆたか図書館の向かいにはゆたか児童センター、ティーンズプラザゆたかがあります(筆者撮影)

この2つの公園の周辺には品川区立戸越体育館、環境学習交流施設エコルとごし、ゆたか図書館、ゆたか児童センターなどさまざまな公共施設が集まってもいます。スポーツに、学びにと、地元でいろいろなことができるわけです。

戸越公園内から見たエコルとごし。1階のキッズスペースがにぎわっていました(筆者撮影)

地元で話題になっているのは2022年5月に誕生したばかりのエコルとごし。戸越公園の中にあり、大きく取られた窓が印象的な建物です。環境教育に使われるほか、自由にくつろげるコミュニティラウンジや子連れで利用できるキッズスペースなどもあり、さまざまなワークショップ、講座も開かれます。子どもと共に参加できるものも多いので、ファミリーならチェックしておきたいところです。

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不燃化特区に指定、安全確保への取り組みが続く

交通利便性に優れ、商店街、公園や公共施設もコンパクトにまとまっているなど住みやすい戸越公園駅周辺ですが、問題もあります。

歩いてみると車どころか、人がすれ違えないほど細い道もあり、防災対策が急がれるのが分かります(筆者撮影)

このエリアは細街路、老朽化した木造建造物が多く集積する、いわゆる木造住宅密集地域で、都内で震災が発生した場合には火災の発生、延焼拡大が予想されています。それを防ぐため、東京都ではこのエリアを不燃化特区に指定、さまざまな取り組みを行ってきています。

都市計画道路補助29号線の整備
現在、全域で行われているのが都市計画道路補助29号線の整備。この道路は品川区のほぼ中央を南北方向に貫く形で位置しており、道路を拡幅することで延焼を防止しようというのです。

商店街に面した空き地は、今後都市計画道路を作るための土地。ところどころで見かけました。商店街に影響が大きいため、品川区では商店街活性化にも同時に取り組んでいます(筆者撮影)

まだ、道路の全体像が見えるほどにはなってはいませんが、戸越公園駅近くの商店街を歩くと、ところどころに事業用地として買収された空き地があり、少しずつ計画が進展していることが分かります。

建て替え促進で駅前にはタワーマンションが誕生
同時に行われているのが建て替えの促進。古い木造住宅を単独あるいは共同で建て替えて燃えにくい建物とすることで地域を安全にしていこうというのです。

駅前のタワーマンション建設現場。駅との距離の近さが分かります(筆者撮影)

現在、戸越公園駅前で行われているタワーマンションの建設もその一環。2018年3月に都市計画が決定して現在工事が進行中です。駅前というより、駅隣接といっても良いほどの場所にあり、完成予定は2024年2月。地上23階建てで戸数は241戸(募集対象外住戸70戸含む)で、店舗も入るようです。周辺にはこれだけの高さの建物がないことから、完成すると駅周辺の風景は大きく変わりそうです。

また、この区画だけでなく、戸越公園駅周辺では戸越公園駅北地区では市街地再開発準備組合が立ち上がり、戸越6丁目ではまちづくり計画検討委員会、戸越4丁目と同5丁目18番地区ではまちづくり勉強会が開かれるなど、まちづくりの検討があちこちで始まっています。この先、戸越公園駅エリアはさらに変わっていくのでしょう。

防災公園の整備も着々と進む

ゆたか防災広場。災害時に備えた倉庫などが用意されているのが分かります(筆者撮影)
街角の小さな公園にも災害時に備えて井戸やかまどスツール、防災資機材倉庫などが備えられています(筆者撮影)

建て替え以外では防災公園の整備なども行われています。地域内を歩いていると住宅街の中に大小さまざまな公園が点在していますが、なかには防災資機材倉庫、マンホールトイレ、かまどスツールなどを備えた公園もあります。このエリアに住む場合には、近所にこのような場所があるかどうかを見ておくのも大事かもしれません。

東急大井町線の鉄道立体化事業もスタート

写真に写っているだけでも3ヶ所に踏切があります。駅周辺全体では6ヶ所の踏切があり、交通の妨げになっているケースもあります(筆者撮影)

もうひとつ、これから進む事業として東急大井町線の鉄道立体化事業があります。品川区と戸越公園駅周辺まちづくり協議会が東京都に要望書を出しており、2021年4月には新規着工準備箇所として採択されました。戸越公園駅周辺には6ヶ所の踏切があり、これが立体化で解消されると駅の南北の地域の回遊性が増し、交通利便性、防災性の向上が見込まれます。これからスタートする事業のため、完成までにはまだ時間がかかるでしょうが、確実に街は変わるはずです。

東京都建設局が出しているニュースレターに記載された連続立体交差事業についての解説図。東急大井町線戸越公園駅付近は準備中区間となっています。(東京のまちづくり 東京都建設局 建設局ニュース2022 NO.177)

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利便性、公園など評価ポイントは多数

最後に地元の人の声を「TownU」から見てみましょう。

駅まで徒歩1分のところに住んでいて、商店街も近くて買い物がしやすい 近くにスーパーがあるのも良かった。また、主要買い物駅迄のアクセスも良く原宿 千駄ヶ谷迄バイクで外苑西通りを走って15分で行ける。商店街では催し物が月に1回やっていて楽しい。近くの戸越公園は緑も多く子供連れの家族でも楽しめる。その近くに文庫の森があって春には池に枝垂れ桜が水面に映って綺麗。(61歳男性 2020年時点)

首都高速道路2号線の戸越インターチェンジ。2号線は比較的渋滞が少ないと言われており、利用しやすいようです(筆者撮影)

東急大井町線の戸越公園駅と中延の中間あたりですが、戸越公園駅は公園が近くにあり、中延駅は東急大井町線と都営浅草線が乗り入れているためとても便利です。また国道1号が通っており、首都高の戸越インターも近く移動しやすいです。(44歳男性 2021年時点)

戸越公園駅周辺の公共交通の利便性(駅勢圏等の分布)を現した地図。徒歩圏に複数の駅があります(戸越公園駅周辺まちづくりビジョン 基本計画編 2020年1月 品川区)

日常生活で必要なものはほとんどのものが徒歩圏内で揃う。中規模スーパー、ドラッグストアがあり、大手コンビニ3社も近隣にあり、出来上がった総菜やお弁当などの店もある。美味しいパン屋やお肉屋さんなど、個人商店も活気があり地元の人たちに愛されている感じがする。子どもを遊ばせられる公園も小さなものから大きなものまで徒歩10分内にある。大きな公園は自然も豊かで大人が散歩するのにも楽しめる公園である。最寄りは東急大井町線だが、JR西大井駅や都営浅草線中延駅、東急池上線の荏原中延駅も利用可能で交通の便がとても良い。大井町線で2駅離れているものの、休日には30分ほど歩けば大井町駅前へ行くこともでき、大型スーパーや家電量販店、中規模の駅ビル等もあって生活に必要なほぼ全てのものが揃う。区役所へのアクセスもさほど悪くない。(43歳女性 2021年時点)

交通、買い物の利便性、公園の存在などが評価されていますが、一方で商店街のにぎやかさをややうるさく感じている人もいますし、通勤電車の混雑度、駅前などの狭さに不満を持つ人も。これから変わることも含めて実際の街をチェックし、自分がどう感じるかを大事にして住まいを選びたいところです。

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