コロナ禍のため、ここ数年は中止が続いていた各地のお祭り。しかし、ようやく今年あたりから再開するお祭りもあるようです。七夕祭りもその一つでしょう。

七夕といえば、願い事を書いた短冊や飾りを笹に吊るすのが習わしですが、終わった後はどのように処理したらよいのでしょうか。本記事では、短冊飾りの処理方法や七夕祭りの由来などについて解説します。

七夕はどんな行事なのか

子どもの頃、7月7日の七夕の日が近づくと、短冊に願い事を書いて笹に吊るした経験がある人も多いでしょう。そもそも七夕とはどのようなお祭りなのでしょうか。

七夕ってどんな日?

七夕は、星に願いをかけることから、ロマンチックなイメージを抱いている人がいるかもしれません。星々にちなんだ祭りでありながら、7月7日は梅雨の時期にあたる地域が多く、実際に伝説の星々を見ることができる年、地域は少ないようです。

今では「七夕」を「たなばた」と読むのが一般的ですが、元来「しちせき」と読んでいたという説もあります。日本には古くから季節の変わり目になる五節句に邪気を祓って無病息災を願う行事があり、七夕もその一つでした。

七夕以外の節句には、1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、そして9月9日の重陽があります。1月1日は別格として7日としていますが、奇数が連なる日が節句と定められています。

七夕は、機織りの名手である織姫(おりひめ)と、働き者の牛使い彦星(ひこぼし)が天の川を渡って1年に1度だけ出会えるという伝説から、今では願い事を短冊に書いて笹竹に飾り付けるお祭りとして定着しています。カレンダー通り7月7日に行う地域が多いものの、地域によっては旧暦の8月に行います。東北三大夏祭りの一つとなっている仙台の七夕祭りも、旧暦で行われています。

七夕の由来

七夕の由来については諸説ありますが、もともと日本の神事であった「棚機(たなばた)」と、奈良時代に中国から伝来した民間伝承の「乞巧奠(きこうでん)」が融合したものとする説が主流のようです。

棚機とは、「棚機女(たなばたつめ)」と呼ばれる女性が、清らかな水辺に設けられた機屋(はたや)にこもり、神に捧げる着物を織る際に使われた織機のことです。「七夕」と書いて「たなばた」と読むのは、この「たなばたつめ」が由来と考えられています。

乞巧奠は、織姫と彦星の伝説とともに中国から日本に伝わったとされています。「乞巧(きこう)」には巧みを乞う、「奠(でん)」には神をあがめるという意味があります。中国では、7月7日に織姫のように機織りが上達するようにとの願いを込めて、星に祈りを捧げる風習がありました。

昔は機織りの上達を祈願したものの、次第に機織りに限らず、芸事や書道をはじめとする技芸全般の上達を願うようになりました。棚機女と織姫が、ともに機織りをする女性であったことも、伝説の融合を招きやすかったのかもしれません。

七夕飾り・短冊

色とりどりの吹き流しで飾られた七夕祭り(写真は東京・阿佐ヶ谷)

平安時代の七夕祭りは、宮中行事として執り行われ、果物や野菜、海産物などを供えて、神聖とされていた梶(かじ)の木の葉に、和歌を書いて願い事をしていました。七夕祭りは、江戸時代になると庶民の間にも広まりました。

江戸時代の七夕飾りは、笹竹に願い事を書いた短冊を吊るす形式になりました。笹や竹は成長が早いことから生命力の強さが感じられ、神事に使われることが多い植物です。比較的入手しやすいことや、葉の擦れる音が涼しげなことなども飾りに採用された理由と考えられています。

短冊には、陰陽五行説にちなんで緑、赤、白、黄、黒の五色が使われました。短冊以外にも吹流しをはじめ、趣向を凝らした切り紙やさまざまな作り物を飾り、現在の七夕飾りに近いような形態になりました。

七夕飾り・短冊はどう処理する?

七夕が終わった後、困るのは後片付けです。七夕飾りはどのように処理したらよいのでしょうか。ここからは、七夕の後処理の仕方について紹介します。

七夕飾り・短冊を片付ける日

七夕飾りは前日の7月6日の夜に飾り、7月7日の夜に片付けるのが通例です。ただし、最近では1日だけの飾りにするのは惜しいということで、1週間前ごろから飾る家庭もあります。

七夕飾りはその年限りのもので、使いまわすことはしません。昔は七夕の夜に「七夕送り」として川や海に流していましたが、現在は伝統行事とはいえ無断で流すのはやめましょう。

お焚き上げ

神事に使用した縁起物をまとめて燃やすお焚き上げ

川に流す「七夕送り」のほかに、かつては七夕飾りなどの神事に使用した縁起物をまとめて燃やす儀式がありました。現在でも、一部の地域の神社やお寺ではお焚き上げを行っています。お焚き上げとは、魂が宿ると考えられる物を炎で浄化して供養し、天に返すための行事です。

願い事を書いた短冊や、丹精込めて作った飾り物を捨てるのは忍びないという人は、地元の神社やお寺でお焚き上げを行っているかを問い合わせてみましょう。近くにない場合は、短冊を郵送するだけで、代わりにお焚き上げをしてくれる「みんなのお焚き上げ」などのサービスを利用するのもよいでしょう。

参考元:みんなのお焚き上げ

可燃ごみとして捨てる

もっとも手軽な処分方法は、可燃ごみとして捨てる方法です。かつては願いを叶えるために燃やしていたので、飾り付けにプラスチックなどを使っていなければ、可燃ごみとして処分しても何も問題はありません。

願い事が込められているものを、ごみとして捨てるのは気が引けるという人は、白い紙で包んで捨てるのがおすすめです。白い紙には、お清めの効果があるとされています。笹は紙に包める大きさに折って、その他の飾りと一緒に捨てましょう。

記念に取っておく

子どもが書いた短冊を記念に取っておくのも一興

本来は願いを叶えるために川に流したり、燃やしたりする七夕飾りですが、子どもが書いた短冊を記念に取っておくのも悪いことではありません。短冊だけならかさばりませんし、年ごとに分類しておけば、後で振り返ったときに良い思い出になります。劣化させないためにラミネート加工などをしてもよいでしょう。

写真に撮っておくと、さらに手軽に思い出が残せます。子どもと一緒に七夕飾りの全体ショットと、短冊を1枚ずつ撮っておけば、夏の思い出の一コマとして一生の思い出になるでしょう。

まとめ

七夕飾りや短冊は、その意味や由来を考えると、処分方法にそれほど神経質になる必要はありません。どうしても気になる人は、お焚き上げをすると良いでしょう。七夕は、子どもの成長につれて、行わなくなってしまいがちな行事の一つですが、夏の風物詩として楽しんでみてはいかがでしょうか。